019 真相の浮上
- 2016.11.15
- 山根治blog
二、真相の浮上
検事はおそらくこの段階で、そんな金は中江が簿外で使ってしまったと考えられるとか、そんな金はどこかで費消したのだろうと、またまた頭の中で想像しただけの何の合理的な根拠もないヘリクツを言うかもしれません。まあ、低能なる人間の言うことでありいちいち腹を立てていても仕方ありません。数字で示すのみです。客観的な数字をごまかすことはできません。しかも検察が出してきた不完全な資料だけに基づいて考えた数字なのです。
真相はバランスシートの中に隠されていたのです。この真相の扉を開くのに数学的な思考方法が必要であったにすぎません。トリックを作った人間はうまく作ったつもりでしょうが、しょせん真実に勝てるものではありません。
58年4月は5859万2949円足りません。むろんこの不足分は3月までのキャッシュの余りで十分おぎなえます。
ここまでの説明で58年4月末にはキャッシュが15億7920万5128円あったということです。数学的逆算が検事のヘリクツに勝つ急所はまさにここにあります。15億7920万5128円のキャッシュが4月末にないと考える人がいるとすれば、その人は数学を信用していない自分に恥じねばなりません。
たしかに15億円ものキャッシュは手持ちにできません。これは絶対です。正直に言っておきます。当初、私はこのように思っていましたので手持ちキャッシュの逆算を敢えてしなかったことはすでに述べました。ところがある日、抜けている口座がありうることをバランスシートの常識から考え出したわけです。本公判の証拠として間に合うかどうかはわかりませんが、これらのキャッシュが実際にどこにどのようにしてあったのか、説明できるはずであるとも考えています。
当局は、会社の口座でキャッシュや株券が入っているのは信用取引の口座だけであるという錯覚を我々に与えていたのです。現物取引の口座にはキャッシュや株券がないとの勝手な判断をしているのです。
ところが真相は違います。現物取引の口座にキャッシュや株券が入っていたことがあったのです。これでまたまた物理的にはとても手に持つことができない多額のキャッシュのありかがわかったわけです。ツェノンのアキレスと亀のパラドックスはここでも私に限定思考を打破させてくれました。
さて、バランスシートからの逆算によって15億7920万5128円のキャッシュが手持ちで存在するという回答が出てきたのです。これは絶対です。しかし、人間は体験しないことはなかなか信用できないものです。私の友人ユリ・ゲラーのスプーン曲げをいまだにインチキだと思っている人がいるのと同じです。彼の超能力は本物です。どんなにユリ・ゲラーのスプーン曲げを信用しない人であっても目の前で見たら全員信用します。百聞は一見にしかずです。
三、神の配剤
さて、58年4月末に私が大金をキャッシュで持っていたかどうかについて、それを万人に認めさせる方法がありました。これは、神の配剤であろうと感謝しました。真実は必ず明らかとなり、どのような場合でも形を変えてしかるべき現象となって表われてくるものであることを体感して思わず涙を流し歓喜しました。論理的なプロセスによる証明、そしてもう一点、今から説明する極めて単純な現実によって、58年4月末に約15億円のキャッシュを持っていたことを100%裏付けることができたのです。聞いてください。
表11-6の㉖欄の58年5月のところを見てください。何と15億740万3815円、この月は足りないのです。しかし、まぎれもなく約15億円の現金は現実に支払われているのです。約15億円の現金がなければ58年5月の現在においてグループの10社は存在していないのです。約15億円のキャッシュがあったればこそバランスシート上に数字が出ているのです。これだけ間違いなく実際に使っているのです。そして、この月に使い過ぎたキャッシュが約15億円あったのです。物理的にそれらは支払われているのです。それは、キャッシュの約15億円がなければ不可能なことなのです。
以上により、100%確実に、この時キャッシュが存在したことが立証できました。これをもし無視するなら、数学と物理学は法律には通用しないというに等しいのです。北海道と九州での殺人が同時刻に同人物によって行われたとして罰するのに等しいことです。法律の社会にも、数学と物理学は合理性あるいは客観性という言葉に名を変えて存在しているはずです。ともあれ、58年5月の約15億円の不足は、キャッシュの存在をわかりやすく証明してくれました。
次に、58年6月は1億3065万2723円余り、累計では2億245万4036円手持ちのキャッシュを持っているわけです。同様に58年7月は2億2871万6702円、7月だけでキャッシュが余り、累計で4億3117万738円手持ちしています。58年8月は、1億9675万7844円、8月だけでキャッシュが余り、6億2792万8582円手に持っているということです。58年9月は3億9180万769円足りなかったので、手持ちから出しています。残の2億3612万7813円は手に持っているわけです。58年10月は4億8321万455円余り、合計して7億1933万8268円手持ちで現金を持っているわけです。
何度も申しますが手持ち現金と表現している中には抜けている口座(銀行、証券会社)分が入っています。
58年11月は5億5332万3453円が不足しています。手持ち分から出したわけであり、手持ちの残りはこれで1億6601万4815円となります。58年12月も2億2632万9128円足りなくなっています。ところが手持ちには、先月末の残である1億6601万4815円しかないのです。中江から差額の6031万4313円出してもらったということです。
現実には、中江との公簿上の貸借のように「ハイ、6031万4313円」という形で出しているのではなく、株式の取引や抜けている銀行口座を経由して出しているわけです。当局が作成したバランスシートでいうなら不明科目ということです。
さてここで、グループとしての手持ち現金はいくらになるでしょうか。検察は、実物経済の観念が欠落していますので、あらゆる場合を単純に考えてこの時の手持ち現金をマイナス6031万4313円としているのです。全く、無知にして無能なる検察官達です。実物経済ではこれを0とするのです。バランスシートを見てください。マイナスという発想がないことがわかります。借方、貸方として、すべてプラスで表示されます。これは何のためか考えてみてください。両建で考えますので、マイナスの観念はないのです。実物経済では最も少ない量は0に極めて近い量なのです。すなわち、最小単位である1円です。もしくは0という何もないという古代インドで考え出された発想です。マイナスはあり得ないのです。
59年1月は13億1658万5310円も足りなかったわけです。10社の中にはキャッシュはありません。じゃ、どこから出たのか、10億円以上ものキャッシュを出せる能力のあるのは中江しかいません。いや能力だけじゃなく、現実に出すのは私しかあり得ません。ということは、中江は59年1月に13億1658万5310円ものキャッシュを出せる能力を持っていたということです。急に、59年1月に13億円儲かったということはあり得ませんので、本来なら59年1月より以前数ヶ月の間、13億円の返済能力があったとしたいところですが、もはや、この59年1月以前の返済能力の証明は十分いたしましたので、ここでも検察に譲ることといたします。ここでも、「疑わしきは検察に有利に」ということでやっていきます。事実と論理的思考とを背景にする私はもはや余裕十分であるということです。
