西武鉄道 銀行の責任逃れ-その4

 

次に眼につくのが、ジャスダック上場を目指す大義名分として、8千人の一般株主の利益確保を挙げていることです。

 この「8千人の一般株主」とは一体誰のことでしょうか。

 平成16年3月期の有価証券報告書(訂正前のもの)の株主の所有者別状況によれば、;;;quote;株主の合計が8,099人、その内、

個人その他が7,825人;;;;となっていますので、小柳社長は、このうちのいずれかを念頭に「8千人」といっているのでしょう。

 この中には、株式数にして1億株強(全体の4分の1)、株主数にして1,200人ほどの個人借名株が入っているはずですので、まずこの8千人という数字そのものが疑問です。



 また「一般株主」とは何でしょうか。西武鉄道の発行済株式4億3千万株強の大半は、親会社のコクドをはじめとしたグループ各社が持っているものですので、「一般株主」ではありません。その他安定株主と称する銀行等の株主も又、「一般株主」ではない。少なくとも利益を保護すべき株主ではありません。

 以上のようないわば身内の株主が西武鉄道の場合90%を超えています。銀行等を身内に含めるのはおかしいのではないかという議論もあるでしょうが、西武鉄道の株価の高値維持に一役買っていたのは他ならぬ安定株主である取引銀行等ですし、何よりも貸金の回収の見込みもないのに無責任に貸し込んでいったのが取引銀行ですので、身内に含めても決しておかしくありません。



 平成16年3月末時点の浮動株は8.5%とされていますが、この中には借名株の一部が入っているはずですので、浮動株の実態は5%前後ではないでしょうか。株式数にして、せいぜい3千万株位と考えていいでしょう。

 この3千万株を持っている人達こそ、一般株主と言えるものですが、今の時点で果して保護の対象とすべき人達なのでしょうか。



 確かに、虚偽の事実が公表されるまでの一般株主は大きな損害を受けています。

 しかし、この損害については、公表前に市場を通さずに相対取引によって株を買わせられ、多額の損失を受けている70社前後の会社と同様のもので、西武鉄道グループが責任を負うべきものです。ジャスダック上場の大義名分として持ち出す筋合いではないでしょう。



 虚偽事実公表後に取得した人達も保護すべき一般株主と言えるでしょうか。この人達は、上場廃止になるおそれがあることを承知の上で買っているのですから、当然ながら利益保護の対象とはなりません。監理ポスト、ましてや整理ポストに入ってから後に取引している人達は、リスク覚悟の上でいわば丁半バクチをやっていると考えていいからです。



 このように考えてきますと、現時点における「一般株主」は仮にいるとしてもその利益を保護する必要は全くないばかりか、かえって保護などするとヘンなことになってしまいます。

 小柳社長が「8千人の一般株主の利益確保」と公言したのは、タメにする偽りの理由付けと言っていいでしょう。財務体質が健全であるとウソを言ってみたり、偽りの大義名分を立ててみたりと、どうも背後にいる存在(堤さんではありません)があれこれと細工をし、このようないいかげんなことを言わせているようです。眉間にシワをよせて憔悴しきった表情で記者会見している小柳さんが、気の毒に思えてきました。

 私が「銀行の責任逃れ-その1」で、“本当のところは、「銀行の利益確保(債権の回収)を最優先に」”ではないかと述べましたのは、以上のようなことを念頭に置いていたからでした。



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 ここで一句。;;;quote;“われわれを一般と呼ぶ芸能人”-成田、離らっくす(毎日新聞、平成16年11月20日号より);;;;(小泉総理ではありませんが、人生いろいろ、一般もいろいろ。)

 

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