悪徳会計屋の経済事件ノートvol.7

2005年01月13日 第7号 発行部数:374部

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悪徳会計屋の経済事件ノート

なぜ上場会社社長は国税局ロビーで壮絶なる自殺を選んだのか。
国税局OB税理士が納税者を食いものにする手口とは。
税務署とマスコミから悪徳会計士の烙印を押された
会計のプロが税金法律金融事件の深層に迫る。

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山根治(やまね・おさむ)  昭和17年(1942年)7月 生まれ
株式会社フォレスト・コンサルタンツ 主任コンサルタント
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●ハニックス工業事件の真相

「ハニックス工業 事件の真相 7」より続く
http://www.mz-style.com/item/204

1. マルサの告発

東京国税局に対する疑念が払拭できなくなった私は、当時脱税と
していかなる告発がなされたのか、改めて吟味してみることにした。

経済記事に関して的確な報道をすることで定評のある日本経済新
聞は、社会面で、『自社株売却、32億所得隠し、ハニックス工業
90年店頭公開時』との見出しを揚げ、 ―

『 国税当局や関係者によると、ハニックス工業は88年ごろから株
式の店頭公開に向けて第三者割当増資や株式分割に踏み切り、大量
の新株を発行。役員ら幹部七人の名義で株式を保有していた。

90年7月27日に同社が株式を店頭公開すると、公募価格8千
390円だった株価は一気に約二倍の1万6,600円にはね上がっ
た。同社は幹部七人のうち四人の保有株について、公開当日に15
万2千株、その約四ヵ月後に6万1千株の計21万3千株を売却。
32億円を上回る売却益を得たが、大半が広川社長が管理している
銀行口座に流れた。この売却益は本来法人所得となるべきなのに、
同社は名義を貸した役員らに個人所得として申告させた、というの
が国税当局の認定だ。

同社は、名義を個人に装うことで、商法が事実上禁止している自
社株の保有、売買を事実上実現するのがねらいだったとみられる。

幹部七人のうち残る三人の株式は現在も売却しないまま持ってい
ると言われる。また、株式売却益を法人所得として申告すると、当
時の法人税率40%が適用されたが、個人所得であれば、申告分離
課税方式で20%で済んだことも、個人所得を装う動機になったと
みられる。』

― と詳細に記述している。

同紙は更に、ハニックス工業社長のコメントを次のように載せて
いる、 ―

『 今回の告発についてH社長は「店頭公開当日は見込み以上に買い
が入って株価がつり上がり、このままだと大蔵省の規制で売買停止
にもなりかねない状況だったので、役員から借りた株を冷やし玉と
して放出した」と説明している。』(同紙、平成5年5月26日付)

同紙による国税局の告発の内容を要約すると、 ―

(一)ハニックス工業は店頭登録以前に、自社株を役員ら幹部七人の
個人名義で保有していた。

(二)そのうち、四人の名義になっている自社株を、店頭登録後、合
計で21万3千株売却した。

(三)この売却益は32億円を上まわるものであったが、会社は法人
の利益として計上せず、名義を借りていた役員らに個人所得として
申告させた。

(四)株式の名義を個人に装ったのは、商法が禁止している自社株の
保有・売買を事実上実現するためであった。

(五)脱税の動機は、法人所得として申告するのと比較して、個人所
得であれば、半分の20%で済むことであった。

(六)国税が個人の所得ではなく、法人の所得であると認定したのは、
売却益の大半がH社長が管理している銀行口座に流れたからである。

一見もっともらしいことが述べられているものの、仔細に検討し
てみると、いくつかおかしいことがあることに気がついた。

(次号へ続く)

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