税務署なんか恐くない!-7
- 2010.12.14
- 山根治blog
***7.税務調査の立会い-天下り税理士の弊害
企業が天下り税理士を受け入れるのは、支払う報酬以上の見返りを期待しているからである。-すでに述べた(「税務署なんか恐くない!-6」)ところである。
しかし、本当に企業にとってメリットがあるのかといえば、なんだか怪しくなってくる。メリットがないばかりではない。かえってデメリット、あるいは弊害が生じているのではないか。
企業によっては、一人だけでなく、2人も3人も、時には4、5人ものOB税理士を抱えていることがある。国税当局が押しつけたのか、あるいは企業が自発的に国税当局に依頼したのかは問わない。この際どうでもいいことだからだ。
2人の場合には2階建と称し、3人、4人の場合にはそれぞれ3階建、4階建と称している。多くのOB、それも税務署長経験者とか、国税局の部長経験者などを税務顧問として身内に引き入れておけば、税務調査など、いざという時に役立つとでも考えているからであろう。「冤罪を創る人々」の中心人物であった大木洋氏は、その後ノンキャリアとしては最高ポストである広島国税局調査査察部長にまで昇進して退職しているのであるから、多くの顧問先を国税局から斡旋してもらっているだけでなく、一部上場企業の監査役まで手に入れている(「あの人はいま? -1」参照)。古巣である広島国税局にあれこれと働きかけて立派に仕事をこなしているに相違ない。ご同慶の至りである。
さて、OB税理士に企業が期待するのは、税務調査を無難に切り抜けることだ。企業としては、それ以外に彼らに望むところはない。いざという時にそなえた用心棒の役回りである。
用心棒といえばまず念頭に浮かぶのは、時代劇に登場する無頼の浪人だ。ケンカの出入りにそなえて日頃から捨て扶持を与えられて養われているヤクザの食客のことである。
このような用心棒はいざという時には文字通り命を投げ出して、獅子奮迅の働きをする。一宿一飯の恩義を律儀に返すのである。
これに対して、用心棒としての国税OBはどうであろうか。報酬に見合うだけの働きをして税務調査に立ち向かってくれるのであろうか。
否である。強制調査である査察はもちろんのこと、査察に準ずる料調が来た日には一目散に逃げ出すのが通例だ。逃げ足の速いこと、脱兎のごとくである。自分達の身がヤバクなるからだ。
逃げないで調査の立会いをすることもあるにはあるが、税務当局がどのように理不尽なことを突きつけてきても、当局の代弁者となって、納税者を説得する役回りだ。脅したりすかしたりして納税者を丸め込むということだ。
最近の料調の事例である。ある企業グループが料調の手荒い調査を受けた。局の部長クラス、管内の税務署長経験者を含めて、4人のOB税理士がついていた。いわゆる4階建である。調査が一段落した時点で、料調から非違事項を指摘され、修正申告に応ずるように促された。修正申告の慫慂(しょうよう)である。
非違事項の金額は合わせて12億円。追徴税額は本税、地方税、重加算税を含めて6億円。
4人のOB税理士はかわるがわる次のように社長に申し向けたという。
『このままグズグズ言って抵抗していると、査察に回されて社長が逮捕されるかも分らない。』
『我々が交渉してできるだけ値切るので、その線で早く手を打つほうが得策だ。』
社長は悩んだ挙句、結局提示を受けた金額の半額、6億円の修正申告に応じ、本税他の税金を3億円支払った。エライ4人のセンセイ方が尽力してくれて、言い値の半分にまでなったから、これでよしとしようと考えたのである。
私は調査の最終段階でこの企業グループから相談を受け、その詳細を把握していた。私の見たところ、たしかにいくつかのミスはあるものの、重加算税の対象となるような不正な所得モレはほとんどなく、大半が国税局のいいがかりかもしくは勘違いの類であった。私のザックリした試算では、修正すべき所得は5千万円未満、税額は合せて2千万円弱、重加算税はほとんどゼロであった。
つまり、国税は所得、税額ともに20倍以上もふっかけていたということだ。悪徳商人も真っ青である。OB税理士が4人がかりで交渉した結果も、依然として10倍以上の水ぶくれである。なんのことはない。もともと追徴すべき税額は2千万円であったものを6億円とふっかけていただけのことだ。OB税理士が交渉するふりをして半額の3億円に値切ったものの、水ぶくれが半分になっただけのことで、なお真実の金額との間には10倍以上もの開きがある。
脱税ではないのに脱税だといって脅されて、支払う必要がないのに10倍以上もの税金を払わされたということだ。これでは、国税局と4人のOBがグルになって納税者を脅したり騙したりして、2億円以上もの税金を詐取したに等しい。
これが、OB税理士の“便宜”と称するものの実態だ。税金問題に疎い納税者を食いものにしていると非難されても仕方のないことであり、弊害以外の何ものでもない。獅子身中の虫である。
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ここで一句。
(ギョッ。)
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