59年2月以降についてはのちに述べることにします。表11-6現金修正と手持ち現金表の㉗の欄には、㉖欄での各月の手持ち現金の数字を合理的に思考することによって得た手持ち現金の各月末の残高を記載いたしました。
この㉗の数字を得るために、バランスシートをよりどころにして延々と論理的思考を繰り返し逆算出してきたわけです。ものすごい労力と時間とを必要としました。ここでわかっていただきたいことは、これだけの莫大な労力と時間をかけてまで逆算することができたのは、「真実は我にあり」、数字を追究していけば必ず真実を証明できるという自信なのです。それがなければこれだけの労力をかけて計算しません。この観点からも、「中江はウソをついていない」とわかっていただきたいのであります。
㉗欄で得た数字を結果表である表8のD欄の数字に加えて算出したのがE欄です。
四、いつの日か誰かが真実を
今は昭和62年5月22日であります。逮捕されてから703日、約2年。返済のために会長として復帰してから3年。マスコミのウソ、捜査当局のウソ、検察のウソ、あらゆるウソによって私は身も心もボロボロになりました。しかし、私は自分自身の身から出た錆びと反省し全てを甘んじて受けてきました。
いつか真相をわかってくれる人が出てくる。マスコミがだめなら警察、警察が駄目なら検事に期待しました。しかしその検事もダメでした。逆に、捏造を繰り返したくらいです。
私は、本最終意見陳述書での客観的証明により、真相をわかって下さるのは裁判長であると信じこの原稿をしたためました。私が行った論理的プロセスを岡田裁判長なら理解して下さるに違いないと信じたのです。弁護人達も同じ意見でした。私の数々の証明は絶対の真理です。しかし、その真理を理解する能力を持ってもらっていなければ、この1000ページにも及ぶ客観的証明は徒労に終るのです。理解さえしていただければ、私の証明はいかなる証拠、いかなる調書、いかなる証言にもまさる真実の証拠となるはずです。
私は、この証明が完成したことに歓喜にむせびながら、今、原稿を書いています。5月22日の深夜です。これで私は満足です。これで真相にもとづいて裁いていただけるはずです。真相のもとでの裁きであれば何年の刑であってもかまいません。もはや、全てのことをあきらめているのです。これだけマスコミに叩かれた私は、33歳にして全てに老いました。残るは真相の下での裁きだけが唯一の希望なのです。
五、真実の足跡
私は、㉗の数字をDに加えていくうちに涙で数字が曇っていきました。表8の結果表のD欄と表11-6の㉖と㉗の欄を比較してみてください。何か気付きませんか。ここにも真実の足跡がありました。「全ての現象は真実に収束する」のです。
赤字の月(A(実質要返戻額)-D(手持ち現金を加える前の現資産額)がマイナスの月、つまり返済能力が不足している月)について、手持ち現金(㉗の欄)を見てみますと、その赤字の額を補うのに十分なキャッシュがあるのです。
赤字の月は、58年2月、3月、4月、7月、8月、10月、11月ですが、それぞれ詳しく見ていくことにします。
年月 | 赤字の額 | 手持現金の額 |
---|---|---|
58年 2月 | △181,700,994円 | 1,211,344,571円 |
58年 3月 | △377,388,346 | 1,637,798,077 |
58年 4月 | △372,777,885 | 1,579,205,128 |
58年 7月 | △ 45,398,517 | 431,170,738 |
58年 8月 | △211,746,381 | 627,928,582 |
58年10月 | △462,714,405 | 719,338,268 |
58年11月 | △123,510,213 | 166,014,815 |
以上のように、赤字になっていて返済能力が不足しているように見える月でも、手持ち現金を考えにいれますとゆとりを持ってプラスに転じますので十二分に返済能力があったことが判明いたします。このように隠れた手持ちキャッシュが増えた月には返済能力がないように見えていたにすぎないのです。
逆に、58年1月、5月、6月、9月、12月、59年1月、2月のようにAーDの額がプラスの月、つまり返済能力があるようになっている月は、隠れたキャッシュが顕在化しているにすぎないのです。
図4を見てください。右の棒の返済すべき金を100とします。左の棒が返済能力です。検察が作成した表は左の棒の斜線部分だけを取り出していたのです。黒く塗りつぶした所を手で隠してみてください。手で隠した月が返済能力がないかのように見えていた月です。手を離してみてください。手を離した月が手持ちキャッシュが見える位置に移った月ということです。すなわち、手持ちキャッシュが株券になったり、会社の銀行口座へ入ったりした月ということです。何のことはない、存在するものを存在しないかのように検察がトリックを仕掛けていたにすぎないのです。
表8のE欄を見てください。これによって59年2月末までは100%返済能力があったことをもはや疑う人はありますまい。ゴリ押しのインチキ検事でさえもはや反論はできないはずです。これ以上の反論は彼ら自身を惨めにしていくことになるでしょう。
59年3月以降もE欄の数字をご覧いただくと分かりますように、顧客への要返戻額をゆとりをもって超過していますので、十分なる返済能力が存在していたことは明らかです。
***付論一、準備手続調書について
弁護人より準備手続きにおいては関係者の方々への発言を控えるように言われておりましたので、極力口出しをしませんでした。話を聞いていて担当当局も検事もこんなレベルまでしか思考が到達していないのかとガックリきました。
間違ったことを刑事が説明しているのに、弁護人も含め、聞いているみんながわかったような顔をして聞いているのには驚きました。唯一、裁判長のみがわからないことはわからないとはっきり言っておられたことに一縷の望みを抱きました。
弁護人も検事も恥をかきたくないからでしょうか、知ったふうな顔をしている会議でした。全く間違ったことが説明されているのに、わかった顔をして聞いている関係者が滑稽でもありました。
例えば株式売買損益の出し方についての刑事の説明は皆さん果たしてお分かりになったのでしょうか。少なくとも私はあの時はわかりませんでした。ただ、在庫株がマイナスとなる時、刑事の計算は成り立たなくなることは分かりました。私はAの銘柄もBもCもDも一緒に計算して、果たして正しい売買利益が出てくるのだろうか、と思考するのが精一杯でした。独房に帰ってゆっくり考えた結果、ようやく刑事の説明したことが間違っているのに気付いたくらいです。説明も決してわかりやすいものではありませんでした。果たして、あの場で何人の人がわかったでしょうか。いや、わかってはおかしいのです。わかったということは、何もわかっていないことなのです。なぜなら、あの算式は個別銘柄の損益を出すのには正しくとも、全体としての損益を出すのには正しくないからです。
関東電化なら関東電化の損益を出すのには正しいのですが、全銘柄の損益を一度に出しては間違いだということです。無い株を売ってそれを損益の計算に入れること自体ナンセンスであり、机上の空論なのです。マイナスの観念は実物経済ではあり得ないことなのです。マイナスの株はどこかから持ってきているわけであり、現実社会にはマイナスという存在はないのです。
