11/28講演会「闇に挑む『原発とは何か?』-福島第一と島根-」-11

****5)ゾンビ企業・東京電力の上場に異議あり

 東京電力は3月11日の事故があるまでは、確かに超優良会社の一つでした。ところが、原発事故を境にしてまるっきり変わった。日本社会と世界に対して、多大な迷惑をもたらした加害企業となった。企業として見た場合、事実上の大幅な債務超過、これは会計上の概念ですが、事実上の債務超過に陥り、電力会社としての事業者能力を失った。いわば、生命維持装置をつけられた植物人間のようなもの、自力で生きていくことができなくなった。ところが、今に至るも、この会社は東証一部の上場会社であり続けています。これについては、平成23年7月13日の国会審議の場で参考人として呼ばれた東京証券取引所の斎藤惇社長が「東京電力の監査報告書が無限定適正である以上、当方としても上場を廃止する権限はない」と言っています。要するに形の上で、無限定適正意見であれば、監査人の報告書がどのようにデタラメなものであっても構わないと言っているわけです。私は、東京電力の平成23年3月期の決算については、無限定適正意見の監査報告書は誤りであると考えています。直ちに不適正意見の表明まではしなくとも、意見差し控え(意見不表明)、もしくは限定付の適正意見にすべきであった、このように考えています。東京電力が自らゴーイング・コンサーン(継続企業)の前提に見切りをつけているのですから、意見差し控え、あるいは限定付の適正意見、いずれの意見の場合であっても、レッドカードを前提としたイエローカードといったところです。

 みんなの党の柿澤未途議員が国会の場でいみじくも指摘したように、東京電力は「ゾンビ企業」であり、平成23年8月3日に成立した支援機構法は、「ゾンビ企業救済法」です。

 従って現在の東京電力は、「ゾンビ企業救済法」という生命維持装置によって生かされている脳死状態の会社なのです。このような会社が株式市場に、しかも東証一部に上場されていること自体信じられないことです。

 私はかつて、『ホリエモンの錬金術』において、IT企業の仮面をかぶった詐欺会社(ライブドア)の実態を明らかにしました。株式市場を舞台にして傍若無人の振舞いに及んでいるインチキ会社に対して、上場適格性についてのレッドカードをつきつけました。

 東京電力も同じことです。東電自ら、「継続企業の前提に重大な疑義がある」と表明し、継続企業の実体が欠けている、つまり、事業を継続することができないほどの債務超過に陥っていることを認めているのです(企業実体の欠如)。しかも、債務超過に陥っている時期をゴマかして先送りしている(法形式違反)。

 このように東京電力は、実体においても形式においても明らかに上場適格性に欠けています。

 東京電力については、金融商品取引法違反、つまり有価証券報告書虚偽記載ということで、直ちに管理銘柄に移して、上場廃止の手続きを取るべきです。その上でキチンと会社更生法などの法的整理をすべきでしょう。国有化とか電気料金値上げなどの論議は、法的整理をして事故の原因と関係者の責任を明らかにした後のことです。

 いずれにせよ、次の平成24年3月期の決算までに、まだ上場が維持されているとすれば、私はその決算書の内容に注目したいと思っています。中でも、それに対して、監査人がどのような監査報告書を出すのか、非常に興味を持っております。

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