脱税は犯罪ではなかった-7
- 2014.01.28
- 山根治blog
事実上部外秘とされてきた税務調査マニュアル、-その要(かなめ)ともいうべきものが、このたび国税当局自身によって明らかにされた。長い間、実際の税務上の取り扱いと、税務裁判用に用いられてきた取り扱いとが異なっていたことは既に述べたところであるが、それが文書の形で明らかにされたのである。税務当局の二枚舌が白日のもとに曝されたということだ。
平成25年12月××日、東京国税局査察××部門のA主査とB査察官の二名が、相続税の犯則嫌疑者宅を訪れて、査察調査の結果説明と修正申告の意志確認を行なった。3枚の文書が交付され、査察官から説明を受けた旨を確認するために嫌疑者の署名捺印が求められた。
その際4人の相続人(犯則嫌疑者)に手渡された文書(控)は次の通り。
なお、
① 本日の査察調査の結果説明及び修正申告等の意思確認は、国税通則法74条の11第2項に規定する調査結果の説明及び同条第3項に規定する修正申告又は期限後申告の勧奨とは異なること
② 課税処分は、査察調査の結果を踏まえ、納税地を所轄する税務署長等が行うこと
③ 今後、所轄税務署等から、課税処分のための内部調査等を行う旨の連絡があること
④ 所轄税務署等が内部調査等を行った後、再度、所轄税務署等から国税通則法74条の11第2項に規定する調査結果の説明及び同条第3項に規定する修正申告又は期限後申告の勧奨が行われること
の内容についての説明を受けました。
平成 年 月 日
氏名 印 氏名 印
氏名 印 氏名 印
※参考 国税通則法
(調査の終了の際の手続)
第74条の11
第2項 国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする。
第3項 前項の規定による説明をする場合において、当該職員は、当該納税義務者に対し修正申告又は期限後申告を勧奨することができる。この場合において、当該調査の結果に関し当該納税義務者が納税申告書を提出した場合には不服申立てをすることはできないが更正の請求をすることはできる旨を説明するとともに、その旨を記載した書面を交付しなければならない。』
上記の文書に添付されていたのが「増差額の内訳(相続税)」と題した、申告財産に漏れていた「脱漏財産」の一覧表であった。
3枚目の文書は、贈与税に関するもので、贈与の漏れが具体的に指摘されていた。
4人の税務代理人であった私は、依頼人である犯則嫌疑者からファックスされてきた3枚の文書を見て眼を剥(む)いた。これまで数多くの査察調査に携わってきたが、私としては初めて目にする文書であったことに加え、そこに盛り込まれていた内容に驚いたのである。
税務代理人である私を排除してなされた説明と文書の交付であったために、その真意が不明であった。真意を確かめるために、直接に東京国税局に赴き、担当査察官に面会を求め、確認することにした。
その結果分かったことは次の通り。
+国税通則法が改正されたことに伴う納税者サービスの一環として行なうもので、法的根拠があるものではないこと。
+従来の査察調査で慣行的に行なってきたところを単に文書化したものであり、従来と何ら変わるものではないこと。
+このような取扱いは国税庁の内規によるものであり、全国の国税局に通達されていること。
+この内規は改正国税通則法の施行日(平成25年1月1日)より前に定められたものであり、最終的にこのような形になるまでには、何回か手直しがなされたこと。
以上が担当査察官による事情説明であった。
この3枚の公用文書、つっこみどころ満載のシロモノだ。詳細は別稿に譲るが、要は、この文書は、査察調査とそれに伴ってなされる課税処分が、国税通則法に違反していることを国税当局自らが認めたものであることだ。つまり、これまで長い間行なわれてきた査察調査が、更正処分の絶対的要件とされている「調査」に該当せず、そのために、処分権限のある税務署長の「調査」であるかのごとく偽装してきたことを国税当局自らが認めた文書、いわば国家組織による犯罪行為を自白した文書であるということだ。
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ここで一句。
(平和を目的とした戦争!? テロ撲滅のためのテロ!?)
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