B08 マッチポンプ 8

***(8)問題点と対応策

以上の話にはいくつかの問題点が含まれている。

第一の問題点は、税務署OB税理士の行為は、明らかな犯罪であることである。まず、B税理士の行為は明らかに税理士法に違反しているにとどまらず、詐欺師まがいの手口は刑法にも触れるものであって、論評するまでもない。職業会計人としての矜持をうんぬんする以前の、極めて次元の低い問題であるからだ。
不正もしくは不公正な手段によって生活の糧を得ようとするのは、悪徳高利貸し、暴力団そのものである振り込め詐欺師と何ら変わるところがない。
弁護士も三百代言(さんびゃくだいげん)なる蔑称を奉られている悪徳弁護士がおり、医師にも患者を文字通り単なる金儲けの手段としか考えない悪徳医師がいる。悪徳税理士がいても何ら異とするには及ばない。

第二の問題点はB税理士が受け取った1000万円はそれ自体が裏金であることだ。職業会計人たるものはいかなる理由があるにせよ、当事者として裏金にタッチすべきではない。自らが脱税の当事者となるものであるだけに、当然のことである。

第三の問題点は、「税務署に顔が利く」という虚言に一般の人がだまされやすいことである。過去のことはいざ知らず、現在の税務行政については顔を利かせてもみ消すということはまずあり得ないことだ。
税務的に明白に黒である事柄、つまり脱税については、正規の税務調査によって見いだされたものである以上、如何ともしがたいものである。現在は、特殊な政治的圧力でさえ効き目がないと言われているのに、ましてや、税務署OBだとはいえ、税理士などの力の及ぶところではない。

ただ一般に誤解されやすいのは、税務にあっては白か黒か初めからはっきりしていることが意外に少ないことに原因がある。特に税務調査で問題となる事柄の大半は、はっきり黒と断定できるものではなく、特殊状況を勘案して見方を変えれば白になり得るものであることが多い。私はこれを“税務における灰色の問題(グレーゾーン)”と呼んでいる。
黒に近い灰色であっても、黒そのものではなく灰色である以上は、屁理屈ではない正当な理論構成が可能である。税務当局と交渉する余地が生ずるのはこのような理由からだ。
このようにして交渉した結果、追徴課税がゼロになったり、半分になったりするのはよくあることで、“顔”とはなんら関係がない。このようなことをもって顔を利かせたと言っている税理士がいるならば、素人の無知をいいことに嘘をついていると断言して差し支えない。納税者の代弁人として当然のことをしているだけのことだ。

次に会社側の問題点を指摘しておきたい。裏金ー使途不明金のことだ。支払った相手先を税務当局に対してはっきりとは説明することのできない支出金のことで、使途不明示金というのが正しい。
裏金の処理に関して、このC社が行っていた水増し経費による方法は最悪の方法である。はっきりした脱税であり、損得勘定からしても決してプラスにはならないばかりでなく、外注先の管理にゆるみが生じて、社内のモラールが低下する恐れがあるからだ。
業種によっては、現実問題として裏金が必要となる場合がある。生きていくためにはある意味では致し方ないことかも知れない。同じ裏金を使うならば、脱税とはならず税務当局に対してビクビクする必要のない方法を考えるべきであろう。

(了)
 

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