大塚家具の親子ゲンカ-⑥

 たしかにテレビに時々顔を出す大塚久美子氏には生々とした人間の表情がない。まるで蝋人形だ。最近の安倍晋三総理と同様に、何ものかに取りつかれているロボットだ。

何故彼女がロボットに堕したのか。このような訳の分からないことで父娘がいがみ合っているのは何故か。

 その疑問を解明する手がかりは、大塚久美子氏が平成27年2月25日にリリースした『平成27年12月期(第45期)配当予想の修正に関するお知らせ』にある。

 彼女はそこで「株主資本配当率(DOE)」なる言葉を用いて次のように言っている。

「平成27年12月期の1株当たり配当予想については40.00円としておりましたが、本日開催の取締役会において、新たに策定いたしました中期経営計画に基づく積極的な株主還元方針(2015~2017年においてはDOE:株主資本配当率を算出根拠とする積極的な配当を行う)を決定したことを受け、上記のとおり平成27年12月期の1株当たり配当予想を80.00円に修正いたします。」

 ここで彼女は、今後はこれまで以上に積極的な配当を行うことを宣言している。しかも、配当の額をいくらに決めるかについては、もっぱら株主資本を念頭においてすることを強調している。
 彼女がさりげなく持ち出してきた「株主資本配当率(DOE)」という経営指標はこれまでにはなかったものだ。「株主資本」という勘定科目自体が最近できた新しいものだからだ。

 従来の商法、有限会社法が廃止され、新しい会社法が成立したのが平成17年のことだ(平成17年7月26日法律第86号)。施行は翌平成18年5月。今から9年前のことである。
 この会社法によって大きく変ったのが資本についての考え方である。自己株式の取得ができるようになったり、利益処分についての規制が大幅に緩和された。
 貸借対照表の科目表示については、それまで「資本の部」とされていたのが「純資産の部」へと変更され、従来の「利益処分計算書」に換って「株主資本等変動計算書」の作成が義務付けられるようになった。
 この「株主資本等変動計算書」は、純資産を次の4つに分けてその動きを示したものである。
+株主資本
+評価・換算差額
+新株予約権
+少数株主持分
 この4つのうち1.の株主資本が主たるもので、あとの3つ(2.~4.)は株主資本の控除項目として存在するものだ。

 ここで問題なのは、資本、即ち純資産が概ね株主資本であるとされていることだ。
 そもそも、資本あるいは純資産とは一体何か。この際まず確認しておかなければならないことは、資本(純資産)という概念は簿記会計上のものだということだ。ここをしっかりと押えておく必要がある。
 そこで簿記会計上の資本とは何かということになるのであるが、これは、簿記会計上の資産から簿記会計上の負債を差引いた残りのことだ。この資産も負債も多くの勘定科目の集合体であり、しかも簿記会計上のいくつかの仮定(これを会計公準といっている)の上に成り立っている、いわば仮定の産物だ。
 つまり資本とは資産という仮定の産物である集合体から負債という仮定の産物である集合体を差し引いたものであり、実体のない空疎なものだ。
 実体のない空疎な存在である資本が、会社法の成立と同時に純資産という名称を与えられて「株主資本」と位置づけられることになった。いわば資本というユーレイが法律のトリックによって実体があるかのような純資産へと転換させられ、しかもその純資産の所有者は株主であるとされたのである。
 福沢諭吉が翻訳した『帳合の法』で、勘定科目の貸借の議論を始めると泥沼に陥ると指摘され、私自身も、純利益とか資本が訳の分らないシロモノであることを松江商業高校での実体験によって知っていた。そのような訳の分らない資本に対して、法律の上で実体(!!)らしきものが与えられたということだ。ユーレイが現実の世界に躍り出たのである。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

”侵略を開拓という西部劇” -武蔵野、竹トンボ

 

(毎日新聞、平成27年4月5日付、仲畑流万能川柳より)

(原発。核兵器工場であるのに発電所であると強弁するが如し。)

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