税務署なんか恐くない!-10

***10.税務調査の立会い-仮装・隠ぺい

 不正行為といわれても曖昧模糊としたものでよく分からないし、学説とか判例を見たりすれば益々分からなくなってくる。学者や裁判官が酢だのコンニャクだのと言い募っているだけだ。経済社会の現実、ことに数字が中心の税務に疎い、法律家の戯言(たわごと)だ。

 一方、いくら明確な規定がなされていないとはいえ、仮装・隠ぺいは具体的な「事実」だ。仮装という事実、あるいは隠ぺいという事実である。外形的、具体的に指摘することができる事実である。

 たとえば、裏帳簿(二重帳簿、B勘)を作成して、売上の除外金を管理していたというケースは隠ぺいの事実そのものであるし、あるいは、愛人とか架空の人物を社員ということにして人件費を計上していたといったケースは仮装の事実である。

 このようなケースは勿論争いの余地のないもので、重加認定をされても仕方のないものだ。

 ところが現実には、仮装とか隠ぺいの事実がないにも拘らず重加認定がなされているケースが多発している。なんとなくおかしい、何か怪しい、不自然だといった程度のことで重加認定がなされているのである。

 何故このようなことが起るのか。税務調査において脱漏所得(所得のモレ)の説明はそれなりに税務署側からなされるものの、重加認定についてはほとんど触れられることがないからだ。
 一通りの調査が終ると所得のモレを一覧表にした書類(指摘事項一覧表)が納税者に渡され、それをもとにして調査結果の説明がなされる。

指摘事項一覧表
^^t
^cx^NO.
^cx^決算期1
^cx^決算期2
^cx^決算期3
^cx^不正
^cx^合計
^cx^摘要
^^
^rr^1.
^rr^×××円
^rr^×××円
^rr^×××円
^cc^○
^rr^×××円
^
^^
^rr^2.
^rr^×××円
^rr^×××円
^rr^×××円
^cc^○
^rr^×××円
^
^^
^rr^3.
^rr^×××円
^rr^×××円
^rr^×××円
^
^rr^×××円
^
^^
^rr^4.
^rr^×××円
^rr^×××円
^rr^×××円
^cc^○
^rr^×××円
^
^^
^cc^・
^cc^・
^cc^・
^cc^・
^cc^・
^cc^・
^
^^
^cc^・
^cc^・
^cc^・
^cc^・
^cc^・
^cc^・
^
^^
^cc^合計
^rr^×××円
^rr^×××円
^rr^×××円
^
^rr^×××円
(内 ×××円)
^
^^/
 重加認定については、一覧表に申し訳ていどに記載されているにとどまり、納税者の側から説明を求めない限り、税務署側から説明されることはない。
 通常、表の中に一つの欄(不正欄)がもうけられており、そこに○印がつけられているのが不正所得(正確に言えば仮装・隠ぺいによる所得のモレ)であり、不正所得の合計額は、全体の所得のモレの下に内書きされている。
 それだけであり、他に何の説明もない。重加認定をして何か文句があるか、といった感じである。場合によったら刑事訴追にも及びかねない重大なことであるにも拘らず、このように軽々しく扱われているのである。
 しかも、多くの場合、更正(税務署が職権で追徴処分をすること)ではなく、修正申告(納税者が税務署の慫慂にもとづいて自発的に申告額の修正を行うこと)がなされるのであるが、重加算税を含めた加算税の賦課決定は修正申告が提出されてから税務署が一方的にするものであり、修正申告が出されたからといって、納税者の意向が反映されることはない。修正申告書には重加算税に関連する記載項目がないからだ。

 北野税法学を樹立された故北野弘久先生は次のように指摘されている。

“どのような要件を充たす場合に加算税、特に「重加算税」(国税通則法68条)が課されるかについて、法の規定は不明確である。それは、事実において課税庁の「恣意」が大きく混入するおそれのあるものとなっている。
……
 また、現行法は加算税の課税手続について何ら「適正手続」への配慮を行っていない。現実的にも、いわば「隠密的」に、納税者に対して制裁が行われている。“(北野弘久著、「税法学原論」-第6版、P.509)

 ではどうしたらいいか。立会人である税理士が、重加認定の理由、即ち仮装・隠ぺいの事実の説明を税務職員に求めればいい。具体的な説明を求めるのである。説明を求めた上で、具体的な理由の摘示がなされないものについては重加認定を外すようにねばり強く交渉することだ。重加認定が外れた場合には、往々にして所得のモレ自体もなくなることが多い。「税務署なんか恐くない!-7」で取り上げた最近の料調の事例がまさにそれだ。
 また、重加認定がなされていなければ、何よりも刑事訴追のおそれがなくなる。納税者がもっとも心配していることが解消されるのである。

 納税者は税金のことについてはよく分からなくとも、お金のプロである。経営のプロであると言ってもいい。
 そのような納税者が、税務署が提示した課税処分(案)について、ことに重加認定について納得がいかない時は、ほとんどの場合税務署側が間違っていると考えてよい。税法は複雑怪奇なものではあるが、事実認定は税法とは基本的に関係ないからだ。納税者は当事者であるから、事実認定については誰よりもよく分るはずだ。税務職員が正しい事実認定をしているかどうかチェックするのは決して難しいことではない。
 納税者が正しい判断をするためには、重加認定の理由、即ち具体的な仮装・隠ぺいの事実が明確な形で摘示されるだけでよい。税務職員に対して明確な摘示を求め、納税者の正しい判断をサポートするのが立会人としての税理士の役割だ。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“忘れたいあの人総理だった事” -東京、ドド子

 

(毎日新聞、平成22年12月14日付、仲畑流万能川柳より)

(口曲り、それともライオンヘアー?)

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