400年に一度のチャンス -20
- 2011.05.31
- 山根治blog
***20.400年目の転機-日本①
関ヶ原の合戦を経て、徳川幕藩体制が確立したのは今から400年前のことであった。武家支配の構図は、より強固なものとなり、日本全域に及んだ。士農工商の身分制度に支えられて、ごく一部の武士階級が君臨し、鎖国政策を取りながらも日本は文化的にはもちろん、経済的にも当時の世界のトップクラスに達していた。
私が日本の歴史を学んだのは、50年前、第二次大戦後の混乱期を脱し、日本が高度成長経済路線を歩み始めた時期である。
当時の歴史学は、マルクス・エンゲルスの史的唯物論が席捲、唯物史観が絶対的な真実として取り扱われ、日本の歴史にも無理に唯物史観のモノサシが組み込まれた、今にして思えばなんとも乱暴なものであった。
唯物史観にもとづく徳川幕藩体制は、ヨーロッパと同様の封建時代とされ、一部の封建領主が人民を牛馬のごとく使役して支配する、暗い陰気な社会であったかのように説明されていた。
このような考え方は、徳川幕府を倒し、明治維新を成し遂げた人達にとっても都合のよいものであったに違いない。暗い封建社会を打破して、明るい日本の未来への展望を切り開いたと言うことができるからだ。
本当にそうなのか。江戸時代は一般庶民が武士階級にがんじがらめにされた、陰惨な時代であったのか。
近年、唯物史観の教条主義から脱して、実際の江戸時代がどのようなものであったのか、各方面からの研究が進んでいる。近世考古学の発掘事蹟、市民生活を具体的に活写する、おびただしい量の古文書、江戸の中期から幕末にかけて日本を訪れた多くの外国人の記録、これらによって全く異なった江戸時代像が明らかになってきた。実に生々とした躍動感あふれる時代であったことが判明しているのである。
私達はこれまで江戸時代を過少評価していたのではないか。同時に明治維新を過大に評価していたのではないか。
このことは身分制度を検討するだけでも明らかになる。明治政府は、士農工商を廃止し、四民平等政策を進めたとされているが、実際のところは、天皇を頂点とした、皇族・華族・士族・平民という新しい身分差別制度を創設しただけだ。しかも、平民とは別に新平民なるものを置いている。江戸時代の穢多(えた)・非人(ひにん)に相当するものだ。宗門人別改にかわるこの戸籍制度(壬申戸籍)は、これ以降長い間にわたって被差別部落問題を生じさせることとなった「いわくつき」のものである。
300の藩を支配していた大名は華族として身分が保障され、維新の功労者はチャッカリと華族に列なり、その他の武士は士族と平民に分けられた。農工商は平民とされ、その下に「新平民」という被差別集団が置かれたのである。なんのことはない、旧来の陋習(ろうしゅう)を打破すべし、広く会議を興し万機公論に決すべし、と高らかに謳われたものの実態は、一般庶民の側からすれば何ら変るものではなかった。醒めた見方をすれば、江戸時代に梲(うだつ)の上がらなかった中・下級の武士が、より強い支配階級によじ登っただけのことである。
第二次大戦が終り、明治憲法にかわって日本国憲法が制定され、日本は民主主義国家へと生まれ変ったとされている。本当にそうであろうか。
たしかに、形の上での身分制度は撤廃されたが、明治憲法下における天皇の官吏だけはしぶとく生き残った。
公務員は、現憲法下では公僕(シヴィル・サーバント)とされているがウソである。日本国に君臨している点では、江戸時代の大名・武士、明治時代の華族・士族と変るところはない。官僚という名の公僕が、東京の霞が関を根城にして日本国を支配しているのである。
いわゆる“お上(かみ)意識”はこの400年の間連綿として続いてきたということだ。その事実を象徴するのが、360万人の公務員とそれを含めた1,000万人に及ぶパブリック・セクターの連中だ。1,700万人もの貧民(ワーキング・プア)を差し置いて、自分達だけはお手盛りで別格の待遇を享受している。
400年にわたって続いてきた、官の支配構造を変えることによって、閉塞感漂う日本は確実に生まれ変わるであろう。そのためには、日本国憲法の原点にかえりさえすればよい。簡単なことだ。
僕(しもべ)である役人が、1,700万人もの貧民の何倍もの手当を受けている、-現憲法下ではとうてい許されることではない。これを抜本的に変えるのである。
明治維新、あるいは第二次大戦後の事実上のアメリカ支配下において、日本が諸外国から学んで取り入れたプラスの面があるのは事実である。しかし、プラスの面だけでなく、相当以上のマイナスの面があったことも事実だ。
私達日本人は、真の意味で差別のない社会構築を目指すべきであると同時に、失われた、あるいは失われようとしている日本古来のプラスの側面を、今一度真摯に見つめ直すときがきたようである。特定の外国に唯々諾々として従ってきた時代が終ったということだ。
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ここで一句。
(小学生の子供でも納得するように答えるのが真の専門家。)
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