019 強制調査 四日目 ― 平成5年10月1日(金)
- 2004.05.11
- 冤罪を創る人々
****5)強制調査四日目 ― 平成5年10月1日(金)
一、 午前10時30分。松江税務署取調べ室。
二人が待っている。野菜スープの入ったポットを持って部屋に入った。
新本修司がしばらくしてから、黙ったまま道路側の窓を開けた。二人とも余り話をしない。
昨日食ったニンニクが相当の威力を発揮しているようだ。藤原孝行、イタチの最後っ屁をくらったドラ猫となる。面白い顔である。
二、 藤原:「山根さん、夕べは焼肉を食べましたね。」
― こんな状態の時、肉など食えるか!
山根:「あんたらが私をいじめるので、少しでも体力をつけようと思って、にんにくタレのうどんを食べたんですよ。」
藤原:「私ら、人に会う前には、にんにくは食べないことにしているんですがね。」
山根:「礼儀正しいんですね。」
藤原:「私、つきあいは紳士的にすることにしています。」
山根:「あんたもジョークがきついね。」
藤原、絶句。
― たっぷり皮肉を言ってやった。こんな連中が紳士なら、暴力団はみな紳士だ。
三、 藤原:「今日はえらく元気そうですね。」
山根:「エー、おかげさまで昨日はよく眠れましたから。」
藤原:「そうでしょう、そうでしょう。昨日はたくさん書き写されましたからね。」
藤原、皮肉を切り返したつもりでいる。私が夜遅くまでの取り調べに応じないばかりか、質問顛末書をこまかく吟味して訂正させる上に、書写までするので、うんざりした顔をしている。
「書写をしたのは、山根センセイがはじめてだ。いつもの何倍も時間がかかる。」
ブツクサ言っている。
― 知るか。私が令状を写したときといい、よくグジグジ言う男だ。
四、 取調べは午前中で終った。しばらく事情聴取は中断する、後日改めて自分の方から連絡すると、藤原は言った。
五、 夕方6時。島根総合研究所、理事会。マルサの話をする。
法に触れることは絶対にしていないので、皆、安心してほしい旨話す。
生々しいマルサの話に大いに盛り上がる。とりわけ、今日のニンニク事件のてん末は好評であり、うけた。
マルサをサカナにして、皆で飲む。
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