西武鉄道 グループの資金繰り-2
- 2004.11.05
- 山根治blog
西武グループの短期借入金2,348億円の実態を考えるために、グループにおける短期資金(運転資金)の必要額を推計してみることにします。
まず、グループの総売上高4,147億円の内訳を見てみましょう、-
1.運輸事業 | 2,383億円 |
2.レジャー・サービス事業 | 1,081億円 |
3.不動産事業 (内.不動産販売業) | 654億円 (378億円) |
4.その他 | 29億円 |
合計 | 4,147億円 |
上の表をじっと見てみますと、グループ売上の大半がサービス業による収入であり、物販業とか製造業のように仕入資金等の資金需要はあまりないようです。
一部、不動産販売業とその他事業に、そのような資金需要が考えられますが、この2つを合計しても407億円と、全体の9.8%にしかなりません。
収入の多くが「日銭(ひぜに)」であり、中には定期収入(定期券販売による収入のことでしょう)のように、前受金として受け取っているものもありますので、こと運転資金については物販業とか製造業とは全く異なります。
そこで、決算書(連結)をベースにして、グループが必要とする短期資金(運転資金)を大まかに計算してみますと、理屈の上からは638億円になります。
1.受取手形及び売掛金 | 29,125百万円 |
2.分譲土地建物 | 75,917百万円 |
3.たな卸資産 | 3,162百万円 |
4.支払手形及び買掛金 | △30,967百万円 |
5.前受金 | △13,384百万円 |
合計 | 63,853百万円 |
西武グループの短期借入金は、2,348億円でしたので、計算の上から算出される638億円と比べれば、1,710億円も多いことになります。
このことは、本来は運転資金のための短期借入金ではないものが1,710億円だけ混入されていることを意味します。つまり、実際は長期借入金であるものが、1,710億円だけ短期借入金とされているのです。俗に「ころがし」と称する融資で、たとえば約定の上では返済期日をとりあえず3ヶ月とか6ヶ月にしておいて、期日がくれば手形の切り換えを行って、「ころがし」ていく訳です。長期資金としての融資(証書貸付)の理由がつけにくいために、短期の運転資金名目で一年内の手形を切り換えていく、銀行のいわばご都合主義の産物です。
運転資金の借入金としては、どうにも理屈のつかない、この1,710億円を、たとえば5年分割返済の長期借入金に切り換えたとして、西武グループの借入金返済額(約定)を計算してみますと、従来の長期借入金の返済資金不足額が、-
1年目 | 842億円 |
2年目 | 934億円 |
3年目 | 403億円 |
4年目 | 805億円 |
5年目 | 954億円 |
でしたので(「ゴーイング・コンサーンの幻想-6」)、各年に342億円(1,710億円÷5)を加えた、
1年目 | 1,184億円 |
2年目 | 1,276億円 |
3年目 | 745億円 |
4年目 | 1,147億円 |
5年目 | 1,296億円 |
となり、今後5年間、毎年1,000億円を超える(3年目だけは違いますが)返済資金不足が発生することになります。
あるいは、西武グループが目標としているフリー・キャッシュ・フローの200億円を、目一杯借入金8,966億円の返済に充当するものとして計算してみますと、全額の返済が終了するには、-
44.8年 (8,966億円÷200億円)
と、45年もかかることになります。
しかも、この計算は西武鉄道が上場廃止にならないことと、現在の超低金利政策が続くことが前提となっています。
仮に、上場が廃止されたり、超低金利政策の転換がなされたりしますと、西武グループの借入金の金利は、現在の水準より確実に1%~5%は上昇するでしょう。しかも、かなり近い将来に、それらが現実のものになる可能性が否定できませんので、その時点で会社が目標としているフリー・キャッシュ・フローの200億円は90億円~450億円だけ減少することになり、110億円~マイナス250億円となってしまいます。
つまり、フリー・キャッシュ・フロー(返済可能財源)が200億円からゼロに向かい、マイナスに転ずることが高い確率で予測されるのです。
このことは、かなり早い時点で、西武グループが自らの稼ぎの中から借入金を返済することが全くできなくなることを意味します。45年で完済できるどころの騒ぎではありません。
―― ―― ―― ―― ――
ここで一句。
“娘が2人いるよう化粧前と後” -札幌、白野わんこ(毎日新聞:平成16年9月23日号より)
(化粧落した借入金、銀行さんが慌てだし。)
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