あのような考えで損益が出てくるわけがありません。そもそも刑事自身に対して追及していくと、「あの損益は傾向をだすものである」と説明のニュアンスが変わり、最後には「必ずしも正しくない」とさえ言いましたが、そんなにエエカゲンなものであるのかということです。全ての経理資料ならびに調書はこのようにエエカゲンなものなのです。
しかし、それを聞いている人達が、わかったような顔をしてそのまま過ごしていった姿勢には驚くとともに、警察と検事と一部弁護人達の裁判というものに対する無責任さには失望いたしました。
裁判所側は、何卒わからないことをわからないままにして判決をしないようにお願い申し上げます。聞いていただければ、何でも正直に私はお答え申し上げます。自分に不利なこともちゃんとお話しします。自分に不利なことを隠したり、嘘を言ったりして刑が少々軽くなったところで、長い人生のことを考えたなら私は決して得することとは思っておりません。いや、それによってプライドや後ろめたさを引きずって生きていかねばならないマイナスの方が大きいと考えるくらいです。
それでは準備手続調書について私の意見を述べさせていただきます。
****一、第1回準備手続調書
(一の7)。 「丸金証券の伝票が、年代順に全部一綴り綴られているものを押収したので、9分9厘正確に把握できた」ということですが、伝票が年代順に一綴り綴られていたらどうして9分9厘把握できるといえるのか理解に苦しみます。それが全部であるとどうして言えるのでしょうか。私は資料を全て見ることが物理的に不可能な拘束状態にありますのではっきりとは言えませんが、扱い者の違う取引が抜けているとしか考えられません。同じ丸金証券でも、例えば当社の柱であった山口一夫の扱いとか、その他多数抜けていると思います。本論において口座が抜けていることはすでに客観的に証明したところです。
(一の8)。 「同時に他の投資ジャーナル関係の口座がないかどうかの照会をしている」ということですが、これは明らかにウソです。他の口座の照会などしていません。少なくとも、私の聞いた証券セールスにはそういった聞き方をしていません。セールスは当局から言われた口座について答えるだけです。
そもそも捜査当局は、捜査段階において口座はあれで全てだという固定観念をもってやっていたようです。いや、むしろあれ以上増えてほしくなかったのでしょう。だから調べればもっといっぱい出てきます。
他の項で漏れている口座の客観的証明はいたしました。
(一の9)につきましてはこの項の冒頭に述べ、また公判でも供述しましたので、あのようなやり方では全く正しくないことがわかってもらえていると思います。したがってここでは詳しく述べることはいたしません。
在庫がプラスである単一銘柄ならこのような計算のしかたでもよいのですが、現実には種々雑多な銘柄を売買していますので、この計算方法では全くの間違いとしかいえないのです。
「各月の現実の売買損益ではない」という刑事の言わんとしたことはよく理解できます。ただもう一つ考えが浅いのです。在庫がプラスのときは評価損益が出てくるのですが、在庫がマイナスの株があったり種々雑多の銘柄があったりしますので、この計算方法では正しい計算値は出てこないのです。
また、59年8月については、ガサ入れがあった8月24日ではなく前日の8月23日の大引値で計算すべきです。23日の評価だと関東電化株だけで約5億円も増えるのです。「傾向が出ている」との話ですが、傾向という言葉はいわば山と谷ということであり、じゃあこの計算で利益が5億円の月は実際は50億円なのかもしれないということです。1億円の月は10億円ということになります。傾向が出るだけのいい加減な損益を「一般管理費等集計表」に堂々と入れているわけですから、この一事をもってしても「一般管理費等集計表」というものがいかなる姿勢で作成されたかをわかってもらえると思います。
もう一点申し上げます。この株の損益計算がおよそ信じるに足るものでないことは、57年2月に持ち株が2億円相当分以下しかない時に、57年3月だけの1ヶ月間で2億円も損をしているといったおよそ考えられない間違った数値を見ても明らかです。
しかも、在庫評価がマイナス3億5882万5000円となっているのに対して、現実の在庫が約2億円とされており5億円以上の食い込みがあることになりますので、およそ信じるに足るものではないのです。
そもそも在庫にマイナスという観念はあり得ないのです。当局は、数字に負けて数字の遊びをしているだけのことです。「現実の損益を出す方法が他になかった。他にあれば教えてほしい」と開き直っていましたが、この発言こそ私に対して113日間取調べらしい取調べをせず、勝手に調書を作成した何よりの証拠です。彼らの頭では出し方がわからないだけのことです。私に聞いて下されば、正しい損益計算の仕方を説明していたのです。
57年3月末の在庫のマイナス3億5882万5000円について、検事は単なる思い付きで「ソニー株の持ち込みの売り分」などと答えていましたが、この回答を深く考えない人ならなるほどと思ってしまうかもしれません。しかし、これも思考が浅いのです。すなわち、検事がその場逃れの発言をしたということです。実に無責任な発言というべきです。ソニー株を売却したとしてもその分株を買うのです。しかも、それを親金融に担保に入れて金を借りてさらに株を買うのですから、逆に在庫はもっともっとプラスになるはずなのです。
各論の重要争点その1でも詳しく述べましたが、関東電化株の在庫は警視庁の資料によりますと、57年3月末でマイナス24万5000株となっています。銘柄在庫という欄です。これで金額にして約1億5000万円のマイナス在庫となります。ソニーが3万株のマイナス在庫となっていますので、これで1億円です。あと1億円もまだ在庫がマイナスとなっているのです。先ほど申し上げましたように、金融を使っていますので在庫株はもっとふくらむはずなのに、それが逆にマイナスになっているということは明らかにおかしいのです。
57年3月末の在庫のマイナス3億5882万5000円という数字からしてこの「自社取引株損益一覧表」というものが、いかに実態とかけ離れているかということがわかっていただけると思います。
ついでながら、この「自社取引株損益一覧表」に合うように捏造された私の供述調書が、いかにエエカゲンなものであるかがわかってもらえると思います。また、私は検事に対して「57年3月の損益を入れるのはおかしいでしょう。」と指摘したことがあるのですが、そうしたら検事は勝手に2億円分差し引いて調書を書き直しているのです。このようにして作成された検面調書がおよそ信用できないことは、誰であってもわかってもらえると思います。まさにここまできますと、検察の猿芝居は滑稽でもあります。この株取引に関する損益計算書は全く意味をなさないものであり、57年3月の損が2億円もあるようになっているところからみても、この損益計算のやり方は実際の損益から大きくかけ離れており、実際の利益よりずっと悪く計算されていると推測されます。
57年3月の売買金額や在庫はごく少ないものであり、その後の売買の金額とか在庫の金額を考えるなら、私に恐ろしく不利な計算がなされていると考えられます。「自社取引株損益一覧表」は私に不利になるように創られているのです。
以上のことを考えに入れますと、本間検事の作成した株式売買損益に関する私の供述調書の中で、私が「約20億円株で損をしている」と言ったことになっていることがいかにいい加減で信用に価しないかがはっきりとわかっていただけると思います。本間検事がこの間違った「自社取引株損益一覧表」の数値をみて勝手に供述調書を捏造したことが明らかになったのです。
