165 続・いじめの構図 -9
- 2007.04.10
- 引かれ者の小唄
****その9)
訂正に夕方の6時過ぎまでかかったものの、なんとかその日のうちに登録申請書が受理された。添付書類等の枚数は、実に370枚。同時期に行った、公認会計士の登録申請に添えた書類等の枚数が16枚であったから、ナント23倍の量である。量が多くなった最大の要因は、私が役員をしている会社等の全てについて、次のような書類を要求されたからだ。
+在職証明書
+登記簿謄本(原本)
+定款(写し)
+営業(決算)報告書のコピー(直近2年分、役員報酬の明細書添付)
+業務執行に関する誓約書
+承諾書
私の場合、財団法人とか宗教法人あるいは上場会社を含めると、該当するのが11もあった。その全てについて、上記の1.~6.の書類を取り寄せたのであるから、枚数が多くなったのである。このような書類が、税理士の登録申請に何故必要なのか、全くもって理解に苦しむところである。勿論、法令で明示されている書類ではない。税理士会が勝手な取り決めをして、徴求しているものだ。ちなみに、公認会計士の登録に関しては、このような訳の分らない書類の添付など必要とされてはいない。当然のことである。
前回の詳細すぎる履歴書といい、上記のような添付趣旨の判然としない書類といい、有資格者であってもなんとか難クセをつけて、できるだけ登録を阻止しようとする税理士会側の思惑が透けて見えるようだ。法律によって独占業務とされている、税理士業という“聖域”をギルド的に守り抜くと共に、監督官庁である国税庁の意に副わない異分子を排除するためであろうか。
私はかねてから税理士業務の全てを独占業務とし、一般の人を排除することに疑念を抱いていた。日本国憲法に定める納税義務を履行するのに、何故お金を払ってまでする必要があるのか、というのが基本的視座であり、加えて、その納税手続きの代行を一部の者(つまり税理士)に限定しなければならない合理的な理由が見い出せないからだ。納税者の視点がスッポリと欠落している税理士法は、これまた憲法に定められている納税者の権利をないがしろにするものであり、結果的に国民に害悪を与えるものではないか。税理士とは何なのか、日本の中にあって一体いかなる存在であるべきなのか、改めてそのレーゾン・デートル(存在理由)が問い直されるべきである。私の税理士再登録が完了した現在、このような思いはますます強くなっている。一刻も早く、イギリスとかアメリカのように、納税手続きは資格など関係なく誰でもできるようにし、独占業務を税務代理のみに限定すべきではないか。その上で、税務署の下請的な存在に甘んじざるを得ないような、現在の税理士の脆弱(ぜいじゃく)な立場を抜本的に改め、日本国憲法が要請している納税者の権利が名実共に守られるように、“税金の弁護士”(Tax Attorney)としての確固たる立場を明確にすべきである。税法学の泰斗(たいと)、北野弘久博士がかねてから主張されているように、
からだ。
ただ、当面の間少なくとも、法律上はあいまいになっているものの、実務の上では無償独占性(無料で税金の相談をしたり申告書を作成したりすることも税理士の独占業務とし、一般人に禁じられていること)が大手を振ってまかり通っている現状を改め、即刻、税理士法の法文上、「有償」の文言を入れるべく法改正すべきであろう。弁護士法とか公認会計士法には「有償」の文言が入っており、それぞれ無償の行為を罰する規定はないのに対して、税理士法だけひそかに削られているのは、国税当局の陰謀としか考えられない。世界広しといえども、納税に絡む仕事に関して、無償独占性がまかり通っているのは日本だけだ。現在の税理士の半分を占める税務署OBの食い扶持(ぶち)を確保するために、国税庁が仕組んだ仕掛けであるかもしれないし、更に言えば、税理士の監督官庁である国税庁が、無償独占を含んだ独占業務規定をテコとして、管理下に置いている税理士を意のままに支配するための小道具であるかもしれない。法文上は明確にしないであいまいにしておき、税理士法の施行運用においては、当局の意に副わない税理士を、強制加入となっている税理士会から村八分的に排除したが最後、“ニセ税理士”摘発というゴマカシの大義名分を振りかざして、二度と税理士業界に復帰させようとしない現状は、先に述べた税務書類の恣意的な拡大解釈と共に、税務行政の横暴性と恣意性を象徴するものだ。私が、“続・いじめの構図 -5”で指摘した、「税理士法の中に組み込まれているカラクリ」の一端が、この無償独占性なのである。税理士の口を封じて当局の意のままに操り、納税者の権利を阻害している、いわば、税務行政に巣食っているガンである。
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