乾隆帝の壺-1
- 2010.01.05
- 山根治blog
平成20年4月のことであった。私の許に一つの壺がやってきた。知人の所有になる名品で、中国清朝第六代皇帝乾隆帝(けんりゅうてい)ゆかりの品というふれこみだ。
私は美術品愛好家でもなければ骨董マニアでもない。ただ好奇心だけは若い時から人一倍旺盛な方なので、早速拝見することにした。美術品についてはずぶの素人であり、中国の歴史についても詳しいわけではなかったが、乾隆帝の名前だけはかねてからよく知っていたのである。
現物を眼の当りにして言葉を失った。それは輝くばかりの光を放っていた。まさに、練達の職人達が技術の粋を尽して生み出した宝石であった。
あれから一年8ヶ月、壺は縁あっていまだ私の手許にとどまっている。折にふれて包みを解き、箱を開ける。白手袋をはめて手にとっては壺と向き合っている。壺との対話である。
高さ37cmの紅釉瓶、ルビーともみまがう珊瑚色の紅色が基調をなしている。ちなみに赤色は私の好みの色だ。好みのネクタイはワインレッドであるし、日頃愛用しているパーカーもまた珊瑚色である。
番(つがい)の尾長鳥に松竹梅が金料で描かれ、背面には、
珎禽栩栩
枝間舞
満園花發
艶無雙
豐姿挺秀
鮮似錦
群卉豈肯
嬌天香
枝間舞
満園花發
艶無雙
豐姿挺秀
鮮似錦
群卉豈肯
嬌天香
の詩文が、引首一、句後二の三印を付してこれまた金料で書かれている。単なる金彩ではなく、絵柄や詩文が盛り上るように描かれており、立体感をかもしだしている。生涯に4万編に余る詩作を残したと伝えられる乾隆帝、あるいは皇帝自作の詩文に合せて絵柄が選ばれたものであろうか。瑞鳥の絵柄と詩文、共に見事な筆致である。「大清乾隆年製」の銘が、底裏に青花で記されている。
【正面】
【背面】
【上部】
【底部】
(写真撮影は、澤田暉夫氏による。)
(この項つづく)
―― ―― ―― ―― ――
ここで一句。
“言い訳が むなしく響く 竹中氏” -川越、コーちゃん。
(毎日新聞、平成21年11月3日付、仲畑流万能川柳より)
(敗軍の小将、兵を語る。)
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