当初、一覧表の上で約16億円のマイナスとなっていたために、「私が20億円くらい損をしていた」と供述したかのように調書を捏造し、次に57年3月分については2億円分を引くべきだと判断し勝手に調書を書き換えたわけです。そして、これまでの公判においてこの「自社取引株損益一覧表」の損益は、ナイナス14億3226万8251円からマイナス11億5987万8213円にまたしても訂正されたわけです。
ここまでくると、もう本間検事の猿芝居には大笑いです。もし取調べ当時、本間検事のところに株取引の損失が11億5987万3213円であるという報告がなされていたなら、彼はその報告に合わせておそらく、私が「約10億円株で損した」と供述したかのような調書を捏造していたことでしょう。まさに本間検事の調書は頭隠して尻隠さずというオソマツなもので、捏造したことが明らかにわかるインチキ調書であります。
以上により、彼が取り調べ時において私に宣言したように、いかに「しゃあしゃあとしたウソ」に基づくものであるかわかってもらえたことと思います。これは検事達が裁判所を愚弄していることであり、このようなことを許しておいては今後裁判所というものを誰も信用しなくなってしまいます。
私は本間検事を人間的には嫌いではありません。彼も立場上仕方がなかったであろうことは、私も1000人も社員を使ってきた人間として理解はできます。しかし、法廷を侮辱した罪は重く、虚偽の証言をした本間検事を偽証罪で告訴することを考えているくらいです。
次に(一の11)の「信用取引の手数料を損失として計上している」について申し上げますと、信用取引において反対売買をして決済した場合にはそれでよいのですが、分類(2)現引きとか分類(3)現渡しの時の手数料は現物売買の方で損金扱いとなっていますので、これら(2)と(3)の手数料分は信用取引の方では損金としてはいけないのです。ダブルことになるのです。
例えば、銘柄順の株式売買集計表を見てください。その114ページ、カルピスの欄です。証券会社丸金と書いて、その右横に(取)(2) とあります。これが現引き(受け株)のことでしょう。これで見ますと、カルピスの買代金の中に手数料が含まれており、コンピューターのプログラムの常識から言って、(2)の分類の時のみ買約定で計算するということはあり得ず、現引きと現渡しの手数料が二重に計算されているということになります。合計で1億558万6549円、二重に損金となってしまっており、訂正後の自社玉損益集計表に、またまた1億円分利益をプラスしなければならないわけです。すなわち、1億558万6549円をマイナス11億5987万8213円にプラスするわけです。すると、株の損益はマイナスの10億5429万1664円となります。
気付いた所の訂正だけで、すでにもう4億円近くの訂正になっておるわけです。私が自由の身となり、もっと緻密に計算し見直していくなら、もっともっと訂正することになるでしょう。先ほどの算式の違いや計算方法の違いも合わせて考えるなら、およそ信用するに足りない資料であります。
自社玉損益集計表の、これだけ数多くの誤りはそのまま他の資料と調書にも当てはまります。警察と検察の調書とか資料がいかにデタラメなものであるのかもうわかってもらえたことと思います。私に自由と電卓を与えていただけたなら、客観的な証明を更にしてみせます。時間と自由があれば証明できることであり、いずれ早晩、真実は明らかになるのです。私は、真実の下で裁かれるまでは一生涯でも闘うつもりです。全ての証拠資料を必ず大切に保管しておいてください。
自主玉損益集計表での4億円にも及ぶ間違い、また、在庫株の樽見ノート分の約50億円の間違い、さらにその樽見ノート分を含めての計算が合わない分を勝手に不明株として計上し、バランスシートのつじつまを適当に合わしたこの資料作成の姿勢、これらのことを考えますともはや検察の資料全てが信用できなくなってしまいます。このような検察の暴挙を裁判所は果たしてお許しになるつもりなのでしょうか。
次に(二)についてですが、これがもし客勘についてのことなら大間違いです。例えば、「東証信から東クレへの口座切り替えにおいて、東証信の口座に出金が記載され、東クレの口座に入金が記載される」とありますが、これは実態を知らない人間の言うことです。むろん、このようなケースもあったでしょうが、多くの場合、実態としては東クレへの入金は客勘に入金、入庫として記載されますが、東証信においては出金記帳はせず、バインダーからその客勘を抜き取り、そのまま倉庫へ保管してしまっていたのです。警視庁は強制捜査のときに、倉庫に保管されていた分も一緒に押収してきて、すでにボツになっている客の客勘も一緒にして計算したわけです。だから、あちこちに二重になって出てきているのです。これと同じことが、顧客の同一証券金融内における書き換えにおいても起こっています。すなわち、証券金融の人間が顧客の客勘を新しく書き換え、古い客勘をバインダーから外しそのまま倉庫へ保管した分を押収してきて、生きている客勘と一緒にして処理しているわけです。従って客勘から作成された資料は信用できません。かなり二重のものがあるということです。
(三-5)。 「中江からの事業主貸付については、中江個人にも他からの借り入れがあることが考えられ、その原資がはっきりしないので、相殺することはしていない」ということですが、私が「他から借り入れがあることが考えられる」とはいかなる根拠に基づくものなのでしょうか。町村家の関係を含めて借入金は全て表に出ています。まだ他にあるとでもいうのでしょうか。このような根拠のない考えに基づいて資料作りをしたら、全ての資料は成り立たなくなり、無意味なものになるということに気付かないのでしょうか。独断的な経理常識に外れたやり方です。もし、これと同じような考えにもとづいて同じ次元の処理方法をとるならば、極端に言って、原資がはっきりしない貸し借りは成り立たないということになり、たとえば顧客に対する債務についても、顧客への債権を当社が持っているかもしれないことを考えますと成り立たなくなります。まあこれは極端ですが、しかし、資料作りには一貫性というものが必要であり、ある時は検察に有利なのでAという考え方をし、ある時は検察に不利なのでAという考え方はしないといったようなことで作られた資料が果たして客観性を持っているといえるでしょうか。弁護側がそれを言うならまだしも、検察側がこういったご都合主義の資料を作成し、しかも裁判所にそれをしゃあしゃあと提出していることが不可解なのです。
(5-2)については、別項で申し述べましたように、刑事の思いつきによる全くのデタラメであります。私だけでなく裁判所をもバカにしているものとしか思えません。堂々と裁判長の前でウソをつくのですから、これは逮捕状請求するに際して不実記載をしたのと全く同じように彼らの体質なのです。調書、資料、起訴、論告これら一連のものが虚偽のものであることを、ウソを平気でつく彼らの体質から判断していただきたいと思います。
「直接担当した外務員等に確認するのがよいと思われるが、すでにいなくなっており、協力が得られないという事情もある」とのことですが、いったい何人の外務員がすでにいなくなったというのでしょうか。いなくなったのは、100人の内、2人か3人だけのことです。私がすぐに思い出した、東和証券の中江滋樹の口座はどうなのか。この東和証券の外務員はそのまま同じ所で、今もって働いております。刑事は、口から出任せのウソを言っているのです。彼らは、少しでも口座が増えないように意図的に捜査をしたわけです。このために取引口座が大量に抜けております。
