11/28講演会「闇に挑む『原発とは何か?』-福島第一と島根-」-13

****7)島根原発3号機の廃炉について

 島根原発3号機はほとんど完成しており、すぐにでも運転できるようになっています。出力は137万kw、日本でも最大級の原発です。この原発を建設するのにすでに4,600億円投入されています。



 3号機を営業運転させることなく廃炉にしたらどうか、その経済的側面にスポットをあてて考えてみます。つまり、4,600億円もの巨費を投じたものを一度も使うことなく廃炉にするなんて、もったいないではないか、経済的損失が余りにも大きすぎるのではないか、といった意見に対して、会計工学による分析をしてお答えいたします。

 まず、計算の前提になる数字について確認します。
+建設費:4,600億円
+耐用年数:40年
+廃炉コスト:3兆5,000億円(40年後)
*スリーマイル島原発96万kwの廃炉コスト2兆5,000億円。廃炉コストは、原発の出力に比例すると仮定すれば、

2兆5,000億円×(137万kw÷96万kw)=3兆5,000億円

*スリーマイル島原発2兆5,000億円の廃炉コストについては、株式会社東京証券取引所斉藤淳社長の答弁(平成23年7月13日、東日本大震災復興特別委員会における参考人としての答弁)による。
+還元率:2%と4%(国交省基準)の2つのケースで考える。
+計算式:廃炉コストの現在価値=40年後の廃炉コスト÷(1+割引率)40

 計算の結果は次の通りです。

+40年後の廃炉コスト:3兆5,000億円
+1.の現在価値
++還元率2%:1兆5,800億円
++還元率4%:  7,300億円
 この計算結果は、4,600億円の建設コストに対して、廃炉コストが現在価値で7,300億円~1兆5,800億円かかることを示しています。つまり、島根原発3号機は一度も使うことなく、直ちに廃炉にする方がコスト面でははるかに有利であるということです。

 以上の計算は、あくまでも廃炉コストと建設コストとを比較したものです。廃炉コスト以外に見込まれるコストとしては、
+使用済核物質の処理コスト
+原発事故による損害金
があります。1.、2.ともに、廃炉コストを大幅に上回る可能性がありますので、仮に40年間の運転期間中のランニング・コスト(燃料費など)が割安になるとしても国民経済的にみて、とうてい採算の合うものではありません。

 しかも、このランニング・コスト、いまだに原子力発電が火力発電に比べて発電コストの面で有利であるとされているのですが、検証に耐えない机上の空論、虚言(たわごと)です。結論ありきの計算で、役人お得意のつじつま合わせです。今から50年前、原発の発電コストが火力発電に比べてかなりの割高であったにも拘らず、正力松太郎が「電力料金2,000分の1に!」と壮大なウソをぶち上げたのと基本的に変っていないのです。

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