査察Gメンを犯罪人として告発!!-⑩
- 2016.04.19
- 山根治blog
判例5.
法人税法違反事件と会社臨時特別税法違反事件についての最高裁の決定である。原審は大阪高裁(昭和60年11月5日判決)。この判例5.には、全く異ったケースについて、同一の判断が下されている誤りがある。確定申告書を提出した場合と提出しなかった(不申告)場合とを同一のものとして捉えているからだ。
まず、法人税法違反事件について。これは、確定申告書を税務署長に提出しているケースであり、虚偽申告書提出犯にかかる判例だ。
判例5.が引用するのは、次の二つの最高裁判例だ。
+最判昭和48年3月20日、刑集27巻2号138頁。―判例4.
+最判昭和49年12月13日、裁判集刑事194号341頁。
1.はこれまで詳しく取り上げてきた判例4.(「ことさら判決」)であり、先例価値のないデタラメな判例である。
2.は、
と判示し、2つの判例を引用している。
そこで引用されているのは、判例1.(基本判例)と判例4.(“ことさら判決”)であるが、これらはすでに詳述したように先例価値のない判例であった。
次に、会社臨時特別税法違反事件について。これは、確定申告書を税務署長に提出していない(不申告)ケースであり、所得秘匿工作を伴う不申告の行為を逋脱犯の実行行為と認定している判例である。
判例5.は、
と判示して、
と認定したものである。
これはまさに、判例1.で指摘した(「査察Gメンを犯罪人として告発!!-⑥」参照)、「不申告犯」、即ち、「申告書不提出犯」のことだ。
判例1.は、物品税の申告書の不提出についてのものであったが、この判例5.は、会社臨時特別税の確定申告書を税務署長に提出しなかったことを、逋脱犯の実行行為と認定している。
判例1.と判例5.とは一見すると同じように見えるが、似て非なるものだ。全く異なるものであると言っていい。何故か?
物品税(判例1.)は、賦課課税方式によって税額の確定がなされるようになっていたことに加え、「税を免れた者」だけでなく、「税を免れようとした者」までが罰則の中に盛り込まれており、判例1.で示されたような法解釈が成り立つ余地があったのであるが、会社臨時特別税法(判例5.)は、申告納税方式によって税額が確定するようになっていたことに加え、罰則の適用が法人税と同様、「税を免れた者」に限定されており、判例5.で示されたような法解釈の余地は全くないからだ。判例5.の中の会社臨時特別税法にかかる決定については、実体法(会社臨時特別税法と国税通則法)の規定に明らかに反している誤った決定(最高裁)であり、原審の判決は誤った判決である。
尚、会社臨時特別税法(昭和49年3月30日法律第11号)の罰則(同法第22条)は次の通りである。
『偽りその他不正の行為により、第十一条第一項第二号に規定する会社臨時特別税の額につき会社臨時特別税を免れた場合には、会社の代表者、代理人、使用人その他の従事者でその違反行為をした者は、三年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。』
以上のように、法人税法違反事件にかかる判例5.は、判例1.と判例4.とを追認したもので、それらが先例価値を有しない以上、判例5.も又先例価値がない。
また、会社臨時特別税法にかかる判例5.は、実体法の規定を無視したデタラメなもので判例の名に値しない。先例価値以前の問題である。
―― ―― ―― ―― ――
ここで一句。
(政治家の野合とは利権を求めてくっつくこと。ちなみに、野合の本来の意味は「正式の手続きを踏まないでする結婚」の意の老人語(新明解国語辞典)、とあります。では、自民党国会議員によるゲス不倫も野合?)
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