57年4月と5月初めくらいまでは、私は100%顧客の注文を取りついでいました。それにもかかわらず、それらの口座がないのはおかしいのです。
取り調べの時、本間検事が「やはりお前の言うとおり、1~2ヶ月はちゃんとつないでいるなあ。ブツもあるなあ。他の連中もそう言っとるしなあ。最初から取りついでいないようにした調書にしたかったのに。」と言っていたことからも明らかなように、取り調べ時においては、客観的に1~2ヶ月つないでいることを証明する口座が存在したのです。それがここにきて一部ないというのであれば、口座を隠してしまったのでしょう。他の客観的証明によって口座が抜けていることは明白になっています。当局が捜査段階において口座が増えることを望まなかったために意図的に押収資料内の口座のみにしたのでしょう。
株の仕事をしていたために国税庁に狙われやすく、しかも株でもっとも儲けることのできる立場にいた私が他に口座を持っていたのは当然のことです。
これがもし、国税庁の査察であったなら、国税庁はこんなバカな捜査方法はとらず、口座をもっとシラミ潰しに調べたことでしょう。そんなことはわけのないことなのです。じゃあなぜ口座が他に出てこなかったのでしょうか。警視庁生活課にその気がなかったからです。そもそも中江滋樹という口座からして東和証券で抜けているのですからお粗末このうえないことです。
丸金証券では中江佐和子という口座も抜けております。中江滋樹や中江佐和子という名前、投資ジャーナル社長の佐藤典明とかいう名前は本当に口座を発見しようという気があれば、照会に出すのが当然の常識ではないでしょうか。それをあのように、裁判長の前でシャーシャーとウソをつくのですから、彼らの全ての言動は信じるに足りないのです。法を司る人間なのに誠に情けないことと憂慮いたします。
裁判所がこれまで警察や検察のウソの起訴と論告にだまされ続けてきたことが、彼らがウソをつくことを平気にさせそれを助長してきたのではないでしょうか。今回の裁判ではこれだけの客観的証拠があるのですから、ぜひ彼らのウソに対して厳しい姿勢を示して下さることをお願い申し上げます。
今回の投資ジャーナル事件には多くの刑事、検察官、検察事務官が携わりました。彼らは捜査と取調べにおいてインチキをしたことを自分自身で一番よく知っているのです。
この百数十人の司法員が新聞を見て今回の裁判の内容を知り、もしウソがまかり通るようなことになれば、再びウソのもとに起訴をやるようになるでしょう。それを止めることができるのは今ここにおられる3名の裁判官の方々しかいないのです。私の刑の重さとは一切関係なく、事実でないことは事実でないとしっかりと目を見開いて見破ってもらい、今回の事件に対する警察と検事の誤った姿勢に対して警鐘を打ち鳴らしていただきたいと願っています。
****二、第2回 準備手続調書について
続きまして、第2回準備手続調書について申し述べます。
(一の3)。 この経費処理がいかに常識外のものであるかわかっていただけたと思います。重要なことはこれだけでなく全ての資料と調書が一貫して事実とかけ離れており、被告人の不利なように改竄され捏造されているということです。このことをよくお考えになった上で全ての資料と調書をお読みいただきたいと思います。
(一の四)での銀座マルキビルについて。
銀座マルキビルは、賃借名義上は日本ビデオソフトですが、お金を出したのは、投資ジャーナルであり、投資ジャーナルへその資金は返ってくるものです。こういったものが多数あります。
千駄ヶ谷のマンション7~8千万円。赤坂の2億円のマンションもそうです(これらはその後値上がりしました)。日本ビデオソフト名義で買って保有していたのです。これらの権利は投資ジャーナルにありました。これらにかかったお金は全て投資ジャーナルが出していますが、日本ビデオソフトへの貸付金の中には含まれておりません。すなわち、約2億円分は顧客への返済可能資産に加えねばなりません。
(一の5)は、先ほども申しましたように鹿野刑事の口から出任せです。証券担保ということで現実に貸し付けていたわけですし、その他の貸し付けもあり、金利を実際にもらっていたのです。全ての資料解明がこのような無責任なる姿勢に貫かれています。このような、いい加減な起訴提起を日本の裁判所は認めるのでしょうか、信じられません。裁判というものはもっと公正で絶対的なものであると信じてきました。捜査当局のマジックに惑わされることなく客観的事実に基づく判決をお願いいたします。
この(一の5)について「チェックしていない」とのことですが、取引口座が抜けている可能性があることをチェックしていないのです。無責任な姿勢がここにも表われております。
****三、第3回 準備手続調書について
三の着金表と日計表の内容は一致するものではありません。
着金表はあくまでも営業成績の表であり、実際の入金を必ずしも表わしてはいないのです。例えば、「株の良いニュースをつかんできた」とかいう時、それをグリーンの入金として、仮名をつけて成績評価してやる場合があるわけです。つまり、ニュースの価値がグリーンの入金1000万円分に相当すると私が判断すれば、たとえばAという名前で、1000万円入金したことにしてやるわけです。すなわち、実際の入金より着金表の数字は大きく膨らんでいるということです。
五-一については第2回準備手続の時鹿野刑事がデタラメなことを言っていたということです。もし私が気付かなければこの間違いのまま判決の資料とされていたことでしょう。信用取引におけるケタ違いといい、全て私に不利なように不利なように間違いがされているのです。これらの事実を目のあたりにしますと、もっと他にも改竄がなされていることが推測されます。
自社玉損益集計表において、ケタ違いだけで2億円もの損が多くなっているのです。最初の計算値の11億円の2割であります。樽見ノート分を加えるなら、実に3割近い損益の狂いがこれだけでも出てきています。加えるに、8月24日にガサ入れがあったのですから、前日の8月23日の大引けで計算し直すなら、8月のマイナスはプラスに転じるはずです。ということは、検察が当初出してきた14億3226万8251円という損金が、実に半分になってしまうことを意味します。(この他にも信用取引の経費の二重計上があります)検察の資料というものがいかに改竄されたいい加減なシロモノであるか、この損益表の間違いを見ただけでも十分証明できると思います。
私が電卓を手に持ち、全ての資料と証拠を一つ一つチェックしていくならもっともっと間違いは出てくるでしょう。
ところが、私は身柄を拘束されたままであり、電卓も使用させてもらえないわけです(その後使用できるようになりました。ありがとうございました)。これではあまりに片手落ちではないでしょうか。もっともっと資料を分析して見直していくならば、私の証言を裏付ける客観的事実証明が更に多く出てくるはずです(多数出てきました)。そのような作業は弁護人にしてもらえばよいとお思いかもしれませんが、専門的なことですし、その上に数字の知識を多分に要求されることですので、弁護人には手に余るものです。私が事実を発見しそれを伝えてはじめて「ナルホド」とわかるのです。これについては、検事も裁判長も同じであると思います。
私は信用取引の資料を見て、「この売買金額でこんな損になるのはおかしい」と看破いたしました。もし、私が看破していなければ間違ったままの資料にもとづいて判決がなされていたわけです。ちょっと見ただけで、今日説明していますことを含めて、こんなにも多くの間違いとインチキと改竄を見つけ出したわけです。もっと資料を読み電卓を使い詳しく調べていけば、必ずや今以上に完璧に私の証言を裏付けることができるはずです。もっともっと反証ができるのです。身を縛られたままでは十分な反証はできません。
