西武鉄道 銀行の責任逃れ-その5
- 2004.12.21
- 山根治blog
このところマスコミの西武鉄道グループに対するバッシングは激しく、なかでも、オーナーである堤義明さんに対しては、個人のプライバシーにまで踏み込んだ、行き過ぎたバッシングまでなされています。凄まじいの一語に尽きますね。
確かに、先の総会屋利益供与事件、あるいはこの度の虚偽記載事件は社会的に批難されても仕方のないものでしょう。しかも、グループ内で絶対的な権限を持っていたといわれる堤さんが、批難の矢面に立たされるのは当然のことかもしれません。
しかし、この1ト月余りの間、西武鉄道グループに関心を持って、それなりに調べを進めてきた私は、どうも今一つ釈然としないのです。
堤さんだけを悪者にしていいのか、何か大きな問題のすり替えがなされているのではないか、表面化した2つの事件は、いわばスケープ・ゴートで本当の問題が巧妙に隠されているのではないか、-このような疑念が私の中に沸き起こり、日に日に膨らんでいくのです。
私の疑念をすっきりさせ、隠されたものを明らかにするためには、西武鉄道グループの経営実態を過去に遡って改めて直視する必要があるようです。
私は既に平成16年3月期の決算数字をもとに、コクドを含む西武鉄道グループは、今のままでは借入金の返済ができない状況にあること、つまり、事実上経営が破綻していることを示しました。
このような状況は今に始まったものではないようです。一体いつごろから始まったものでしょうか。
今までブラック・ボックスとされてきた親会社であるコクドの財務内容が、先日ほんのわずかですが明らかにされました。
「堤王国の危機」と題する12ページに及ぶ特集記事(週刊ダイヤモンド、2004年11月20日号)においてです。
この記事の中にはコクドのデータがいくつか出てきます。週刊ダイヤモンドという信用あるメディアの記事であることに加え、有価証券報告書をはじめとして私が集めることのできた資料と照合してみたところでも矛盾点はありませんので、私は、そこに示されたコクド関連のデータの信憑性は高いものと判断しました。
しかも、コクドの内情を知悉している者が、もとのデータに一定の加工を施したり、何やらもっともらしい説明をデータに加えていることからしても、逆に生のデータがベースになっていることをうかがわせます。
このような細工ができるのは一体誰でしょうか。コクドのごく一部の幹部と生のデータを知りうる取引銀行以外には考えられません。とすれば、データの加工の仕方(しかも重大な点で大きなゴマカシがなされています)とか、データに対する説明を見てみますと、経営サイド(つまり、コクド側)の発想ではなく、貸金の回収を至上命題としている昨今の金貸し(つまり、銀行側)の発想が露出していますので、これらの情報は取引銀行サイドから一定の意図のもとに流されたものと思われます。
私は、この特集記事に掲載されたコクドのデータをとりあえず真実のものと認め、データに関するもっともらしい説明は参考程度にして、意図的なゴマカシの細工を取り払った上で、近年のコクドの財務状況をおおまかに推計してみました。
その結果、-
+少なくともこの5年間にわたって、コクドは多額の赤字(経常利益がマイナス)を出していること。
+この赤字をカムフラージュするために、グループ各社に資産の売却等をして、最終利益を毎年1億円程に調整していること。
+この赤字のグループ各社への付け回し(含み益の益出し)は、この5年間で750億円を超えるものであり、見方によれば粉飾(ドレッシング)とも言えること。
+以上により、コクドは事業収益から借入金を返済することが全くできないこと、ちなみに、平成16年3月期の数字をもとに計算すれば、返済可能財源は、マイナス63億円(週刊ダイヤモンドの特集記事上は、プラス139億円と偽りの数字が掲載されています)であること。
以上の事実が浮かび上がってきたのです。
尚、上記の推計根拠等については、私の「経済事件ノート」において、“西武鉄道事件の深層”と題して詳しくお話しする予定です。
西武鉄道事件は、既に取り上げているハニックス工業事件と事件の輪郭が余りにもよく似ていることに最近気が付き、慄然としているところです。バックに誰かがいて、国税当局などの国家権力が狂言回しに利用されているらしいところなど、そっくりなのです。
ハニックス工業事件が私にとって余りにも強烈なものでしたので、この西武鉄道事件に遭遇したのも何かの因縁なのかもしれません。
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ここで一句。“慎重にダルマ落としをして自滅”-横浜、おっぺす;;;rr;(毎日新聞、平成16年10月22日号より);;;;
(この春以来、堤さんの側近が次々とダルマ落としに。西武鉄道サイドは一循、次は金貸しサイドの番?)
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