「誰が小沢一郎を殺すのか?」-⑩
- 2014.08.05
- 山根治blog
TKC全国会は一万人超の税理士集団だそうである。この団体、臆面もなく“中小企業のビジネスドクター”などと僭称(せんしょう。臣下でありながら武力をもって王を名乗ったり、実力がないのに世界一だと勝手に言ったりすること。-新明解国語辞典)して憚(はばか)らない。
もともとTKCは、昭和41年に栃木県計算センター、つまり記帳代行業務を行う会社としてスタートしている。記帳代行というのは、中小零細企業の帳簿作りの下請作業(アウトソーシング)のことだ。税理士本来の業務ではなく、誰でも自由にできる仕事である。
実は会計事務所にとって記帳代行の仕事は悩ましいものだ。クライアントは、面倒な帳簿の作成を会計事務所に丸投げし、経営コストを浮かせようとするからだ。会計事務所としてもサービスの一環としてクライアントの要望にこたえようとする。記帳代行をしないとクライアントの獲得が難しくなるからだ。
私の会計事務所も開設当初は記帳代行を引き受けてきたが、しばらくしてから方針を切り換え、原則として記帳代行はしないことにした。記帳代行の仕事が増えるにつれて、本来の会計士あるいは税理士業務に支障がでるようになったからだ。
ただ、飲食業とか開業医のような現金収支が主体の業種については、独自の日記帳を考案して対応した。取引が単純であり、取引の分量がさほど多くないからだ。この場合、日記帳はクライアントのほうで日々記入してもらい、あとは事務所のコンピュータに打ち込むことによって記帳が完了するように工夫した。
このようなやり方だと、クライアント自らが記帳するのとほとんど変わることはなく、経営の実態を経営者自らが自分で適時に把握することができる。会計事務所の事務量もさほどのものではなく、月々の顧問料の他に記帳代行料を別途徴収する必要がなくなった。
もともと事業経営をする以上、自ら帳簿を作成し、日々刻々と変化していく事業の実態を把握することは必要不可欠である。他人まかせにしていいものではない。零細企業であろうと大企業であろうと変るところはない。記帳は自らすべきであるということだ。
この観点からすれば、記帳代行(アウトソーシング)は、よほどのことがない限り、避けるべき筋合いのものだ。止むをえず、アウトソーシング(記帳代行)に頼るとしても、それは臨時的・緊急避難的なものに限るべきであろう。
TKCは、記帳代行からスタートし、今では行政との二人三脚の仕事まで手がけている。つまり、税務署をはじめ、その他の行政機関の下請会社というのが企業実態だ。
直近の決算(平成25年9月期)によれば次の通りである。
^^t
^cx^項目
^cx^金額
^cx^会計事務所事業
^cx^地方公共団体事業
^^
^売上高
^rr^531億円
^rr^390億円(73%)
^rr^108億円(20%)
^^
^営業利益
^rr^59億円
^rr^53億円(90%)
^rr^4億円( 8%)
^^/ (TKC、第47期有価証券報告書より。連結ベース。)
上記で分かるように、売上高531億円の7割強を占める会計事務所事業(アウトソーシング)が営業利益の実に9割を叩き出している。行政の下請事業(地方公共団体事業)は、売上高の2割を占めるものの、利益貢献度は8%にすぎない。
つまりTKCは、記帳代行で利益の大半を稼ぎ出し、行政機関の下請で利益のごく一部を補っている会社であるということだ。
TKCの収益性については次の通り抜群である。
^^t
^cx^項目
^cx^金額
^cx^対売上高比率
^^
^売上高
^rr^531億円
^rr^-
^^
^営業利益
^rr^59億円
^rr^11%
^^
^経常利益
^rr^61億円
^rr^11%
^^
^当期純利益
^rr^36億円
^rr^6%
^^
^包括利益
^rr^46億円
^rr^8%
^^/ (TKC、第47期有価証券報告書より。連結ベース。)
従業員が2500人を超える(連結ベース)上場企業で、これだけの利益を安定的に計上できる企業はさほど多くはない。
次にTKCの財務内容はどうか。
まず目につくのは、内部留保(純資産)が極めて多いことだ。負債純資産合計額727億円に対して、実に78%(574億円)もの純資産を有している。その上、借入金がゼロである。
資産に目を転じてみると、これまた非の打ちようがない。資産合計額727億円のうちの、半分が現預金(現金及び預金226億円、長期預金140億円)だ。上場企業としては異常ともいえる資産構成である。
売掛債権73億円を含めて、不良資産とおぼしき資産は見当たらない。ピカピカの資産内容である。
このように、TKCの収益性、資産内容はともに抜群に良好である。これらの点に限っていえば、非の打ちどころのない優良企業だ。
しかし、TKCを一つの企業体として総合的に分析してみると全く異った結果となる。認知会計の観点からすると、きわめて脆弱(ぜいじゃく)な組織であるということだ。
何故か。
TKCはサービス業である。モノを売る会社ではない。顧客との間に信頼関係がないと存続することができない会社である。TKCと顧客であるTKC全国会の会員との信頼関係、更にはTKC全国会の会員とクライアント(納税者)との信頼関係だ。この信頼関係が崩れた場合、砂上の楼閣のようにTKCは一瞬にして崩壊する。
この二つの信頼関係が幻想にもとづくものであることは、前回指摘した通りである。幻(まぼろし)の信頼関係だ。
+税務当局に顔が利くという幻想。
+巡回監査についての幻想。
+経営指導についての幻想。
この三つの幻想にもとづくまぼろしの信頼関係である。この信頼関係、オウム真理教なるカルト集団が、麻原彰晃というカリスマ的な指導者のマインドコントロールによって、猪突盲進した姿と酷似する。
莫大な資金を集めてハルマゲドンに備えたカルト集団の教祖と、創業47期目にしてTKCをピカピカの金満会社に仕立て上げた飯塚毅氏とが私の中でピッタリと重なりあうのである。
国税と検察のインチキが白日のもとにさらされ、つれて日本の官僚制と司法制度が無様(ぶざま)な姿を(「誰が小沢一郎を殺すのか?」-①、「誰が小沢一郎を殺すのか?」-②、「誰が小沢一郎を殺すのか?」-③、「誰が小沢一郎を殺すのか?」-④、「誰が小沢一郎を殺すのか?」-⑤)露呈するに至った今、幻想を振りまいてきたTKC全国会の真の姿が明らかになった。TKCのビジネスモデルのバケの皮が剥(は)がれたのである。かつて『ホリエモンの錬金術』でとりあげたライブドアと同様に、実体のない幻のビジネスモデルであったということだ。
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ここで一句。
(化けそうな女(ひと)と暮してン十年、今じゃめでたい似た者夫婦。)
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