私の証言や主張が真実として認められ、その上で判決していただけるのならそれでいいのです。しかし、もし言葉だけでは信じてもらえなかったとするなら、私は反証の前提条件を与えられずに判決を受けたこととなります。何度も申し上げていますように、私は罪の有無とか刑の軽重を問うているのではないのです。真実の下で裁いていただきたいのです。
裁判長へ提出されている調書、証拠、起訴、論告にはウソがあると言っているのです。今日の最終意見陳述において「証券金融を始める前に大量の株があったこと」や「59年8月まで返済能力があったこと」を合理的に証明しましたが、このように資料を見ていけばいくらでも証明することができるのです。もし、判決において私の主張することで認められなかったことについて服役し出所後自由の身になってから、電卓と資料により客観的に証明できたとすれば、私はどんなにか後悔しなければならないことでしょうか。お察しください。
日本の法律には十分なる反証活動を保証し保護してくれる条項はないのでしょうか。経済事件であり、しかも私がその90%を知っている事件です。私を縛りつけたまま、電卓も与えずに資料も十分見せずに裁判を終えようというのは、余りにも片手落ちな裁判ではないでしょうか。私は、単に自由になりたいのではなかったのです。私の証言を裏付ける客観的証拠を電卓を使って完成させたかったのです。私は、一生かかっても私の証言の正しさを必ずや客観的科学的に証明してみせます。検察の虚偽の起訴、論告を暴いてみせます。経済事件において、被告人に電卓も与えず反証のチャンスを奪うことが、日本の裁判では許されるのでしょうか。結果として被害者は出しましたが、私はまともな人間のつもりです。どう考えても、経済事件の裁判で保釈せず電卓も使わせずに判決してしまおうとしているこの裁判はおかしいと思わざるを得ません。
とにかく、十分なる反証はできませんでした。保釈され自由を与えられなくては弁護人への説明も無理だということです。これだけ複雑な事件なのです。
おそらく、現段階において裁判官も真相をいまだわかっておられないと思います。迅速なる裁判に趣旨はわかりますが、かといって、公正で正確な裁判ということがなおざりにされたのでは困るのです。
この事件は、わずか50回位の公判と10回位の準備手続で理解できるものとは思われません。願わくば、私を自由にして公判の再開をお願いしたいものです。ただ、私が証券金融をやり始める時点で金があったかなかったかとか、59年8月24日の時点で返済能力があったかなかったかは、法律のプロから見てこの事件の判決に関係ないのでしたら私の法律の知識不足によるものです。そうであれば別に自由にならなくてもかまいませんし、電卓は必要なかったということです。それを知らずに発言したとすればここで謝るしかありません。
次に、五-3について申し上げます。「57年3月末の誤差の中に、ソニー株の売りの分が入っている」と準備手続きにおいて丹波検事は言いました。この考えが誤りであることは公判の供述でも述べました。ソニー株を売って違う銘柄の株を買うわけですので、このようなことは言えないのです。彼らの言うようにソニー株を売って関東電化株を買って大損をしたというのもおかしいことになります。
百歩譲って、ソニーの株券は売りっぱなしにして、売却によって入ってきたキャッシュは新たな株の買い付けに使わなかったとします。そういたしますと59年8月24日の計算においては、町村家へ現実に返済したソニー株の3億円分については保有株に加えられることになり、かえって現実の在庫と計算上の在庫の矛盾は広がるわけであります。五-3において約9億4000万円の隔たりを埋める理由とした「57年3月時点での3億5000万円のマイナス」という理由は、相互に矛盾するのです。
すなわち、57年3月時点の誤差の原因の中にソニー株の売却分が含まれているとするならば、すでにその時点でソニー株の売却分の誤差はおり込まれていることになります。とすると、57年4月以降の町村家へのソニー分の返済金約3億円は新たに発生したと考えなければならず、この3億円分については誤差9億4000万円にプラスしなければならないことになるのです。こんなことすら検察はわかっていないのです。実に頭が悪いとしかいいようがありません。あるいは裁判所もわからないだろうと思ってバカにしているとしか思えません。矛盾することを場当たり的に言って、自己矛盾に陥っているのです。この起訴における調書、資料の全てにおいて、このような検察の自己矛盾が出てきます。何故でしょうか。答えは明らかです。頭の中で想像してつくり上げた資料だからであり、それに基づいて捏造された調書だからです。これ以外には考えられません。
物理的におかしいことが、当時あたかもそうであったかのように一致した調書になっているのですから、考えられるのは捏造しかないのです。知識人にこの調書と資料を見せて物理的におかしいことを示すなら、全ての知識人が検察の調書の捏造という結論を導き出すでしょう。同時に本間検事の証言が明らかに偽証であることも客観的に証明できます。検察はインチキの資料、調書を法廷に出したとしても裁判所は見抜けないと考え、裁判所を明らかにバカにしているのであります。
まさか、証拠物からの逆算によって、検察の捏造と偽証がこれほど客観的にあばかれるとは想像だにしていなかったことでしょう。それは、検察が企業会計の計数的思考に関して無知であり無能だからです。無知であり無能なるが故に、この(五の3)においても彼らは場当たり的に弁解し、自己矛盾に陥っているわけです。五の3は小さなことですが、一事が万事であるということです。
今後ともますます複雑な経済循環となっていく中にあってその取り締まりの中枢となるべき警視庁生活課と地検特捜の知的水準の低さと株式や金融に対する知識のなさには、ガックリし失望するものであります。国民の血税のムダ使いであると言われても仕方のないほどの知能水準の低さであります。
以上、準備手続きで私が申し上げようとしたのですが、当時は弁護人達もまだよく理解できていなかったからでしょうか、発言を差し控えるように言われていましたので今日まで発言するチャンスのないままきたわけです。
このままでは公判が終わってしまい発言するチャンスがなくなりますので、準備手続での捜査当局側の矛盾点とウソを論理的に指摘し真相を明らかにしました。
***付論二、経理解明調査報告書171の考察-昭和55年4月から昭和57年3月までの経理状況の解明について
この報告書は昭和55年3月末に累積損金1億5013万9782円があり、昭和57年
3月末には6億8142万6168円の累積欠損金があったと結論づけています。これは独断と偏見と経理に対する無知による結論です。内容が十分に分析しきれていないもので、全く実態を表わしておりません。
そもそも税務経理と実態経理とは必ずしも一致するものでないことは実社会の経理を知る者なら常識であり、この経理解明は実社会の現実を無視しております。今回公判における経理とは実態経理であり、税務申告の内容の是非を問うているものではないはずです。57年3月末現在の私を含めた投資ジャーナルグループの資金繰り状態、資産状態が実際のところどうであったかが問題となっているはずです。
