前代未聞の猿芝居-③
- 2019.04.10
- 山根治blog
前回、「証拠等関係カード」番号(2)の「課税額計算書」以下12の書面は、その(立証趣旨)のところで証拠捏造の痕跡を残している旨指摘した。
番号(2)の(立証趣旨)欄において、(平成28年1月期ほ脱税額等の特定)とされ、番号(8)においては(売上高の特定等)、番号(9)においては(仕入高の特定等)とされているように、番号(2)、(3)及び(7)~(17)の(立証趣旨)欄には、全て特定という文言が用いられている。それぞれに添付された査察官島村仁士作成の書類には特定という文言は一切用いられていない。用いられているのは確定というなじみのある文言だ。
この書証目録(証拠等関係カード甲)を作成したのは検察官である。検察官は、あるいは、犯則事実、つまり脱税所得と脱税額を特定すればよく、敢えて確定という文言を用いたくなかったのかもしれない。あるいは、判決が出る前に、犯則事実である脱税所得と脱税額が確定しているとなると、裁判官の出る幕がなくなってしまうとでも考えたのかもしれない。
いずれにせよ、査察官が用いた確定という文言のかわりに検察官が特定なる文言を用いたのは、言葉のスリ換えであり、何らかの意図を持った捏造だ。
次に、証拠捏造の痕跡が明確に現われているのが、「証拠等関係カード」に添付された査察官島村仁士作成の書類である。
査察官島村仁士が作成した12の書面のうち、
(2)「材料仕入高調査書」検甲9。記録第522号
の2つを取り上げて説明する。ほ脱額(脱税額)の大半を占めるのが、売上高(現金売上の一部を除外していた売上高他)と仕入高(架空及び水増計上していた材料仕入高他)の項目であるからだ。
査察官島村仁士が作成した調査書(検甲8号証~検甲17号証)を取りまとめたのが、松江地方検察庁の上原修一検察事務官が作成した検査報告書(ほ脱所得額の内訳について)検甲7号証である。この検甲7号証で犯則所得計として掲げられている金額、即ち、
(2)平成29年1月期 153,672,439円
が、甲1号証の告発書における「告発事実」で示された犯則所得金額と一致する。
尚、告発書における脱税額は、
法人税額 11,942,800円
地方法人税額 525,400円
(2)平成29年1月期
法人税額 36,015,500円
地方法人税額 1,584,600円
であるが、これらは、検甲2号証「脱税額計算書」(作成者、島村仁士査察官)で示されている。
まず、「売上高調査書」も、「材料仕入高調査書」も大同小異、その中で査察官島村仁士の言っていることは同じことなので、ここでは、「売上高調査書」だけを取り上げることにする。
この「売上高調査書」には、驚くべき文言が散りばめられている。まず、「証拠等関係カード」においては「標目」として「売上高調査書」となってはいるが、実際の中味は、「調査所得(調書による増減金額)」と変えられ、平成28年1月期と平成29年1月期、それぞれの年度の当期申告額と査察が調査した調査額との差異が、増差額(課税標準の増差額)として確定したことを明示している。
更には、金額の「確定方法」として次のように記されている。
要するに、査察官島村仁士が行った査察調査(平成30年3月31日で廃止される前の国税犯則取締法第1条の質問・検査・領置)の権限は、課税所得の算定だけでなく、課税所得の確定にまで及ぶものであると宣言しているに等しい。もちろん、大ウソである。
査察の基本にかかることがらについて、実体法の規定に明確に反している嘘を、堂々と刑事法廷の場に検察官と共謀して検甲8号証として持ち出してきたことは、筆者が平成29年11月26日付けで出した申込書と平成30年1月26日付で出した請願書を素直に認める訳にいかなかったキャリア官僚重藤哲郎(当時、広島国税局長。現、国税庁直税部長)の歪んだプライドと意地があったに違いない。しかし、無駄な抵抗だ。
この大嘘が前提となって進められた本件査察調査にもとづくA社の脱税事件は、偽りの上に偽りが加えられ、査察官が検察官と共謀してもっともらしく法廷の場に提出した証拠が見るも無残な状況になっている。この刑事法廷は、インチキ証拠のオン・パレードである。
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