保守王国の悪あがき-4

 前回、「ハゲタカの乱舞」と題する、25年前の私の記事を掲載した。大橋川改修事業に即して、ハゲタカとは何か、ハゲタカがついばもうとしている死肉とは何かを考えてみる。



 まず、ハゲタカ。国交省の役人と島根県の一部の国会議員・地方議会議員をはじめとして、その配下にある土建業者。ハゲタカの手先になって旗振り役を演じているのが島根県知事・松江市長であり、おこぼれに与ろうとしているのが、立退き補償金をあてにしている一部の地元住民だ。

 次に、死肉。700億円という国民の血税を第一に、事業遂行によって消えてなくなる水都としての歴史的自然的景観。更には中流域の豊かなクリーク地帯(とりわけ中の島)を破壊することによって失われる、湖の浄化機能。大和シジミをはじめとする、壊滅のおそれがある魚介類。有明海の漁業に甚大な被害を与えている諫早湾の二の舞になりかねない。

 700億円の血税は、政治家への政治献金という名のワイロが上乗せされた死肉であり、ハゲタカの生存を維持し、肥え太らせる為には欠かせないごちそうである。

 自民党が全国的に大敗してから早くも4ヶ月。ここ島根県では2つの小選挙区ともに自民党が死守して、なんとか保守王国のメンツを保つことができた。しかし、ここにきて急速に島根の住民の意識が大きく変り始めていることは事実である。
 晴れて国会議員になることはできたものの、野党に転落した以上、これまでのような傍若無人の振舞いができなくなった。カネと権限がなくなったからだ。自分達の思惑通りに新規事業を立ち上げて仲間内で税金の山分けをすることができなくなったのである。
 そこで、勢いこれまでに事業決定された公共事業にしがみつくことになる。決定済の事業までが八ツ場ダムのように中止にでもなれば、死活にかかわることだけに必死である。ワイロという糧道が断たれるからだ。大橋川改修事業という治水効果がほとんど期待できない事業が、このところバタバタと再開に向けて動き出している背景には、このような醜悪な事情が横たわっているのである。税金ドロボーのダシにされる松江市民にとってはたまったものでなく、迷惑千万なことである。

 これまでの自民党支持者の多くは、必ずしも党の政治理念とか主義主張に共鳴していたのではないだけに、金の切れ目は縁の切れ目とばかりに雲散霧消していくに違いない。いささか品のない言い方をすれば、「馬糞の川流れ」といったところであろうか。
 「コンクリートから人へ」のスローガンのもとに、人と環境を重視して土建国家からの脱却を掲げる新政権に対して、自民党はいまだまともな対抗策を打ち出すことができていない。低次元の民主党批判を繰り返すだけの、負け犬の遠吠えといったところである。小泉・竹中両氏がコンビとなって日本の大切な部分を破壊したことについての反省が、いまだ十分になされていないのである。夢よもう一度とばかりに、公共事業という死肉にしがみついている限り、どのような御託を並べても、あるいは民主党の欠点を声高に論(あげつら)っても、決して国民の理解を得ることはできないだろう。
 不適法でありムダな公共事業は、政策評価法を厳格に適用して断固として中止する、自民党としても民主党のお株を奪う位の気概を示すことが、今こそ必要なのではないか。腐っても鯛、50年以上にわたって日本の国を牛耳ってきた人達だ。せめて君臨してきた覇者としての矜持を示していただきたいものである。

(この項おわり)

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 ここで一句。

“最強の 野党期待 してるのに”  -京田辺、茶ップリン。

(毎日新聞、平成21年12月23日付、仲畑流万能川柳より)

(負け犬の 遠吠え寒し 歳の暮。)

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