まず、55年3月末に1億5013万9782円の累積損があったと296ページにあります。この報告書によりますと、55年4月から57年3月までは前受収益を収入と修正しておりますが、55年3月末までの損益については修正されている様子が見受けられません。会社はこの55年3月末までも前受収益処理をしていたのです。
すなわち、55年3月末までの前受収益分をA円とするなら、55年3月末の実際の累積損益は、マイナス1億5013万9782円プラスA円となるわけです。ついでながら、前受収益という形態をなぜとったかということを考えていただきたいのです。
前受収益とは、今期入ってきた顧問料収入の一部を来期に延ばす勘定のことです。例えば、55年2月末に120万円の顧問料をもらったとしますと、55年3月末の決算書には1ヶ月分しか収入とせず、収入10万円前受金110万円と計算されるわけです。あるいは、54年10月に1年契約で会員が入ってくれば、54年10月~翌55年9月までの契約となります。その契約金が120万円としますと、120万円を12ヶ月で割り毎月10万円を顧問料としてもらったとするわけです。とすると、55年3月末で決算をしますと、54年10月、11月、12月、55年1月、2月、3月の6ヶ月分しかこの期の収入とはしないのです。今の例なら、60万円のみを収入として55年3月末の決算に計上し、残りの6か月分の60万円は預り金のような形、すなわち前受金として計上し、収入から除外するのです。
なぜ、このような経理処理をしたのでしょうか。それはむろん節税のためです。節税しなければならないほど儲かっていたのです。実社会を知る人なら、この意味を理解いただけると思います。儲かりすぎて頭を悩ましていたからこそ、今期の収入金を来期に繰り延べるという決算処理をしていたのであります。捜査当局の言うように、もし実態も累積赤字で困っていたのならこんな決算処理をするわけがありません。上場企業でもないツーバイツーグループが、しかも私がオーナーであるツーバイツーグループが、誰に遠慮をしてわざわざ税金を多く払わねばならないようなことをするでしょうか。黒字で困っていたからこそ、利益の圧縮、繰り延べをするためにこういった前受金処理という会計処理をしていたのであります。黒字で困っていたからこそ、前受金処理によって利益を繰り延べていたのです。こういった利益を来期に延ばしたり圧縮することを逆粉飾といいます。検事も刑事も、全くわからないまま粉飾という言葉を使っていますが、彼らの言う粉飾という言葉を使うなら、この会計処理は逆粉飾とでも言うべきものなのです。逆粉飾をしている会社が、資金繰りに困っていたなど聞いたこともありませんし、ありえないのであります。刑事、検事は実態経理というものに無知がなるが故にこういう矛盾をおかして、平気でいるわけです。グループは55年4月以降もこの決算処理方法を続けていますので、ずっと黒字体質であったことがうかがえます。とにかく、55年3月末までも前受金処理によって利益を繰り延べる決算処理をしていたわけでありまして、累積損1億5013万9782円というのは対税務上の数字であり、実質上は何億円という金が手許にあったわけでございます。55年3月末までの前受金は全て収入として修正すべきであります。55年4月以前は修正されていないのです。
次に、株の売買益も入っていません。55年4月以降において(299ページ)町村ファミリーからの借り入れが、ソニー8万5165株で時価3億6834万5595円相当とありますが、これは私が公判でも何度も述べ、また鈴本真人も証言していましたように、町村貞子さん分の3万8515株のソニー株の全てが私へ渡っているというわけではないのです。百歩譲って、私がこれら3億6834万5595円相当の株券を預っていたとしても、私は、47年3月末現在で「3億6834万5595円マイナス関東電化株での売買損」分のソニー株は手持ちで保有しているのです。別項にて、客観的証拠により関東電化株の損失が1億1千万円と判明しているわけであり、損失を1億1千万円と計算しますと差し引き約2億5千万円分の株券は手持ちしていないとおかしいわけです。2億5千万円もの金を私がどこへ使ってしまったというのでしょうか。検察側はこれを関東電化株の損でなくしてしまったという図式で調書を捏造したわけですが、その図式はもはや客観的証拠によりもろくも崩れさっているのです。関東電化株では約1億1千万円しか損をしていないのです。むろん、他の銘柄の利益分を加えるなら、1億1千万円の損はもっと縮小するのです。関東電化の相場で大損をして持っていたソニー株の全てをなくしてしまったという虚構が客観的証拠物の計算からあばかれた今、もはや彼らは調書の捏造を認めるしかないのです。約2億5千万円ものお金を何の形跡も残さずに私が使ってしまったというのでしょうか。こんな不合理なことはありえません。
税務対策を考えるなら、入金は漏れることはあっても出金は漏れないものなのです。税金を払うのを少しでも少なくするために、領収書をヤミで売っているのを買ってきたりするのが中小企業というものです。私はそこまではしていませんでしたが、税金を少なくするために、経費で落ちるものは全て落としました。すなわち、経費が漏れることはありえないことなのです。とするなら、約2億5千万円はどうなったというのでしょうか。株で損した跡も費消した跡もないのです。簡単です。私が株券の形で手持ちで所有していたのです。他の項目で証明された57年3月末において最低でも10億円近くの株を手持ちしていたという客観的事実と照らし合わせるなら、この中の約2億5千万円分が町村ファミリー分ということになり、全てが合理的に一致するのです。捜査当局の経理解明には、意図的にかどうか知りませんが、中江滋樹、もしくは、グループにおいての手持ち現金、手持ち株という考えが全く抜けているのです。どこの世界に、手持ち現金、手持ち株というものが1円もない会社があるでしょうか。それにもかかわらず、彼らは一切この現実に目をつぶり、経理解明を行ったわけです。
300ページにおきましては、貸金業者より株券を担保にお金を借りたときの利息が抜けているとあります。簿外にしていたのです。これを、粉飾決算の理由の一つとしているようですが、これもまた知能水準の低い実際の経理を全く知らない人物が発想した邪推としかいえません。この金融業者(親店のことですが)からの借入金やその利息を、なぜ簿外にしたかを考えてもらいたいわけです。利息は支出なので、粉飾をして決算数字をよく見せるために決算に組み込まなかったといわんばかりの報告書ですが、ルーバイツーは上場企業ではありませんので株主に決算を見せるために、税金を多く払ってまで粉飾する必要はないのです。また私自身がオーナーですので大赤字であっても誰に叱られることもないのです。私は、税金が少なくてすむのですから、本来なら喜んで経費で落ちる借入金利息を決算に組み込みます。しかし、組み込んでいないのです。なぜか。これがわかる人とわからない人の違いは、実態経済、実態会計を知っているかいないかの違いなのです。この回答がすぐ出てこない人は、自分の考えや見方がどこか間違っているのだと思い、謙虚に私の説明に耳を傾けるとともに、真相をつかんでいってもらいたいと思います。
金利を決算に組み入れなかった理由は、それ以上に株式売買があったからです。これが合理的、論理的な答えです。この報告書にあるように、赤字を少しでも少なく見せようとして、粉飾をして借入金利息を簿外にしたのではありません。借入金利息を組み込むと、大量の株式売買益も必然的に表面化してしまいますので、組み込まなかったのです。すなわち、金利以上に儲けていたということです。よくもまあ、こんな無知なる報告書が書けたものだと思います。
