アッキード事件の闇-①

 まるで「東大話法」のオン・パレードである。

 アッキード事件をめぐって、中心人物である籠池(かごいけ)氏をはじめ、稲田朋美防衛相の発言が、日替りメニューのようにクルクルと変る。誰の目から見てもツジツマの合わない矛盾だらけのことを胸を張って喋っている。

 疑獄事件の中心人物の一人である安倍晋三総理にいたっては、質問の主旨を巧みにはずし、的外れな同じことを繰りかえすだけである。壊れたレコード盤といったところだ。

 何故このような現象が起きているのか。他でもない。この一大疑獄事件の“犯人”が、いまだ闇に隠れており、表に出てこないからだ。“犯人”といっても、生身(なまみ)の人間ではない。
 では、この“犯人”とは一体何か?
 ズバリ、官僚制だ。100年以上にわたり、日本国を自由自在に操り、食い物にしてきた政治システムだ。
 その官僚制の中核に位置しているのが、かつての大蔵省、今の財務省である。

 官僚制については、その歴史的な分析を含めた植草一秀氏の秀れた論考がある(『日本の独立』-主権者国民と「米・官・業・政・電」利権複合体の死闘)。
 植草氏は、日本国の統治者が誰であるかについて、国民の間に倒錯した考え方が定着していることを鋭く指摘する、-

「日本国憲法が主権在民を定めたにもかかわらず、国民自身に自らが統治者であるとの認識が不足している。政治家や官僚を統治者と勘違(かんちが)いしている。政治家も官僚も主権者国民に対する奉仕者であるにもかかわらず、国民側が政治家や官僚を統治者として自分の上位に位置付けてしまっているのだ。」(前掲書.P.54)

 官僚とは、平たくいえば、「お上(かみ)」である。「お上」は、その時々の政治家をとり込んで、常に彼らの上に立っている。
 ここでいう政治家とは国会議員だけではない。地方議員も含めたものだ。しかも、政権与党だけではない。野党も含めたものだ。
 かつての55年体制下における日本社会党は、表面的には自由民主党と鋭く対立していたが、その実、裏で手を結んでいた。この実態は現在も何ら変わっていない。とりわけ現在の民進党は、自民党の一分派であるにすぎない。
 原子力発電所にしぼって考えてみると、共産党でさえ同じことだ。
 6年前に大事故を起した福島第一原発は、日本における第一号の原発であった。この原発はアメリカから全ての資財を持ち込んで組み立てられたもの(“ターン・キー方式”)だ。
 次につくられたのが島根原発一号機である。この原発は、福島第一原発と同じ設計図を用いて、日本の日立製作所が作ったものだ。
 この日本における一号機と二号機は、当時の共産党が深く関わっている。
 島根原発に関しては、山岡剛(大正14年生まれ。平田市三津町。日本共産党、小岩細胞。)が竹下登(当時、通産政務次官)の秘書として辣腕をふるい、松江市に原発を持ってきたとされている。東京電力の一号機も同様、別の共産党員が動いている。

 ここで森友学園問題-アッキード事件に立ちかえる。
 この問題はまさに、官僚制そのものを鋭くえぐることになりそうだ。
 平成29年3月18日、19日、20日と行われた東京都の百条委員会における豊洲移転問題も、官僚制にかかわるものだ。ただ現在までのところでは、問題点が上すべりであり噛み合っていない。アッキード事件と同様である。

 ここで問題とされるべきは、

「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(昭和30年8月27日法律第179号)

だ。俗に、適化法と称されているものである。
 補助金の交付の不正な申請とか、不正な使用がなされた場合には、補助金の返還が命ぜられるだけではない。加えて、

「偽りその他不正の手段により補助金の交付を受けた者は、五年以下の懲役に処する」(同法、第29条第一項)

とされている厳しいものである。
 仮に籠池氏側の言い分が真実であるとすれば、籠池氏は適化法違反の犯罪者ではなく、被害者ということになる。安倍晋三総理と竹下亘国対委員長が、勢い込んで籠池氏を証人喚問に引っぱり出したのは、果して吉と出るか凶と出るか。
 私の現時点(平成29年3月20日)における見立(みたて)は、適化法違反を導いたのは、下村博文氏とその妻、下村今日子氏、及び迫田英典氏を筆頭とする政・官人脈ではないか、ということだ。ほどなく明らかになるはずである。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――
 ここで一句。

 

”夢とウソ混ぜて政治家人気取り” -京都、夢見夢子

 

(毎日新聞、平成29年2月15日付、仲畑流万能川柳より)

(“夢もなしウソもなければタダの人”)

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