100年に1度のチャンス -23
- 2009.03.24
- 山根治blog
そこで日本を代表する優良企業とされてきたトヨタ自動車の真実の姿を炙(あぶ)り出してみることにしました。
例によって、過去5年分の有価証券報告書をネットから引っ張り出してザッとナナメ読みしてみました。ナナメ読みというのは、有価証券報告書の要点だけを拾い読みすることで、一期分(トヨタの平成20年3月期であればA4版で168ページです)について10分もあれば十分です。5期分で1時間弱。尚、このように有価証券報告書にスンナリ入っていけるのは、まさにEDIUNETの手助けがあるからです。EDIUNETを使い慣れるだけで、簿記会計などそれほど知らなくとも、その気にさえなれば誰でも、会社の正確な状態が容易に把握できるのです。しかも、日本だけでなくアメリカで上場されている会社(合せて、8,845社。EDIUNET.COM)についても同様です。EDIUNETを開発してから3年、多くの改良を重ねてようやく実務に役立つまでになりました。
その結果判明したのは、
という予想外の事実でした。これは昨今急激に業績が悪化したトヨタ自動車に対する私の判断ではありません。あくまでも、史上最高の26兆円もの売上げと2兆6,000億円の利益を計上し、12兆円の内部留保を誇った、1年前の平成20年3月期のトヨタ自動車に対する判断です。私が、トヨタ自動車を優良な会社ではないと判断したのは、優良とされてきた財務内容自体に大きな欠陥があっただけでなく、収益基盤が極めて弱いことが判明したからです。
財務内容の欠陥とは何か。ズバリ言えば、12兆円とされる内部留保(純資産)がいわば虫食い状態になっており、実体がほとんどないという事実です。私の計算では12兆円の純資産のうちの90%以上の11兆円がフィクションの類(たぐい)のもので、経営的に見た純資産として残るのはせいぜい1兆円だけでした。しかも、その1兆円にしてもキャッシュとか売掛金のような当座資産の形で残っているのではなく、建物とか機械装置、あるいは投資資産のような固定資産として残っているという有様で、すぐにキャッシュになるものではないのです。つまり、トヨタ自動車の12兆円の内部留保は、絵に画いた餅、あるいは御伽噺(おとぎばなし)に類(るい)するものだったのです。制度会計の落し穴といったところでしょうか。
日本経済を牽引(けんいん)し、稼ぎ頭(がしら)と目され、抜群の財務内容を誇ってきたと一般に思われてきたトヨタ自動車。実のところ、配当の大盤振舞いをしたり(この5年間で1兆3,100億円)、自己株式を買いまくったり(この5年間で1兆3,600億円)、あるいは身の丈(たけ)以上の投資に明け暮れて(この5年間で16兆6,300億円)、気がついてみたら手許(てもと)のキャッシュが乏しくなっていただけでなく、損益分岐点(利益がゼロになる売上高のことです)が極めて高い水準にまで上昇しており(21兆円から22兆円と推計)、収益基盤が脆弱(ぜいじゃく)になっていたということです。つまり、トヨタ自動車は一年以上も前から借入金に頼らなければやっていけないようになっており、お金のやりくりに大童(おおわらわ)であったことに加えて、極めて脆(もろ)い収益構造をかかえていたことが、公表されている財務諸表から読みとれるのです。その結果、平成20年3月末時点の有利子負債は、実に12兆2,000億円に達しており、まさに借金漬けといった有様です。トヨタ自動車は子会社530社、関連会社234社をかかえ、グループ全体として30万人以上の社員をかかえている大企業(平成20年3月31日現在)ではありますが、経営破綻の瀬戸際にある一般の中小企業と変るところはないのです。
***(付記)
「トヨタ・ショック」(講談社)と題した本が、緊急出版と銘打って最近上梓(じょうし)されました。それなりの取材を行ってはいるようですが、トヨタの業績悪化の本当の原因に触れることなく、経営者の責任としては結果責任を挙げるだけにとどまっています。数多く出版されているトヨタ礼讃本、つまり「トヨタ・ヨイショ本」の一つと言っていいでしょう。
トヨタの経営悪化の真の原因は、モノづくりの基本をなおざりにして目先の金儲けに走ったことですが、さらに言えば、バブル需要を読み違えたこと(むしろ、当事者としてバブル需要を創り出したこと)、過大な投資、株主への過大な配慮、つまり、この10年来のトヨタ経営陣の経営の失敗にあります。とりわけ、この5年来のズサンな財務戦略はオソマツそのものです。
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ここで一句。
(読み・書き・ソロバンができて、その上能筆であれば最高の美人では?)
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