070 検面調書、その詩と真実

****4) 検面調書、その詩と真実<br />
一、 刑事法廷に提出される重要な証拠の一つに、検察官面前作成調書、略して検面調書がある。<br />
わが刑事法廷にも、複数の検事によって作成された数多くの検面調書なるものが提出された。<br />
それらは、マルサと検察とが合作した偽りのストーリーを肉付けし、補強するために用意された、いわば詩であり、真実とはほど遠い想念の産物であった。

二、 検事達が創り上げた供述調書は、あまり出来映えがよいとは言い難い詩であった。
一流の詩人は、真実にあらざることを高らかに唱い上げ、読者に真実の感動を与えるものである。ゲーテの「詩と真実」はその最高傑作であろう。
検事という名の詩人達は、真実にあらざることを供述証書によって高らかに唱い上げたまではよかったが、他の誰にも真実の感動を与えることができなかった。嘘を真実らしく唱い上げる技術にいささか難があり、作品がいかにも真実らしいレベルに達していなかったのである。
更に、複数の検事たちが思い思いの詩を創り上げたため、作品同士が互いに不協和音を発するに至り、収拾がつかない状態になったのである。

三、 一方で、虚構のシナリオ作成の謀議に参加しながら、正直に真実を唱い上げる供述調書の作成をした不心得な検事もでてきた。マンガの世界である。
当然このような作品は総司令官である田中良とその配下である藤田義清によって厳しく選別され、排除された。虚構のシナリオを崩すものだからである。

四、 このようにして、松江地裁第31号法廷には、三流の詩が陸続と並べられ、法廷には不協和音を主調とするシンフォニーが鳴り響いた。
タクトを振るのは、背の低い小太りのコメディアン検事立石英生であり、彼が懸命になればなるほど、聴衆の失笑を買った。

五、 当初法廷に提出された検面調書は概ねウソの自白のオンパレードであり、真実の検面調書は法廷に開示されることなく隠匿されていた。
公判検事立石英生が裁判長の勧告によって、いやいやながら開示した26通の真実の供述調書がこれであった。この他にも、多くの真実の供述調書があったものと思われるが、立石英生は頑として開示しようとはせず、闇に葬った。検察官の権限だそうである。

六、 以上の事実は、刑事裁判において当然の如く扱われている検面調書の特信性が、単なる幻想にすぎないことを如実に物語る。いわば、検面調書特信性の神話が崩壊したのである。

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