前代未聞の猿芝居―⑳
- 2019.05.27
- 山根治blog
- A社の社長夫人、専務及び専務夫人の3人が逮捕されたのは、平成30年11月8日のことであった。
3人が逮捕された翌日、平成30年11月9日に勾留状が発行され、3人は松江刑務所に勾留されることになった。
3人が再逮捕されたのが平成30年11月28日。その翌日(平成30年11月29日)に再び勾留状が発行され、勾留が継続されることになった。2回にわたる社長夫人の勾留状の発行は、次の2人の裁判官によってなされている。即ち、
+逮捕の翌日(平成30年11月9日)の勾留状は、
松江地方裁判所 裁判官 木村理絵
+再逮捕の翌日(平成30年11月9日)の勾留状は、
松江簡易裁判所 裁判官 小林幹典によってそれぞれ発行されている。
この2つの勾留状、これまで筆者が述べてきたところと大きく食い違っている。極めていいかげんなシロモノだ。裁判官は何も考えずに、ただ単に検察官に言われるがままに勾留状を発行し、盲目判(めくらばん)を押したものと思われる。
何故か。何故勾留状がいいかげんなシロモノであると言えるのか。以下、その理由を述べる。社長夫人を身柄拘束した勾留状は、
「刑事訴訟法60条1項各号に定める事由」(注、勾留の要件のこと)として、
“下記の2,3号に当たる。
一 被疑者が定まった住居を有しない。
二 被疑者が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある。
三 被疑者が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある。”と記載する。
勾留状に引用されている刑事訴訟法60条1項は、被告人の勾留の要件を規定するものであるが、刑事訴訟法207条1項によって被疑者勾留にも準用される。
勾留の要件「裁判所(裁判官)は、被告人(被疑者)が罪を犯したことを疑うに足りる相当なる理由がある場合で、左の各号の一つにあたるときは、これを勾留することができる。
一 被告人(被疑者)が定まった住居を有しないとき。
二 被告人(被疑者)が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人(被疑者)が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
(括弧内は筆者。裁判所を裁判官と読み替え、被告人を被疑者と読み替える。)被疑者の身柄拘束を認定した勾留状は、刑事訴訟法60条1項の主文の
「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとき」については、勾留状記載の「被疑事実の要旨」によって認定し、更に、限定列挙されている3つの要件については、一号の住所不定の要件をはずし、
二号の罪証隠滅のおそれ、と
三号の逃亡のおそれに絞って認定している。
ところが本件の社長夫人については、すでに述べた(「前代未聞の猿芝居-⑭」)ように、
「調査協力をしなかったこと」が、逮捕の理由(要件)と身柄拘束(勾留)の理由(要件)とされているのである。
-
前の記事
前代未聞の猿芝居―⑱ 2019.05.23
-
次の記事
前代未聞の猿芝居―㉑ 2019.05.28