「誰が小沢一郎を殺すのか?」-①
- 2014.06.03
- 山根治blog
「誰が小沢一郎を殺すのか?」
-センセ-ショナルなこのフレ-ズは、カレル・ヴァン・ウォルフレン(Karel van Wolferen)の著書の題名である。原著は「The Character Assassination Of Ozawa Ichiro」といい、その日本訳(訳・井上実。角川書店)の題名だ。
“Character Assassination”とは、耳慣れない言葉である。著者によれば、欧米ではよく使われる表現だという。
いつもの癖で早速辞書を引いてみる。
まず、“Character”。
+(一般的に)性質、性格(nature)
+(道徳的な)品性、人格
+評判(reputation)、(とくに)よい評判
+(他のものから区別する)特徴、特性
+地位(position)、資格(capacity)
+(ある人格をもつ)人物(personage)
+(物語・小説などの中の)人物、劇の役(role)
+略
+略
+文字(letter),字体、記号(mark),符号(symbol)
+略
これで分るように、⑩を除いて、残りは全て、ある人物の性格、世間的な評判、あるいは人物像を表す言葉である。
次に“Assassination”。“assassinate”の名詞形とあり、“assassinate”の意味は
+暗殺する
+(卑劣な手段で名誉などに)傷[汚点]をつける(injure)
とある。共に、岩波英和大辞典からの引用である。
この2つの言葉を組み合わせた“Character Assassination”に訳者は「人物破壊」なる訳語をあてている。よく工夫された訳語である。
この「人物破壊」について、その意味するところを著者は以下のように述べている。
これは、相手がライバルだから、自分にとって厄介な人物だからあるいは単に敵だからという理由で、狙いを定めた人物の世評を貶める、不快で野蛮なやり方である。
人殺しは凶悪犯罪であるが、人物像の破壊もまた、標的とされる人物が命を落とすことはなくとも、その人間を世間から永久に抹消するという点では人殺しと変わらぬ、いわば殺人の代用方式である。」(前掲書、P.26)
この説明、簡にして要を得た分り易い説明である。これに限らず著者の説明は分り易い。その上、著者の執筆姿勢は客観的かつ冷静であり、論理の展開にブレがない。的確な歴史認識(とくに明治維新の評価に関して)を踏まえた論述は、十分な説得力をもってグイグイと読者に迫ってくる。
当の小沢一郎氏は、この本の帯封に「我が意を得たり!よくここまで客観的・公正に書いていただいた」とするコメントを寄せている。小沢一郎氏としては百万の味方を得た心境であったろう。
昭和17年生まれの私は、小沢一郎氏と同い年である。この20年ほどの間、私も小沢一郎氏と同様の「人物破壊」の標的にされてきただけに、小沢氏本人のコメントは身に沁みてよく理解することができるのである。
ウォルフレン氏は、官僚という非公式の権力の存在を俎上に載せて、次のように述べている。
ところが、日本において現実に作用しているシステムは、この法律に規定された内容とは大きく異なっている。つまり、日本の場合、法律に準拠した、本来あるべき姿としての公式のシステムと、実際の政治システムがかけ離れているということだ。」(前掲書、P.21)
更に著者は、
ところが日本の場合、経済や政治上の取り引き、関係性など、現実のなかで実際に利用されるやり方が、法律によって決められているわけではないのである。(前掲書、P.54)
と、同様の指摘を繰り返し述べ、日本を統治しているのは、政治家ではなく、一握りのキャリア官僚であり、それを支えているのが非公式の統治システムである官僚制度であることを喝破している。
日本国憲法は主権在民を高らかに唱い(「ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」-日本国憲法条文)、公務員は主権者である国民の奉仕者(サ-バント)(日本国憲法第15条第1項第2項)であると規定しているにも関わらず、現実の日本における統治システムは、公僕であるべき公務員が国民の上に立って支配しているということだ。倒錯しているのである。
私が、
ここで言う国家とは、日本国憲法が唱う国家ではない。憲法では、「全体の奉仕者(憲法第16条第2項)」であるとされている公務員が、逆に国民の上に君臨し統治する倒錯した国家のことだ。
ことに、公務員の中の一握りの官僚と称するキャリアが、日本を我がもの顔で統治し、日本国と国民とを食い物にしている“国家”である。」(「修正申告の落とし穴-⑧」参照)
と指摘した通り、日本の統治システムは倒錯したシステムであるということだ。憲法に違反する国家統治システムが暗闇の中でうごめいているのである。
―― ―― ―― ―― ――
ここで一句。
(“御曹司 すべって転んで成り下がり”)
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