査察Gメンを犯罪人として告発!!-⑲
- 2016.06.21
- 山根治blog
判例7.(承前)
「納付すべき金額」が、「納付すべき税額の確定した国税」であるならば、「納付すべき金額(税額)」とは、直接国税については、
1.申告書を提出している場合には、
1)「申告書の提出により納付すべきものとしてこれに記載した税額に相当する国税」(国税通則法第35条第1項、第2項第1号)。
2)「更正通知書に記載された(更正により納付すべき税額)に掲げる金額」(国税通則法第35条第2項第2号)。
2.申告書を提出していない場合には、
1)「決定通知書に記載された納付すべき税額」(国税通則法第35条第2項第2号)。
のことであり、その納期限は、
1.1)の場合は、法定納期限(法人税の場合は各事業年度終了の日から2ヶ月以内)。
1.2)の場合は、更正通知書が発せられた日の翌日から起算して一月を経過する日。
2.1)の場合は、決定通知書が発せられた日の翌日から起算して一月を経過する日。
である。
ここで、判例7.の第一審判決を改めて見てみよう。
注目すべきは、第一審判決が法人税法第四十八条(逋脱犯)の「申告をなすべき法人税を免れ」という文言を取り上げて勝手な解釈をしていることだ。
実は、この法人税の逋脱犯規定自体が、極めていいかげんなシロモノだ。以下の改正経緯を見れば一目瞭然である。
****※法人税法逋脱(脱税)犯規定の改正経緯(昭和22年3月31日~昭和40年3月31日制定法令)
*****(1)昭和22年3月31日(全部改正)
詐偽その他不正の行為により法人税を免れた場合においては、法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者でその違反行為をなした者は、これを一年以下の懲役またはその免れた税金の三倍以下に相当する罰金若しくは科料することができる。
前項の罪を犯した者には、情状に因り、懲役及び罰金を併科することができる。
第一項の場合においては、政府は、直ちに、その課税標準を決定し、その税金を徴収する。
*****(2)昭和25年3月31日
第四十八条 詐偽その他不正の行為により、第十八条第一項、第二十一条第一項若しくは第二十二条第一項の規定により申告をなすべき法人税を免れ又は第二十六条の三第四項の規定による金額の還付を受けた場合においては、法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者でその違反行為をなした者は、これを三年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
前項の免れた法人税額又は還付を受けた金額が五百万円をこえるときは、情状に因り、同行の罰金は、五百万をこえその免れた法人税額または還付を受けた金額に相当する金額以下となすことができる。
第一項の場合においては、政府は、直ちに、その免れた法人税額又は還付を受けた金額(第二十六条の三第六項の規定により加算された金額のうち当該金額に対応する部分の金額を含む。)に相当する税額の法人税を徴収する。
*****(3)昭和26年11月30日(一部改正)
*****(4)昭和37年4月2日
*****(5)昭和40年3月31日(全部改正)
偽りその他不正の行為により、第七十四条第一項第二号(確定申告に係る法人税額)(第百四十五条第一項(外国法人に対する準用)において準用する場合を含む。)、第八十九条第二号(退職年金積立金確定申告に係る法人税額)、第百四条第一項第二号(清算確定申告に係る法人税額)若しくは第百十六条第一項第二号(合併確定申告に係る法人税額)に規定する法人税の額につき法人税を免れ、又は第八十一条第六項(欠損金の繰戻しによる還付)(第百四十五条第一項において準用する場合を含む。)の規定による法人税の還付を受けた場合には、法人の代表者(人格のない社団等の管理人を含む。以下この編において同じ。)、代理人、使用人その他の従業者でその違反行為をしたものは、三年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前項の免れた法人税の額または同項の還付を受けた法人税の額が五百万円をこえるときは、情状により、同項の罰金は、五百万円をこえその免れた法人税の額又は還付を受けた法人税の額に相当する金額以下とすることができる。(下線は筆者)
上記の逋脱犯の改正経緯を見ていると、法人税が従来の賦課課税方式から申告納税法制に切り替った際に、国税当局がドタバタと右往左往している様子が目に浮かぶようである。
(1)まず、法人税法に申告納税制度が取り入れられたのは、昭和22年4月1日。それに対応して法人税の逋脱犯規定が全部改正されている。上記の(1)である。
ところが、この罰則規定はナント、従来の賦課課税制度をそのまま取り入れているものであった。つまり、罰則規定は、
と規定され、政府が直ちに課税標準(!!)を決定し、免れた法人税を徴収することができるようにされていたのである。当然のことながら、申告納税制度の趣旨に明らかに反する規定である。
(2)次に国税当局が行った小細工は、第48条の第3項、つまり「第1項の場合においては、政府は、直ちに、その免れた法人税額を徴収する」(下線は筆者)に「その免れた」という文言を加えると同時に、第48条の第3項を
として、「第十八条等の規定により申告をなすべき」という文言をさりげなく加えている。
察するに、それまでの第48条第3項の、
とする規定から、賦課課税方式であることがあまりにも明白な「その課税標準を決定し」という文言だけをコッソリと削除し、事実上の賦課課税方式を残し、それをもっともらしく理屈づけするために、第48条第1項で、
という、曖昧な文言を加えたものであろう。
(3)ところが、従来いいかげんであった、納税義務、納税すべき税額等について厳密に規定された国税通則法が新たに制定されることになった。昭和37年4月1日のことである。
この国税通則法の制定に伴って、法人税法48条第3項、つまり、
がこれまたコッソリと削除されている。昭和37年4月2日、法律第67号である。これまであれこれと屁理屈をこねまわして、強権的な賦課課税方式を法人税においても押し通してきた国税当局もさすがに国税通則法が制定された以上ゴリ押しすることができなくなったのであろう。
(4)しかし、上記(3)の改正においても、いまだ曖昧な文言が残っていた。第48条第1項の
である。
この「申告をなすべき」という文言がコッソリと削除されたのは、国税通則法の制定から遅れること3年が経過した昭和40年3月31日のことであった。改正経緯の(5)の昭和40年3月31日(全部改正)がそれである。
判例7.の事例は、昭和31年3月期を昭和32年3月期にかかる法人税法違反事件であるから、まさに上記(2)(改正経緯の(2))のときの罰則規定を適用したものであった。
―― ―― ―― ―― ――
ここで一句。
(エセ教育者としての福沢諭吉。お金は幻。幻の象徴としての一万円札。好一対。)
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