確かに借入金利息は簿外になっていたのですから、資金繰りの実態を調べている今、これらの借入金利息を組み込むことは当然でしょう。しかし、じゃあ株式売買益も組み込むべきです。少なくとも金利分は利益があったということで、収益にプラスすべきです。
私は当局が何故、57年4月以降は売買損益を修正決算に組み込みながらそれ以前は組み込んでいないのかわかりませんでしたが、これではっきりとわかりました。儲かっていたからでしょう。とにかく、税務対策上、前受金処理をして収入を繰り延べているほど儲かっている会社が、何ではっきりと国税から経費と認めてもらえる金利をわざわざ簿外としているかといえば、その金利発生の元である株式売買で大きく儲けていたからに他なりません。しかるに、無能なるこの報告書の作成者は、この現実を差し置いて粉飾としているわけです。全く話にならないとはこのことです。
今回の事件の捜査当局の姿勢、知能水準は全てこの程度のものです。そして、このような矛盾が今までの公判で当たり前のように通ってきているのには驚くしかありません。私はこのような彼らの不合理な主張に対して公判で争っているにすぎないのです。刑を争っているのではないのです。
299ページで「簿外借り入れを、4億8745万5447円していたので、これに見合う資産が認められず、全て費消されていると認められることから、損益計算書の使途先不明金と計上修正した」となっています。こんなバカなことがまさか東京地裁で通るとは考えられませんが、それ以前に平気な顔でこんな報告書を提出しそれに基づいて起訴、論告をした検事達の知的水準を疑います。これら4億8745万5447円の簿外借り入れは株式購入に充てられたものでありその株式は中江の手持ちになっているのです。あるいは証券金融に入ることもあります。これ一つとっても、証券金融というもののメカニズムについて無知であることがわかります。
親金融より借り入れた金は、証券会社で買い付けた株の受け渡しに使われているのです。そして、それによって手に入れた株を親金融へ入れているのであります。彼らはこのメカニズムをわかっていない。だからこのJBS、合同信用より借り入れた金を、私がどっかへ持っていって使ってしまったかのように処理をしているのです。もはやこれはお笑いであり、滑稽でさえあります。私が自由を得たとき、ソニー株を預った56年4月末までの合併決算を自分でやることができれば、彼らの主張のインチキさを更に暴くことができるでしょう。簿外の借り入れがあった、だからその簿外の借り入れ分は費消してしまい、支出と考えることがはたして合理的といえるでしょうか。例えば1000万円の借金をした人は1000万円みんな費消してしまうという考えが合理的でしょうか。常識的には資産としてもっていると考えるべきです。そのとおり私は手許に大量の株券を持っていたのです。しかもこれは客観的にすでに証明されているのです。何のために財務諸表の中には、損益計算書とバランスシートというものがあるのでしょうか。資産出金ということに考えが及ばないのは会計を知らない証拠です。
55年4月から57年3月までの費用超過分の5億3128万6306円の内、4億8745万5447円分の支出は経費として扱ってはおかしく、中江の手持ち株に変わったというのが正しい扱いです。すなわち費用の部に加えてはおかしいのです。JBS、合同信用で借りた金によって、中江は手持ち株を増やしたと考えていただければわかってもらえるでしょう。
私が57年3月に10億円近くの株を手持ちにしていたことはすでに証明されていますので、客観的事実とも合致いたします。すなわち4億8745万5447円を費消したとしたこのやり方は不合理極まりないということです。
このように考えていきますと、55年3月末までは最低でもプラスマイナス0となり、さらに55年4月より57年3月末までの2年間は、5億3128万6306円の費用超過とした不合理極まりない無能なる報告書の数字は大幅に是正されることになります。すなわち、費用の部は11億7248万6840円となり、収益の部は11億8033万5685円となるのです。
捜査当局の数字がこんなに実態とかけ離れたままなぜ起訴されたのでしょうか。簡単です。事件の9割を握る私からロクに説明を受けず、また受けても検察に不利になることは一切無視して調書、資料を勝手に作ったからです。私に対する取り調べをキチッとしていれば、これほどまでブザマな姿を検察は露呈することはなかったでしょう。
以上により、私が57年3月末資金繰りに困ってはいなかったことが証明されたわけです。ここでも客観的に私が57年3月末資金に困るわけがないことが証明されたのです。町村愛子調書を含め、全ての調書が捏造されたものであることが裁判長には十二分におわかりいただけたと思います。
304ページの「大幅な粉飾決算」との結論が誤りであることはもはや明らかです。よくもこれだけインチキな報告書を書けたものです。無知なのかそれとも裁判所をバカにしているのか、私はどちらともわかりません。あるいはこの報告書では「10倍融資の資金というものが自己資金により賄われる」とされていますが、誤っています。このような錯誤に陥ったまま捜査をしていたのです。
今回の事件の捜査、取調べ、起訴、論告というものが、経済、経理、株、金融、経営者の心というものについて、全く無知のまま進められてきたことがわかります。日本国民の一人として、警視庁の生活課と地検特捜の一部検事、公判部の一部検事の無能さに情けなくなりました。頭の中で想像して作り上げたストーリーに従って捏造したから、こんなブザマなことになったのです。彼らが真相のもとに起訴していたとすれば、こんなにも客観的証拠と相違することはなかったでしょう。
171の資料6を見てください。
差入(保有)有価証券の相手科目を1億6062万2000円の不明勘定にしております。これこそまさに金融を知らない証拠です。この不明勘定こそ、まさに(株)JBSからの借入金によるキャッシュなわけです。その(株)JBSからのキャッシュをさらに使途不明金としているのですから話になりません。二重に間違いを犯しているわけです。こんなムチャクチャな経理解明はありません。これはこじつけの経理解明です。あるいは作成担当者の知能レベルが低いのです。
次のページの保証金も全て不明にしてごまかしています。この不明勘定こそ、借入金からのキャッシュとすれば全て解けていくわけです。そして、残りが中江の手持ち株となって資産として残っているのです。
55年4月以降57年3月までの費用の部
-当局の間違った数字
–16億5994万2287円
-正しい数字
–11億7248万6840円
-算出方法
–16億5994万2287円マイナス4億8745万5447円(借入金分)
(算出理由)
57年3月末に手持ち株が約10億円存在したことが計数的に証明された今、借り入れ金を費消されたものとして費用とするのは誤りである。4億8745万5447円は資産として残っていたこととする。
同じく収益の部
-当局の間違った数字
–11億2865万5901円
-正しい数字
–11億8033万5685円
-算出方法
–11億2865万5901円プラス5167万9784円(金利分)
(算出理由)
金利分以上の株式売買損益があったからこそ税務申告していないのである。もし損をしていたら税務対策上簿外にせず公表帳簿に載せていたはずである。売り上げを前受収益としてまで税務対策をしていた会社である。
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