058 最終弁論と意見陳述

*(エ)最終弁論と意見陳述

一、 平成10年3月24日に、検察官立石英生が行なった論告求刑を受けて、私を含めた3人の被告人は、三人の弁護団と度々会合を開き、最終弁論にそなえた。

二、 平成10年5月26日、第31回公判廷で、弁護側は509ページに及ぶ弁論要旨を準備して、最終弁論を行なった。中村寿夫主任弁護人のほか、松原三朗及び大野敏之弁護人が立ち会った。



三、中村主任弁護人による最終弁論の陳述が終った後、私は意見陳述を次のとおり行った、 ― 平成10年5月26日意見陳述

 裁判を終結するのに際して、一言申し上げます。

 この事件の本質は、佐原良夫という詐欺師に私と組合とが騙されたことにあります。そのような佐原という人物を見抜くことの出来なかったのは私の不徳の致すところであり、その不明を深く恥じている次第であります。私を心から信頼して下さった組合員の皆様にはお詫びのしようもございません。

 国税の査察が入ったり、三人の組合員の方々が逮捕までされ、連日のようにあることないことがスキャンダラスに報道され、言葉に言えない位のつらい思いをなさったことに思いをいたす時、組合の方々に対して、深くお詫びを申し上げると共に、この償いは私の一生をかけてさせていただく所存でございます。

また、私の部下として、私を信頼して忠実に職務を果たして下さった小島さんまでが逮捕され、起訴されるに至り、結果的に多大なご迷惑をおかけしたことは、誠に心苦しく、この場で改めて、深くお詫びする次第であります。

更に、三百日近くも勾留され、社会的に大きな汚名を着せられた私に対して、従来と変わることなく、私の事務所から離れることなく、仕事を依頼して下さっている数多くのクライアントの皆様には感謝の気持ちで一杯です。

 国税当局はともかくとして、私がこれまで厳正かつ公正であると信じきっていた検察当局までが、私の必死の説明を全て無視する形で起訴をし、偽りの事実を構築してまで、私と組合とをムリヤリ断罪しようとしていることに関しては、ただただ唖然として申し上げる言葉もございません。起訴をする前に、今一度冷静に真実を見据えてもらえなかったことが返す返すも残念であります。

 私は日本における裁判制度を信じています。この事件では、何ら隠されているものはなく、その全てが法廷にさらけ出され、明らかになっています。事実を事実として捉え、公正な裁きがなされることを固く信じていることを申し上げ、意見陳述を終わります。山根 治

四、 平成10年10月15日、第32回公判廷で、検察は論告要旨の補充を行ない、弁護側も弁論要旨の補充を行なって、結審した。

 判決の宣告は、平成11年1月19日とされていたが、同年2月25日に変更された。その後、更に、同年5月13日へと再度変更された。

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