170 続・いじめの構図 -14

****その14)

 登録申請をしてから2ヶ月後の平成18年12月12日、中国税理士会はいじめの追い打ちをかけてきた。

  1. 税理士登録遅延承諾書の提出、
  2. 税理士登録申請書等の修正、
  3. 添付書類の提出、

をせよと言ってきたのである。

1.は、登録が三ヶ月を過ぎても完了せず、遅れる見込みなので、遅れても一切の異議・苦情を申し立てないとする念書を提出せよということであり、
 2.は、正副5通ずつ提出した登録申請書と履歴書のうち、それぞれ1通ずつが返却され、指示通りに修正した上で再提出せよということであり、
 3.は、添付書類の追加であり、私が理事長をしている財団法人島根総合研究所に関して、所定の添付書類(「続・いじめの構図-9」で言及した、在職証明書以下、6つの書類)を追加して提出せよということである。

 2.と3.については従前の嫌がらせの延長であるから言われるがままに従えばいいことだ。しかし、1.については単なる嫌がらせの延長ではない。性格を全く異にするものだ。はいそうですか、とばかりに応ずることができるものではない。
 税理士法は、税理士という職業集団のギルド的な利益を見返りにして、税理士を国家統制のワク内にキッチリとはめ込むように仕組まれているもので、納税者の視点を欠いている欠陥法であることは、既に述べたところである。昭和55年の大改正以降、税理士法の上では税理士は国税当局の下請け的存在に甘んぜざるを得なくなり、現在に至っている。納税者のための税理士ではなく、徴税当局のための税理士ということだ。

 日本国憲法は、税に関する2つの異なった規定を持っている。
+国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ(憲法30条)。
+あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする(憲法84条)。
 1.は、国民の納税義務を定めたものであり、2.は、国が国民から税を徴収するためには、法律によるべしとする、租税法律主義を定めたものである。1.は国民の義務であり、2.は国家の義務である。
 現行の税理士法は、北野弘久博士の指摘されるように、税理士のための職業立法としての色合いが濃く、納税者の権利立法としての色合いが欠けている。上記の関連において言えば、1.の国民の義務である納税義務に専ら傾いており、2.の国家の義務、つまり、国民の権利がなおざりにされているのである。

 このような性格を持っている現行の税理士法は、憲法上の観点からすれば明らかに欠陥法である。しかし、いくら欠陥法であっても、税理士を監督する立場の国税当局とその下請組織である税理士会が好き勝手な振舞いができるようにはなっていない。税理士の生殺与奪の権限を持っているといっても、恣意的な行使はできないのである。一定の歯止めがかけられていることについては既に述べたところである(いじめの構図-16)。登録事務に関して、いくらいじめ抜いたとしても、税理士会がジタバタできるのは、申請してから三ヶ月が限度ということだ。

 中国税理士会が念書のヒナ型として送付してきたのは、次のような文面であった。同一文面のものを日本税理士会連合会の会長宛と中国税理士会の会長宛に提出せよというのである。当然のことながら、このようなものを私が提出するはずがない。ここに、送られてきたヒナ型をそのまま掲示する。

税理士登録遅延承諾書
平成  年  月  日  

日本税理士会連合会会長 殿

住所               .
氏名             (印)

 私は、平成  年  月  日付で以って税理士登録を申請しておりますが登録に関する調査のため3ヶ月を経過しても全く異議がなく、一切の苦情等申し立てをいたしません。
 なお、登録調査の継続をお願い申し上げます。
 ここに、後日の証として本書を提出いたします。

 上記のような承諾書の意味するところは何か。税理士法第24条の二、第2項に定められた権利、つまり、三ヶ月を過ぎても税理士会が登録しようとしないときには、行政不服審査法による審査請求をすることができるとする権利を自ら放棄することだ。さきに述べたような、執拗になされた申請書の自発的取下げ要求といい、このたびの税理士法第24条に定められた権利の放棄要求といい、次から次へと法の趣旨の裏をかくことを平気で繰り出してくるものだ。これまでは、このような乱暴狼藉ともいえる暴挙が大手を振ってまかり通ってきたのであろうが、少しばかり臍(へそ)が曲っている私には通用しない。
 このような承諾書を書いたとしても、果して法的に有効であるかどうかは定かではない。仮に有効でないとしても、この承諾書を盾にして、税理士会としては一年でも二年でも登録を引き延す魂胆であろう。見え透いたサル知恵である。執行猶予の3年間だけでも税理士業務ができなくて息切れ寸前であったのに、この上、一年も二年も登録ができないとなると、事実上、会計事務所の閉鎖を意味する。国税当局の意を受けた税理士会側の、見え透いた姑息な陰謀であり、そのようなゴマカシにやすやすと乗せられるほど私はお人好しではない。

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