大塚家具の親子ゲンカ-③

 「ナッツ姫」ならぬ「かぐや姫」の暴走が開始されたのは大塚久美子氏が社長に就任した平成21年3月である。この時父親の大塚勝久氏は代表権のある会長に退いている。前回述べたところである

まず前回の第1表と第2表とを見ていただきたい。第37期(平成19年12月期)と第38期(平成20年12月期)とが異常であることが分かる。第37期には2,799百万円あった当期純利益が第38期には一転して530百万円の赤字に転落していることが一つ。赤字転落にも拘らず一株当たりの配当金が35円から40円にアップされていることが一つ。更に今一つは、第37期に自己株式の買い取りがなされていることだ。この自己株式の取得は、発行済株式総数の実に10%強に当たる220万株に及ぶもので80億円ほどの資金が社外に流出している。
 この自己株式取得と同時期に、大塚勝久氏の持株480万株のうちの130万株が、一族の資産管理会社である(株)ききょう企画に移転し、三菱UFJニコス(株)の持株48万株が、(株)ジャックスに移転している。―第5表

***第5表 大塚家具の持株の移動

株主 平成19年12月末 平成20年12月末 増減
1.大塚勝久 4,800千株 3,500千株 △1,300千株
2.(株)ききょう企画 532千株 1,892千株 +1,300千株
3.三菱UFJニコス(株) 480千株 △480千株
4.(株)ジャックス 480千株 +480千株

 第5表はあくまでも大株主間の株式の移動であって、この外に220万株の株式が自己株式の取得分として売買されていることになる。2つを合わせると実に400万株近くになる。
 大塚家具が上場されているのはジャスダックだ。東証などと違って新しくできた小さなマーケットである。このようなマーケットで400万株弱の株式の移動がなされたのであるからかなり注目されていたに違いない。
 インサイダー取引で課徴金を課せられたのは、大塚勝久氏なのか大塚家具なのかは定かではないが、第5表の、1.と2.の130万株の取引、3.と4.の48万株の取引、220万株の自己株式取得にかかる取引、このうちのいずれかがインサイダー取引と認定されたのであろう。

 以上のような株式の移動で、このたびの親子ゲンカに関係がありそうなものは、第5表の1.から2.への130万株の移転である。これによって筆頭株主であった大塚勝久氏の所有株式数の割合は22.22%から18.04%へと減少し、(株)ききょう企画のそれは、2.74%から9.75%へと増加し、第5位の大株主から第2位の大株主へと躍進している。
 この(株)ききょう企画をめぐって親子間で争いがあり、訴訟にまで至っていると伝えられていることからすると、(株)ききょう企画の事実上のオーナーが誰なのかについての争いではないか。想定されるのは、(株)ききょう企画は大塚勝久氏の相続税対策として利用された会社ではないかということだ。つまり、法形式的には大塚久美子氏がオーナーではあるが、それは税務対策として行っているだけで、事実上のオーナーは大塚勝久氏ではないかということだ。

(この項つづく)

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 ここで一句。

”夫背に「長生きしてね」愛犬(いぬ)に言う” -横浜、さつきの母

 

(毎日新聞、平成27年3月18日付、仲畑流万能川柳より)

(夫には?)

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