『大義名分なき公共事業』-大手前道路、大橋川改修、八ッ場ダム-5

 弊社主任コンサルタント山根治が講演した「大義名分なき公共事業 -大手前通り、大橋川改修、八ッ場ダム」についての講演内容を、数回に渡って「山根治blog」にて公開いたします。
***【講演会】「大義名分なき公共事業 -大手前通り、大橋川改修、八ッ場ダム」
-日時: 平成22年1月23日(土)13時35分~
-場所: 島根県民会館307号室 (島根県松江市殿町158番地)
-講師: 公認会計士 山根治

第一回: 『大義名分なき公共事業』-大手前道路、大橋川改修、八ッ場ダム-1



***【3.松江における政治状況の変化】

 それと次は3番目、松江における政治状況の変化について申し上げます。このことと4番目の街づくりについての考え方の検証とは密接に関連しておりますので、これについて申し上げます。

 3番目のレジュメで、私は”だんさん”支配の終焉と書いています。敢えてひらがなで”だんさん”としています。これには特殊な意味がございます。標準語でいう旦那のことですが、一般に出雲弁で”だんさん”と言いますと、かなり広い範囲が入るようでございます。

 歴史家であり出雲弁保存会の会長である藤岡大拙先生の意見でございますが、昔は駐在所のお巡りさんも”だんさん”であり、あるいは神社の神主さん、お寺のお坊さんも”だんさん”、当然庄屋さんとか、そういった大地主、あるいは医師なんかも”だんさん”と言っています。私がここで言っていますのは、そのさらに上に位置するような”だんさん”、”だんさん”、の中の”スーパーだんさん”、つまり、”THEだんさん”のことです。

 具体的に申し上げますと、県知事までなさった田部長右衛門さん(23代田部長右衛門氏)、まさにこの方をイメージしております。
 私はこの方には、実際にお目にかかったことはありませんが、非常に高い見識を持った立派な方だったというのは耳にしていますし、何をなさったかを見てもやっぱり相当な方だったと評価しております。
 ただ、この方が亡くなってからどうなったか。この”だんさん”の下には子分みたいなものがおりましてね。子分。家来とか番頭のような存在がおった。一くくりにして子分です。もうちょっと悪い言葉で言いますと、手先ですね(笑)。こんなのがおりましてね。そこらあたりのことは皆さんよくご存知だと思います。
(とここでボードに図を描く)

<%image(20100309-dansan.png|427|137|だんさん相関図)%>

 それで政治家がおりまして、役人がおりますね、官。財界。松江というか島根県に財界があるのか、私は非常に疑問に思っていますけれども、仮にあるとしましょう。こういうつながりがありまして、”だんさん”が中心になって動いていた、という時代がございました。
 もう一つ、マスコミがあります。マスコミと言うのは地元の、山陰中央新報と考えていただきたい。地元の御用新聞として有名です(笑)。
 この”だんさん”がいらっしゃるときは、まだよかった。いろんな問題はあったでしょうけど、それなりに機能していた。
 私が“だんさん”としてイメージしている田部長右衛門さんには、確たる信念があった。確たる国家ビジョン、地域をどうするかというきちっとした明確なビジョンを持っていらっしゃった。
 この方については賛否両論はあるでしょうが、私は必ずしも否定的な見方はしておりません。
 ところがこの方がいなくなった。そうしたら“だんさん”のところが空白になってしまった。知事をなさった田部長右衛門さんが亡くなられてから、ずーっと空白状態が続いてきた。で、それから何が起こったか。”だんさん”はいなくなったけれども、”だんさん”の役割をしようとする人達が出てきた。こういう子分とか手先とか、こういう連中が大きな顔をしだした。私は、こういう言葉を使っていいか分りませんが、”だんさん”のふりをした、いわば”だんさんもどき”(笑)。勘違いをして“だんさん”になりきっている連中のことです。中央政界で「参議院のドン」とか言われてチヤホヤされていた人も、昨今の政変でバケの皮がはがれてしまったようですね。

 今日は中藤(中藤俊雄)さんは来ておられますか。実は、参考資料4につけている漫画がございます。この漫画は15年前に北川泉先生と一緒に、島根総研の特別号を出したときに、私も記事を書きましたが、そこにつけた漫画でございます。
<%image(20100309-sc4.png|335|358|出雲ふとど記 (渡部良治))%>

 この”出雲ふとど記”という言葉には思わず吹き出してしまったのですが、えらく感心しまして、この言葉をお作りになったのが実は中藤さんでした。朝日新聞の投書欄に出ていました。私は、この言葉が非常に気に入りまして、漫画にしてもらった。この漫画を描いてくださったのが佐田町で農村歌舞伎をなさっている渡部良治さんでした。私もこんなステキな漫画が出てくるとは思いもしませんでしたが、この中藤さんの記事を差し上げて、これをイメージして漫画にしてくださいとお願いしたものです。
 ブルドーザーに乗っているのが当時の市長の宮岡(宮岡寿雄)さん。(笑)
 そういうことで、私は中藤さんほど、言葉のセンスはないんですけど、”だんさんもどき”だと思っています。
 力もなければ、ビジョンもない、ろくな考えを持っていない連中が猿マネをした。政治家も、役人もそうです。財界、これは財界もどきですけど、そういう連中が”だんさん”の真似をした。そういった状況が、この20年近く続いてきたというのが松江を中心とした島根県の状況でございます。
 この人達には確たるビジョンがなかった。地元をどうしていくか、こういったビジョンがなかった。自分達の利益のため、自分達の、一握りのグループのため。地域なんかどうでもいい、自分達さえよければどうでもいい、そういう考え方の人達が、この空白になってから後にこの地域を支配してきた、というのが実態だったと私は理解しています。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“大本営発表聴いている如し” -さいたま、高木光政。

(毎日新聞、平成22年2月6日付、仲畑流万能川柳より)

(“検察はウソ八百の大本営”-“幻の彼方にかすむ正義の砦、秋霜烈日どこへ行く。”)

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