粉飾された2兆円 -15
- 2008.07.29
- 山根治blog
前回の議論を踏まえた上で、次に、大橋川改修事業の経済効果を推計してみることにいたします。
明治初年以来最大の洪水は、昭和47年7月のものであったこと、大橋川改修事業の前提となっている150年に一度の確率で起る大洪水は、2日間雨量でおおむねその10%増の399mmとされていることについては、すでに度々述べてきたところです。この昭和47年7月の大洪水による松江市の水害被害額は89億円(「水害統計」建設省)です。水害被害額デフレーター(『マニュアル』P.105~P.106)によって平成16年ベースに補正いたしますと、
-89億円×2.227倍=約200億円
となります。
以下、3つの便益、つまり、「被害軽減額」(B-1)、「年便益」(B-2)及び「総便益」(B-3)の順に推計していきますが、推計の考え方は、斐伊川水系全体で用いた考え方と同様といたします(“粉飾された2兆円-12”参照のこと)。
まず、「被害軽減額」(B-1)。
-200億円×5倍=1,000億円
次に、「年便益」(B-2)。
-1,000億円×0.01=10億円
最後に、「総便益」(B-3)。
-215億円(「DCF法の計算式」より)
となり、これが大橋川改修事業に対応する「経済効果」ということになります。
ちなみに、この215億円の経済効果は、あくまでもダムと放水路の工事をしないときのものです。この2つの事業は、事業の大半が終っており間もなく完成する見込ですので、ダムと放水路が完成した場合にはどうなるのか、次に考えを進めていくことにいたします。
国交省は、「平成18年7月豪雨における松江(大橋川)の水位シミュレーション」の結果を公表しています(平成19年8月23日)。このシミュレーションでは、仮にダムと放水路だけの工事で終えて、大橋川改修工事をしない場合には、松江の水位が52cm下がることが示されています。このことは、平成18年7月規模の洪水であれば、大橋川については今のまま何もしなくとも松江市街地は全く浸水被害を受けないことを意味しています。平成19年に8億5千万円かけて実施された堤防嵩上(かさあ)げ工事で十分にカバーされているからです。
国交省が大橋川改修工事をしない場合のシミュレーションを公表しているのは、この平成18年7月の洪水のときだけで、150年に一度の大洪水のシミュレーションはもとより、昭和47年7月大洪水時のシミュレーションについても公表していません。従ってここでは大雑把に推計するしか方法がありません。以下、ダムと放水路が完成することによって、150年に一度とされる大洪水の規模がワンランク緩和され、昭和47年7月の洪水並の規模になるものと仮定して推計してみることにいたします。
昭和47年7月の松江市の洪水被害は、平成16年ベースでみて、
-200億円
でした。
先に示した仮定によれば、この200億円が、ダムと放水路工事だけで終り、大橋川改修工事をしない場合の「被害軽減額」(B-1)に相当するものとなります。
これをもとに「年便益」(B-2)を計算いたしますと、
-2億円(=200億円×0.01)
となり、更に、「総便益」(B-3)は、
-43億円(「DCF法の計算式」より)
となります。
ここで、大橋川改修事業は、30年前の見積りで270億円とされていますので、B/C比率は、
-43億円(B)÷270億円(C)=0.16
となり、基準値である1を大幅に下回ることになります。
この270億円にしても、30年前の積算ですし、しかも、平成16年12月に公表された「大橋川改修の具体的内容」によりますと、工事量が大幅に増大していることは歴然としています。これらに加えて馬の鼻先にニンジンをぶらさげるように松江市に対して街づくりの予算を大盤振舞いするというのですから、現時点での見積額は270億円を上回ることは確実です。私達地域住民が、現時点での工事見積額とその明細とを公表するようにいくら要請しても、国交省は何故か公表しようとはしません。仕方がありませんので、最低額で500億円、最高額で3,000億円と仮定して、それぞれのB/C比率を計算することにいたします。この3,000億円という目をむくような数字は、長い間島根県を食いものにしてきた一部勢力から漏れてきたものです。(“粉飾された2兆円-2”参照)。
+総費用(C)、500億円の場合http://粉飾された2兆円 -2、
B/C=43億円÷500億円=0.09
+総費用(C)、3,000億円の場合、
B/C=43億円÷3,000億円=0.01
いずれのケースでも、基準値1にはとうてい及ばないものです。
ちなみに、経済効果(総便益)が43億円ということは、B/C比率の基準値1に対応する総費用は、同額の43億円となりますので、費用対効果の点だけを判断基準とすれば、大橋川改修費用として使うことのできる限度額は、43億円ということになります。
以上をまとめてみますと、大橋川改修事業だけの経済効果(「総便益」B-3)は、
+ダムと放水路工事をしない場合は、
215億円 となり、
+ダムと放水路工事が行なわれて完成した場合は、
43億円 となります。
従って、これらの推計値をもとに、総事業費を3つのケースに分けてそれぞれのB/C比率を計算してみますと次のようになります。
^^t
^cx” rowspan=”2^総便益(B)
^cx” colspan=”3^総費用(C)
^^
^cx^270億円
^cx^500億円
^cx^3,000億円
^^
^1.215億円
^rr^0.80
^rr^0.43
^rr^0.07
^^
^2.43億円
^rr^0.16
^rr^0.09
^rr^0.01
^^/
上の表で明らかなように、いずれの場合も基準値である1を下回っています。とりわけダムと放水路が完成した場合(2.の総便益43億円のケース)については、いずれの総費用(C)であっても、0.16、0.09、0.01と、基準値をはるかに下回り、犯罪的水準にあることが分ります。
―― ―― ―― ―― ――
ここで一句。
(実年齢より2歳ほど下に答えると、何故か男でも女でもたいていは不機嫌になります。)
***<今の松江> (平成20年6月11日撮影)
^^t
^cx^事務所の川端(東本町5丁目)
^cx^事務所の川端(東本町5丁目)
^^
^<%image(20080729-405.jpg|320|240|事務所の川端(東本町5丁目))%>
^<%image(20080729-407.jpg|320|240|事務所の川端(東本町5丁目))%>
^^
^cx^事務所の川端(東本町5丁目)
^cx^事務所の川端(東本町5丁目)
^^
^<%image(20080729-408.jpg|320|240|事務所の川端(東本町5丁目))%>
^<%image(20080729-211.jpg|320|240|事務所の川端(東本町5丁目))%>
^^/
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