11/28講演会「闇に挑む『原発とは何か?』-福島第一と島根-」-12
- 2012.03.13
- 山根治blog
****6)読売新聞とブラック・プロパガンダ
読売新聞が行ったブラック・プロパガンダはアメリカの対日心理作戦の一環としてなされたものです。お手元の資料3をご覧になってください。元々、このプロパガンダは昭和28年、アメリカのアイゼンハワー大統領が国連総会で原子力の平和利用をアピールしたことに端を発します。彼はAtoms for Peace(原子力の平和利用)と言ったのですが、アトム(原子力)がPeace(平和)につながるわけがない。War(戦争)と言うべきところを、ピースに置き替えているんですね。つまり、黒を白にしてスリ替えている。そのようなスリ替えの手法を日本で実践したのが、正力松太郎率いる読売新聞でした。
この読売新聞は何をやったか。昭和29年1月1日から大型連載「ついに太陽をとらえた」を開始して、大キャンペーンを展開した。ブラック・プロパガンダ(虚偽をまじえた広報活動)の見本ともいえるものです。当時の日本は電力事情も悪く、充分な電力を使うことができなかった。それに対して、読売新聞は「電力料金2000分の1に」とぶち上げた。先程申し上げた通産官僚が苦言を呈したように、原発は火力発電と比べてはるかにコストが高いにも関わらず、あろうことか、電力料金が2000分の1まで安くなると、壮大なウソをぶち上げたということです。
その後も地球温暖化の原因が二酸化炭素であるとして、二酸化炭素を出さない原発は環境にやさしいなどと、とんでもないことを、まことしやかに宣伝を始めたのも読売新聞をはじめとした利権マスコミです。これについては、そもそも温暖化ということが歴史的にみて正しいのかどうかということに加えて、仮に、それが正しいとしても、その原因が二酸化炭素であるかどうか定かではない。更には、原発は二酸化炭素を排出しないから温暖化を防ぐなどと言っているが、とんでもないウソです。ウラン燃料を掘り出したり精製する過程で使われるエネルギー、更には原発の施設を造るための膨大なエネルギー。無視できないのは、使用済み核燃料を処理したり、原発の廃炉の際に使うエネルギー、あるいは、このたびのような原発事故処理にかかる天文学的なエネルギーなどを考えると、火力発電をはるかに上回るエネルギーの費消が考えられています。また、原発で発生した熱エネルギーの3分の2が不要な熱として海に捨てられているという現実がある。原発によって海水が温まり、海水温の上昇によってかえって温暖化を促進している。いずれにせよ、チェルノブイリの原発、この度の悲惨な福島の原発の事故、これらを目の当たりにして、地球にやさしいとか、環境にやさしいといった言葉が、いかに空疎なものであったか、いかにデタラメな宣伝文句であったか、はっきりしました。
3.11の原発事故から半年後の平成23年9月7日、読売新聞は目を疑うようなことをやった。ナント、原発の核抑止効果について、社説の中で初めて言及したのです。驚きましたね。
原発政策の大義名分は、原発安全神話という作り話を基軸にして、次の3つのEであるとされてきました。
+エネルギー供給の安定性(Energy Security)
+環境適合性(Environment)
+経済効率性(Economy)
この3つです。
福島第一原発の大事故によって、大前提であった原発安全神話がもろくも崩れ、それにつれて、3つの大義名分もバケの皮が剥げてしまった。つまり、原発政策の3つの大義名分が、安全神話の崩壊と共に、雲散霧消、消えてなくなってしまった。しかし今になって原発をやめるわけにはいかない、これまで国民を欺き、デタラメの限りをやってきたことを今さら認めるわけにはいかない。3Eという3つの大義名分に代わるものが必要になった。そこでホンネである核兵器という大義名分が出てきた、いわば真打(しんうち)登場といったところです。
読売新聞の主筆は渡邊恒雄、通称ワタツネ。彼があの社説を書いたかどうか定かではありませんが、彼の意向を無視して書けるわけがない。自ら書いたのか、誰かに書かせたのか、いずれにせよ、憲法改正論者であるワタツネの本音が出てきた。
この人物、傲岸不遜を絵に画いたような男で、政財界のフィクサー的存在と言われています。正力松太郎の子分であるとともに、与謝野馨と同様に中曽根康弘の子分。原発という巨大な利権に群がる国策大学(東京大学)の中心的な人物で、この人物の役割は正力松太郎が始めたブラック・プロパガンダを流し続けて国民を洗脳することだったのです。オウム真理教が行なった洗脳よりもはるかにタチの悪いものです。
このように考えてきますと、国民的に高い人気を誇った手塚治虫の「鉄腕アトム」と同じように、「読売巨人軍」も、ブラック・プロパガンダをより効果的にするために利用されてきた“道具”であったと言えるでしょう。プロ野球界でこの球団だけが、“軍”を標榜しているのも、特殊な存在であることを示唆しているようです。
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