133 自弁品アラカルト -その1

***5.自弁品アラカルト

****1)その1

自弁(じべん)とは、「差入れを受けた物、領置中の物、あるいは自己の領置金等で購入したものを施設内で使用すること」(被勾留者所内生活の心得、24ページ)であり、自弁品とは自弁に係る物品のことである。

平たく言えば、自分で持ち込んだ物とか、差入れしてもらった物とか、あるいは自分のお金で買った物のうち、拘置所の中で使うことのできる物のことを自弁品というのである。

私は、当初、私の逮捕は冤罪によるものであるため、担当の検事に事実をありのまま説明しさえすれば検察の誤解を解くことができるものと固く信じていた。従って、私の勾留は長くとも1ト月位のものであろうと踏んでいた。
そんなに長くいることはないであろうし、二度と再び来ることはないと考え、私の驚きをできる限り具体的に記録することにした。噂には聞いていたものの、塀の中は全くの別世界であり、全てが新鮮な驚きの連続であったからである。
兼好法師の顰(ひそ)みにならえば、“つれづれなるままに、日暮し机にむかひて、眼にうつり耳に聞えゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつけ”たのである。
その一つが自弁品についての取り決めであった。拘置所内で使用できる物品が限定列挙されており、使用できる数量までことこまかに定められているものである。珍妙というほかないものだ。かなりの分量ではあったが、全てを書き写すことにした。逮捕9日目と10日目の平成8年2月3日(土)と2月4日(日)のことである。
久しぶりに獄中ノートを開き、一つ一つの品目にゆっくりと目を通してみると、当時の房内の情景が鮮明に浮んでくる思いがする。以下は、私が驚きつつ書き写した自弁品のいわばアラカルトである。

*****(別表1)自弁糧食・飲料・品目表 (被勾留者所内生活の心得、P.31)
^^t
^cc^(品目)
^cc^(数量)
^cc^(価格)
^cc^(備考)
^^
^弁当(昼、夕)
^各1食
^時価
^-
^^
^かん詰、びん詰、ビ
ニール詰等の食品類
^1日2個以内
^時価
^-
^^
^果物類
^1日800グラム以内
^時価
^時季により制限する
^^
^菓子類(袋入り菓子類)
^1日2袋以内
^時価
^時季により制限する
^^
^パン類、生菓子類
^1日6個以内
^時価
^ただし食パンは一斤
^^
^生卵
^1日3個以内
^時価
^時季により制限する
^^
^調味類
^1品目1個
^時価
^しょうゆ、ソースは除く
^^
^飲料類
^1日2本以内
^時価
^-
^^/
注1.びん、かん等は、現品交付の際回収し、房内所持は原則として許可しない。
注2.ビニール、セロハン等の包装類は、用済み後に回収の上、破棄する。
注3.1日の購入額は別に定める額とし、これを超える物品の購入は原則として許可しない。
注4.本表の価格は別に掲示する価格表による。
注5.夏季期間中の飲食物については、腐敗のおそれのある品目を制限することがある。
注6.本表記載の品目は、すべて矯正協会支部(売店)が取り扱う。

*****(別表2)自弁日用品品目表 (同「心得」、P.32~P.34)
^^t
^cc^(品目)
^cc^(数量)
^cc^(備考)
^^
^眼鏡
^1
^ただし、ケース・メガネふき布を含む
^^
^補聴器
^1
^必要と認めたとき
^^
^義歯
^1
^必要と認めたとき
^^
^義(手)足
^1
^必要と認めたとき
^^
^義眼
^1
^必要と認めたとき
^^
^ヘルニア帯
^1
^必要と認めたとき
^^
^数珠
^1
^普通サイズの珠を通した周囲60cm以内のもの
^^
^耳かき
^1
^金属製を除く不燃性のもの
^^
^くし又はブラシ
^1
^金属製を除く不燃性のもの
^^
^ちり紙
^1束
^当所指定品に限る(ただし携入品については許可)
^^
^化粧石鹸
^1
^薬用及び高価なものは不許(当所指定品に限る)
^^
^石鹸箱
^1
^金属製を除く不燃性のもの(当所指定品に限る)
^^
^歯ブラシ
^1
^金属製を除く不燃性のもの(当所指定品に限る)
^^
^歯ブラシケース
^1
^金属製を除く不燃性のもの(当所指定品に限る)
^^
^歯磨粉、練歯磨
^1
^当所指定品に限る
^^
^はし
^1
^木竹又はプラスチック製
^^
^はし箱
^1
^木竹又はプラスチック製
^^
^食品容器
^3
^当所指定品に限る
^^
^コップ
^1
^当所指定品に限る
^^
^つまようじ
^1ケース
^当所指定品に限る
^^
^タオル
^2
^無地、標準型
^^
^ハンカチ
^2
^無地、標準型
^^
^◎香油
^1
^当所指定品に限る
^^
^ポマード
^1
^当所指定品に限る
^^
^クリーム
^1
^当所指定品に限る
^^
^シャンプー
^1
^当所指定品に限る
^^
^◎生理用品
^1包
^当所指定品に限る
^^
^サンダル
^1
^当所指定品に限る
^^
^扇子又はうちわ
^1
^当所指定品に限る
^^
^切手
^所要数
^-
^^
^葉書
^所要数
^-
^^
^郵便書簡
^所要数
^-
^^
^半紙、けい紙
^所要数
^必要と認めたとき
^^
^カーボン紙
^所要数
^必要と認めたとき
^^
^便箋
^1冊
^柄入不許
^^
^封筒
^10枚
^二重封筒不許。大型封筒は必要と認めたとき。
^^
^ノート
^1
^特に必要と認めたときは3冊まで許可。
^^
^鉛筆
^2
^消ゴム付は不許。当所指定品に限る。(赤又は青色鉛筆1本を含む)
^^
^ボールペン
^合計3本
^当所指定品に限る。(青又は黒各1本、赤1本)
^^
^消ゴム
^1
^当所指定品に限る。(砂消ゴムを含む)
^^
^下敷
^1
^金属セルロイド製は不許
^^
^シャープペンシル
^1
^当所指定品に限る
^^
^直定規
^1
^当所指定品に限る
^^
^キャップ
^1
^当所指定品に限る
^^
^筆入れ
^1
^当所指定品に限る
^^
^電気カミソリ
^1
^当所指定品に限る
^^
^電池
^1組
^当所指定品に限る
^^
^ヘアトニック
^1
^当所指定品に限る
^^
^ヘアリキッド
^1
^当所指定品に限る
^^
^◎ヘアピン
^10本
^当所指定品に限る
^^
^ヘアリンス
^1
^当所指定品に限る
^^
^ゴム紐
^1
^-
^^
^電子式卓上計算機
^1個
^乾電池を含む
^^/
注1.◎印は女子被収容者に限り認めるもの。
注2.本表により許可された品目であっても、その質量形状等から不適当と認めた場合は、不許可又は所持数量を制限することがある。

 

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