西武鉄道 銀行の責任逃れ-その3
- 2004.12.07
- 山根治blog
小柳社長は、財務体質は健全であると言い張っているようですが、既にこのブログで10回にわたって詳しく述べましたように、西武鉄道グループの財務体質は決して健全なものではありません。
あちこちのメディアも社長の言葉に歩調を合わせるように、厖大な含み資産があるから財務体質は健全だとか、資金繰りに全く問題ないなどと言っています。しかし、含み資産は処分してはじめて会社の財務に貢献できるもので、計算の上でいくら数字をはじき出してみても余り意味がありません。
つまり、事業用の資産を処分することは、全部か一部かは別として会社の事業を清算することを意味するもので、そのような大ナタをふるうことなく、単に机上でいくら含み益の計算をしてみたところでナンセンスなのです。
従って、会社の財務内容を検討するためには、そのような清算をすることなく、まず従来通りの事業を継続していくことを前提として考えることが基本です。
このための一つの目安になるのが、事業を継続していって本当に債務の弁済ができるのか、弁済できるとすれば一体何年かかるのか考えてみる訳ですが、西武鉄道グループの場合、本来の事業活動から得ることのできる稼ぎでは、グループ全体の借入金9000億円(コクド分を入れると1兆3000億円)を返すことが難しいのです。
このたびの不祥事が発覚する前の平成16年3月期のデータをもとにして、借入金の返済可能財源を見て
みますと、
***1.西武鉄道グループ(コクドを除く) 260億円
(会社側は260億円と言っていますが、私はさきに多くとも296億円であると推計していますので、会社側の数字は概ね妥当なものでしょう。尚、会社側は、通常の目標額は200億円であると言っています。)
***2.コクド マイナス63億円
と、全体で197億円(=260億円-63億円)という数字がはじき出されます。
つまり、グループ全体の返済可能財源は197億円であり、これを全て借入金の返済に充当するとした場合でも、完済までに66年もかかってしまいます。(1兆300億円÷197億円=65.98年)
しかも、これは金利が正常な融資先である上場会社ということで優遇されており、低い水準に設定された状態のものです。
それぞれの決算書から平均利率をはじいてみますと、
+西武鉄道グループ(コクドを除く) 1.77%
+コクド 2.65%
と低い水準であることが分かります。
上場廃止が決定した現在、西武鉄道グループに対する銀行の査定は当然のことながら厳しくなり、“正常先”から少なくとも“要管理先”へと変更されているはずです。財務内容の悪さからすれば、更に一段階低い“破綻懸念先”へと変更されていたとしてもおかしくないでしょう。
銀行は、慈善事業を行なうところではなく、所詮金貸しですから、いくら経営が悪くなろうとも、実際は破綻状態であっても倒産していない会社に対して元金とか金利の減免などはしてくれません。逆に会社が苦境に陥れば陥るほど融資条件を厳しくしていくのが通例です。
よく、銀行は晴れた日に傘を貸し、雨が降れば傘を取り上げる、と言われるのはこのことを指しています。溝に落ちた負け犬は徹底的に叩かれるのです。
金利のアップが避けられないものとして考えてみますと、さきに計算したコクドを含むグループ全体の返済可能財源197億円(年間)は、金利が1.5%アップしただけでゼロになってしまいます。(197億円÷1兆3000億円=0.015)
この1.5%のアップは、銀行の実務の上から十分にあり得るものですので、こうなれば西武鉄道グループは自らの稼ぎからは、一円の返済もできないことになってしまいます。
必然的に、グループとしては不採算部門を切り捨てて、売却し、債務の弁済に充てざるを得なくなるでしょう。これはとりもなおさずグループの解体を意味しています。
―― ―― ―― ―― ――
ここで一句。“かの国も民主主義とは言っている”-八王子、寝太郎;;;rr;(毎日新聞、平成16年11月18日号より);;;;
(地上の楽園、朝鮮民主主義人民共和国。かなり前からボロボロになっていた身体、それでも健康と言い張る悲喜劇。)
-
前の記事
西武鉄道 銀行の責任逃れ-その2 2004.11.30
-
次の記事
西武鉄道 銀行の責任逃れ-その4 2004.12.14