アッキード事件の闇-②

 籠池氏の証人喚問が終わった。政権与党である自民党も公明党も論点をスリ替えて、火消しに躍起である。前回述べたように、この大疑獄事件の黒幕は、長い間歪んで運用されてきた悪しき官僚制だ。とりわけ問題なのは、官僚制の中核を占める財務官僚である。



 政権与党側だけではない。民進党をはじめとする野党も及び腰だ。籠池氏が受けてきた“陰の恩恵”を、同じように受けてきたからであろう。

 しかし、アッキード事件に関していえば、天皇制、ひいては憲法改正がかかわっていることから、日本国の将来がかかっている重大事件である。単なる学校認可とか補助金不正受給の問題だけではない。これまでのようにいいかげんな対応は許されない。

 そもそも安倍政権とは一体何ものであるか。私は安倍家の顧問ではないが、この30年間、岸信介、安倍晋太郎、安倍晋三各家の極めて近いところにおり、好むと好まざるに拘らず、彼らの政治資金の実態に触れる機会があった。もちろん無償である。私に守秘義務はない。
 私が21年前の平成8年1月26日に、冤罪で逮捕されたのも、今になって考えれば、岸-安倍一族のタブーに触れるところがあったからではないか。社会的に抹殺されそうになり、かつ、それが執拗に20年も続いたのは、岸-安倍一族の“怨霊”とでもいうべきもののしわざではなかったか、と考えるに至った。“昭和の妖怪”といわれた岸信介の怨霊が、光永正義と光永佐代子を通して私に祟ってきたものと確信するに至ったのである。

 岸-安倍一族をしっかりと支えていたのは、官僚制の闇であった。とりわけ、歳入に関する闇、つまり税務行政の闇であった。
 この税務行政の闇については、昨年、「冤罪を証明する定理」(山根定理)を発見したことによってその実態が解明された。査察調査だけでなく、一般の税務調査(なかでも、国税局の資料調査課が行っているリョウチョウ)が根本的に誤ったものであることを明らかにした「定理」である。
 この「定理」の指し示す方向性は、歳入庁である国税庁は、解体的出直しをすべきことである。
 ところが、ここにきて歳出庁である財務省にも同じような問題点があることが判明した。
 前回述べた「適化法」(「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」-昭和30年8月27日、法律第179号)の罰則の規定に、国犯法と同様の犯罪構成要件があったのである。

 それは一体何か。

「偽りその他不正の手段により補助金の交付を受けた者は、五年以下の懲役に処する」(適化法第29条第一項)

規定の中にある。この罰則の適用は、

「国または地方公共団体において第29条から第31条までの違反行為があったときは、その行為をした各省各庁の長その他の職員または地方公共団体の長その他の職員に対し、各本条の刑を科する」(適化法第33条第2項)

ものとされている。

 この29条第一項にいう「偽りその他不正の手段」という犯罪構成要件は、各種税法で定めている「偽りその他不正の行為」とそっくりである。ただ、適化法が「手段」とされているのに対して、国犯法では「行為」とされているだけだ。
 もっともこの差異は、みかけ以上に非常に大きなものである。詳細は別稿に譲るが、ここでは、「偽りその他不正の手段」は、行政手続法(平成5年11月12日、法律88号)に深くかかわっていることだけを指摘するにとどめる。

 行政手続法が成立した平成5年といえば、55年体制が終焉し、細川護熙連立内閣がスタートした年だ。
 「行政指導」(“ギョウセイシドウ”)の名のもとに、役人たちが国の予算(歳入と歳出)を自由気ままに操ってきたことに対する反省から定められたのが行政手続きである。
 ところが適用除外が同法第3条と第4条に定められているが、歳入と歳出に関するもので目につくのは、歳入に関しては国犯法と国有財産法が適用除外とされ、歳出に関しては適化法が適用除外とされている。事実上、完全な骨抜きである。
 このうち、国犯法については、平成23年12月成立(施行平成25年1月)の国税通則法によって適用除外が外され、調査手続きが法定化されるに至っている。いいかげんな税務調査ができなくなったということだ。
 しかし、国有財産法と適化法だけはいまだ暗闇の中に放置されている。この2つだけはいまだ、行政手続法の上で、適用除外とされている。ただ、適用除外とされているからといって、役人達が好き勝手に国有財産を処分したり、予算をいじくったりできるはずがない。必ずや、手続に関する「内規」が存在するはずである。部外秘とされているものであろうが、それを引っぱり出せばよい。行政文書開示請求をして引き出せばよい。

 現在のアッキード事件については、大阪財務局長が、森友学園に払い下げた国有財産の交渉経緯のほとんど全てを「破棄」したなどと国会で喋っているが、とんでもないウソだ。このような言い訳が通用すると考えている大阪財務局長は、キャリア官僚の倒錯した思い上がりである。明らかなウソである。そんなことが公務員にできるはずがない。
 このウソを暴(あば)くには、部外秘とされている行政文書(国有財産の処分に関する諸手続)を引っぱり出すことだ。その上で、大阪財務局長の発言と照らし合わせてみればいい。
 国会議員の中には、与党でも野党でも、官僚出身者が多くいて、その実態は承知のはずである。民進党だけでなく、共産党までも、この大疑獄事件に及び腰なのは、とことん追求すれば、自分達にはね返ってくるとでも考えているのであろう。ブーメラン現象など考えていては、ことが進まない。

 日本だけでなく、世界的にも情報はインターネットの世界である。一年前に公表された「パナマ文書」だけでなく、これからも続々と金銭に関する機密文書が公開されていくであろう。
 国民の権利・義務に関する手続きは、役人たちの恣意的な運用に委ねられてはならない。

(この項おわり)

 ―― ―― ―― ―― ――
 ここで一句。

 

”国有地ゴミも積もれば8億円” -秦野、てっちゃん

 

(毎日新聞、平成29年3月26日付、仲畑流万能川柳より)

(はじめに答えあり、アトはどうにかなるだろう。ものも言いよう、東大話法。)

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