悪徳会計屋の経済事件ノートvol.5

2004年12月23日 第5号 発行部数:362部

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 悪徳会計屋の経済事件ノート



  なぜ上場会社社長は国税局ロビーで壮絶なる自殺を選んだのか。

   国税局OB税理士が納税者を食いものにする手口とは。

    税務署とマスコミから悪徳会計士の烙印を押された

     会計のプロが税金法律金融事件の深層に迫る。



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 山根治(やまね・おさむ)  昭和17年(1942年)7月 生まれ

 株式会社フォレスト・コンサルタンツ 主任コンサルタント

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【お知らせ】



  年内の発行は今回が最後となります。2005年は1月6日より

 発行いたします。よいお年をお迎えください。





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●ハニックス工業事件の真相



「ハニックス工業 事件の真相 5」より続く

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(5)倒産の真相についての疑念



  ハニックス工業の倒産の主たる原因は、一般に信じられてきたよ

 うに、果して会社の業績悪化と粉飾決算であったのか、会社に対す

 る東京国税局の脱税告発とその公表は、果して正当なものであった

 のか、社長の抗議の自決について国税当局は、果して責任が全くな

 いと言い切れるのか、 ― これらの疑念が、日が経つにつれて私の

 心の中に大きくふくらんできたのである。



  世間は、マルサの告発を何ら疑うことなく100%正しいものと

 受けとめた。しかし、その告発そのものが間違っていたとしたらど

 うなのか、私のケースのように、マルサが火のないところに煙を立

 てて罪を創り上げたものであったとしたらどうなのか、倒産の真相

 は全く異なったものになるであろう。

 

  冤罪で人生を棒にふった人は戦後だけでもかなりの数にのぼる。



  ただ一般に、冤罪が問題とされる場合に、殺人とか強盗殺人といっ

 た一般刑法上の罪のケースがほとんどであり、商法、証券取引法、

 公正取引法、あるいは税法等に規定する特殊刑法上の罪のケースは

 ほとんど見当たらない。

  とくに税法に規定する刑事罰である逋脱(脱税)の罪に関してい

 えば、冤罪の問題が表面化したのは現在まで皆無であった。

 

  その理由として考えられるのは、 ―



  第一に、脱税の嫌疑者としてマルサに告発され、被疑者として検

 察に取調べを受け、更に容疑者として検察に立件起訴された者が、

 たとえ脱税などしていない、自分は無実だ、といくら叫んでもその

 声が聞き届けられることが決してなかったことだ。



  こと、税法と企業会計の実務に関していえば、法曹三者といわれ

 る裁判官、検察官、弁護士がほとんど無知であることに加え、本来

 なら不正な法の執行に対しては常に批判的なチェック機能が期待さ

 れているマスコミも同様にそれらに無知であることから、マルサが

 ひとたび脱税の烙印を押せば、途中で何ら修正されることなく有罪

 の判決までエスカレーター式に流れていき、その全てのプロセスに

 対して、批判能力の欠如したマスコミは、当局の発表をそのまま正

 しいものとして世間に流しているのが現状である。このような中に

 あって、声をからして冤罪を叫んでも誰もとりあげようとはしない。



  先に引用した週刊新潮の記事(平成6年1月13日号)は、ハニッ

 クス工業と自決した社長に対しては同情しつつも、国税当局の告発

 自体は間違ってはいなかったという前提に立っている。同誌のワイ

 ド特集、「人間沈没」の中のこの記事は『東京国税局で割腹自殺し

 た社長の「脱税大義」』と題されており、盗っ人にも三分の理、と

 言わんばかりである。



  第二に、告発するマルサに対する誤った信頼感である。法曹三者

 のみならず、マスコミも、あるいは大多数の国民までもが、マルサ

 が脱税と認定して告発した以上、脱税は動かし難い事実として受け

 とめてしまう現実がある。



  国税庁が毎年出している「ザ・マルサ」と題するパンフレットは、

 「脱税は社会公共の敵!!」と位置づけ、「脱税を摘発するために

 国税査察官は日夜努力している」と記し、更に、「判決の状況」と

 して有罪判決の割合が百パーセント(平成4年3月発行のパンフレッ

 ト)であると胸を張り、国税が告発したら無罪になることはないと

 恫喝的にPRしている。



  このようなPRが効を奏していることもあって、マルサのいわば

 無謬神話が一般に信じられてきたのである。現在も、ハニックス工

 業が倒産した平成5年当時と、基本的に変っていない。





(次号へ続く)





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