クレーマー・橋下徹氏の本性-⑥

 前回は、「100%子会社は親会社と同一の会社と見なすべきであること、子会社の行なったことは全て親会社の責任であること」とする見解について、法律的側面から誤っており、暴論であることを明らかにした。

 今回は、このような見解が一般常識的にも的が外れていることを明らかにする。



 朝日新聞社がいくつ子会社を持っているのか定かではない。通常、大会社といわれている会社は、100%子会社を含めて、数十、あるいは数百の子会社、関係会社を持っていることが多い。これらの集団は一般に企業グループと言われているものだ。

 このような企業グループ、たしかに一体のものとして扱われることがあるのは事実である。法律的には個々バラバラの存在ではあるが、一定の政策目的から一つのグループとして一体的に扱われることがあるということだ。

 金融商品取引法による連結会社グループ、あるいは税法による同族会社グループなど、その代表的なものである。

 連結会社グループについて言えば、企業の財務の実態を把握するためには、中核的な会社の財務諸表だけでは不十分であることから、法制度的に設けられているものだ。連結会社グループという、一つのまとまった実体がある訳ではない。資本関係が緊密な企業グループの財務実態を把握するという特別な目的のために設けられているフィクションである。ただ、現在の連結財務諸表は企業会計というフィクションをいじくり回した末に出来上がっている妥協の産物だ。グループ全体の実態をある程度知ることはできるものの、かなりの修正を加えなければ真の実態が浮かんでこない。ちなみに、私の言う“認知会計”は全てのフィクションを排除したもので、制度会計の産物である財務諸表なり、連結財務諸表に一定の修正を加えたものと概ね一致する。
 同族会社グループについても同様である。公正な税の徴収という観点から課税上の弊害を除去する目的で定められた制度である。同族会社グループという、一つのまとまった実体がある訳ではない。課税をする上での特別な目的のために設けられたフィクションである。

 しかし、これらはあくまでも特定の政策目的のための扱いであって、一般に一体のものとして考えられている訳ではない。グループを構成するそれぞれの会社は、独立した存在であることに変わりはない。
 親会社と子会社は一体のものではないのである。子会社が仮に不祥事を行なったのであれば、子会社自らがその後始末をしなければならない。親会社は子会社の不祥事に直接関与した範囲で責任を負うだけのものであり、それ以上の責任は負わない。当然のことだ。税法上の同族会社グループも同様のことが言える。

 橋下氏は当初、テレビ朝日も槍玉にあげていたが、資本関係が朝日新聞社とも朝日新聞出版とも稀薄なことが判るや、テレビ朝日に対する批判を止めてしまった。もともと資本関係など、週刊朝日の記事の当否には全く関係ないことではあるが、仮にも公衆の面前でテレビ朝日を面罵するのであれば、最低限の事実関係は把握した上ですべきではないか。
 同様のことは、週刊朝日の謝罪の仕方が悪いと言って激怒してみたものの、橋下氏自身が勘違いしていたことが判明するや、慌てて発言を訂正したことにも現れている。訂正したり、発言の撤回をすれば済む問題ではない。
 橋下氏の発言はその時々の自分勝手な思い込みによって発せられた、極めていいかげんなシロモノであることを如実に示すものではないか。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“交番になにやら気になる招き猫” -名古屋、伊藤昌之

 

(毎日新聞、平成24年11月11日付、仲畑流万能川柳より)

(こんな所に招かれても。)

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