査察Gメンを犯罪人として告発!!-⑦

 以下に述べる、判例2.と判例3.も、判例1.と同様、由々しい問題を抱えている。即ち、



 判例2.最高裁の判決日が昭和24年7月9日であるから、原審・大阪高裁の判決文を見るまでもなく、明らかに、昭和37年4月1日より前の事件である。先例価値がない。



 判例3.原審・名古屋高裁金沢支部の判決文を見ると、“被告人山口太三の原判示営業部門における昭和二五年中の所得を、二,一六〇,八二八円、これに対する所得税の不正に免れた額(以下時に逋脱額と称する)を二,六一〇,〇〇〇円、昭和二六年中の所得を五,〇七二、八〇二円、これに対する所得税の逋脱額を二,六一〇,〇〇〇円、昭和二七年中の所得を一,九〇二,七〇三円、これに対する所得税の逋脱額を八〇六,七八〇円と各認定判示している”とあることから、逋脱行為がなされたのは、昭和25年、昭和26年、昭和27年の3年間であり、昭和37年4月1日より前の事件であることが判明する。これまた先例価値がない。

 判例4.悪名高い“ことさら判決”である。この判決を根拠にすれば、逋脱の“故意”をくっつけることによって、すべての過少申告が逋脱犯とされてしまう、国税庁にとってはまことに都合のよい判決であり、納税者・国民にとってはオソロシイ判決だ。私の冤罪をデッチ上げる根拠とされた判決であることは前回述べたところである。私の冤罪について鑑定書を書いて下さった北野弘久先生の所論は、この“ことさら判決”が正しいことを前提になされているが、このたび“ことさら判決”自体が誤っていることが明らかになったのである。
 犯罪構成要件の中に全く異質の“故意”をもぐり込ませている点では判例1.と同様であるが、この“ことさら判決”は、更に一歩踏み込んで、“故意”が犯罪の構成要件そのものになっている観がある。“ことさら”という漠然とした意味合いの言辞を用い、積極的な不正工作が存在しない場合でも納税者に税を免れる意思(故意)さえあれば犯罪が成立するなどと称しているからだ。
 本来、“故意”と「犯罪構成要件該当性」とは全く異なる概念であるにも拘らず、敢えて上述のような小細工を弄している。この点判例4.は刑法の基礎理論に反しているばかりではない。憲法第31条、および第39条で定められている罪刑法定主義(いかなる行為が犯罪であるか、その犯罪にいかなる刑罰を加えるかは、あらかじめ法律によって定められていなければならないとする主義-広辞苑)の原則にも反するトンデモナイ判例であるだけでなく、判例1.以上に多くの問題点を抱えていることが明らかになった。

 まず判例4.そのものを検討する。所得税法違反事件についての最高裁の判決である。原審は東京高裁(昭和46年8月10日判決)。
そこで引用されている先例判決は次の2つである。
+最(大)判 昭和42年11月8日刑集21巻9号1197頁
+最判    昭和26年3月23日裁判集刑事42号
 引用されている1.の大法廷判決は、本稿で判決1.として検討(「査察Gメンを犯罪人として告発!!-④」「査察Gメンを犯罪人として告発!!-⑤」「査察Gメンを犯罪人として告発!!-⑥」参照)したもので、国税通則法の施行日より前の事件にかかる判決であるだけでなく、物品税法の、しかも未遂犯についての判決であった。
 先例価値がないだけではない。所得税法の裁判(判例4.)に、租税に関する法律構造が著しく異なる物品税法の判例(判例1.のこと)を引用するなど、木に竹を継ぐに等しい荒唐無稽(こうとうむけい。この世の中でそんな馬鹿なことがあるはずはないということが分かり切っている様子。-新明解国語辞典)な判決であるというべきだ。所得税法における逋脱犯の構成要件である「詐偽その他不正の行為」と、物品税における「詐偽その他不正の行為」とを同一視している訳で、裁判官が租税法一般に無知であることの何よりの証拠である。法文の上では全く同じ字句が用いられていても両者は全く異なったものだ。

 引用されている2.の小法廷判決は、法人税法違反事件として、昭和26年3月23日になされたものであり、原審・広島高裁の判決が昭和25年2月13日であることから、この法人税法違反事件は明らかに国税通則法の施行日(昭和37年4月1日)より前の事件であることが分かる。すでに述べた理由により先例価値はない。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

 

”住民が居ても発見コロンブス” -湯沢、馬鹿駄物

 

(毎日新聞、平成28年2月27日付、仲畑流万能川柳より)

(コロンブスは冒険家でも探検家でもない。スペイン政府公認の海賊だ。大西洋を西に廻ってカモとなる国を捜しに行き、実際に殺人、略奪をして奪った財宝を本国に持ち帰っている。)

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