検証!! 『ホリエモンの錬金術』-6
- 2009.06.30
- 山根治blog
まず、大量保有報告書と変更報告書とは何か。
証券取引法(現在は金融商品取引法)の、第27条の23に大量保有報告書の、第27条の25に変更報告書の定義がなされています。それによりますと、-
-大量保有報告書(27条の23)とは、発行済株式の5%超の保有者(これを大量保有者といっています)が報告を義務付けられた書類のことです。
-変更報告書(27条の25)とは、大量保有者が1%以上の株式を売ったり買ったりした場合と大量保有報告書の内容に重要な変更があった場合に報告を義務付けられた書類のことです。
大量保有報告書は、大量保有者になってから5日以内に、変更報告書は変更があった日から5日以内に、内閣総理大臣に対して提出しなければなりません。提出義務があるのは大量保有者です。
以上のような証取法の規定を念頭に置いて、有馬純一郎氏名義の960株(上場時の評価額で57億6千万円(600万円×960株)、実際に売却して得られた金額にして20億円余り)について具体的に考えてみます。
+株式会社オン・ザ・エッヂが上場したのは、平成12年4月6日。
+上場時点の株主の持株状況は次の通り。
No. | 株主 | 持株数(株) | 備考 | 保有割合 |
---|---|---|---|---|
1 | 堀江貴文 | 7,920株 | 大量保有者 | 60.9% |
2 | (株)光通信 | 1,800株 | 大量保有者 | 13.8% |
3 | 有馬純一郎 | 960株 | 大量保有者 | 7.3% |
4 | (株)グッドウィル・コミュニケーション | 600株 | 4.6% | |
5 | 大和証券SBCM(株) | 360株 | 2.7% | |
6 | (株)光通信パートナーズ | 120株 | 0.9% | |
7 | 宮内亮治 | 96株 | 0.7% | |
8 | 和井内修司 | 96株 | 0.7% | |
9 | 小飼弾 | 48株 | 0.4% | |
10 | その他 | 1,000株 | 上場時公募分 | 7.7% |
合計 | 13,000株 |
+上場時点での大量保有者は、2.のうち、上位3番目までの株主、つまり、堀江貴文氏、株式会社光通信、有馬純一郎氏の3者だけであり、それぞれ、上場してから5日以内に、大量保有報告書を提出する義務あり。
+有馬純一郎氏が実際に大量保有報告書を提出したのは同年6月15日。2ヶ月ほどの遅延。
+有馬純一郎氏は、平成12年6月19日に2通の変更報告書を提出。
++初めのものは、平成12年4月25日から同年6月6日までに139株を売却し、保有割合が7.38%から6.30%になったことを報告。
++次のものは、平成12年4月25日から同年6月7日までに342株を売却し、保有割合が6.30%から4.74%になったことを報告。
+有馬純一郎氏の名前で提出された大量保有報告書も変更報告書も、作成して提出したのは、有馬純一郎氏ではなく、堀江氏の部下である中村長也氏。事務連絡先になっているのは、3つの報告書の全てが、有馬純一郎氏ではなく、中村長也氏となっていること。
証取法の規定と、上記1.~6.の事実、ことに6.の事実とを照らし合わせてみますと奇妙なことが判明します。
それは、大量保有報告書にせよ、変更報告書にせよ、提出義務が課せられているのは、あくまでも大量保有者、つまり名義人である有馬純一郎氏であるにも拘らず、有馬氏本人が作成もしていなければ、提出もしていないことです。堀江氏と考えられる人物の指示によって、その作成の任にあたり、その上で提出までしたのは、堀江氏の部下であった中村長也氏でした。提出義務者は、オン・ザ・エッヂでもなければ、堀江貴文氏でもなく、ましてや堀江氏の使用人にすぎない中村長也氏でもないのです。
しかも、堀江氏自身の言葉によれば、有馬氏親子とは感情的なしこりがあったということですし、有馬氏は上場直後に堀江氏の懇請を一切無視して持株の全てを売却してしまい、株価暴落の一因をつくったというのです。このような情況のもとで、わざわざ有馬氏の代わりに、報告書を作成したり提出したりなどするものでしょうか。ペナルティがあるとすれば有馬氏が受けるだけのことですし、一言くらい注意することはあるとしても、わざわざ部下に命じて売却の詳しい状況を聞き出させて報告書を作成するなどという、手間のかかるお節介をするものでしょうか。上場直後の繁忙を極めていた時期ですから尚更です。会社も堀江氏個人もこれらの報告書については関係のないものですから、放っておけばいいだけの話です。
また、有馬氏の側からしても、売らないで欲しいという堀江氏の要請をはねのけて強引に売ってしまったというのであれば、堀江氏側に手数のかかる報告書の作成とか提出を依頼できるものでしょうか。更には、堀江氏の側から報告書を代わりに出してやる、と言ってきたとしても、堀江氏以上に感情的なしこりがあったと考えられる有馬氏が、売却の詳しい状況を進んで明らかにしようとするものでしょうか。仮に、960株の全てが本当に有馬氏のものであったとすれば、それこそ余計なお世話であり、放っといてくれ、ということになるでしょう。
―― ―― ―― ―― ――
ここで一句。
(“アラサー アラフォー アラカンと 言葉だけでも 若返り”)
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