日本神話のヘンシン-1
- 2013.06.25
- 山根治blog
日本の神話は、太古の昔から語り継がれてきたものであり、それをもとにして組み立てられている神道(しんとう)は、神ながらの道であるとされ、日本民族にとって万古不易(ばんこふえき。いつまでもかわらないこと-広辞苑)のものとされてきた。本当にそうであろうか。
日本神話、歴史の時間軸で見てみると、万古不易どころではない。その時々の社会情勢に応じて、自由に変化している。変幻自在である。鵼(ぬえ)のようなものといったらいいかもしれない。
出雲神話を中核とする日本の神話は、ザックリ言えばこれまで7回姿を変えている。七変化である。
最も素朴で原初的なものは、オホナモチとスクナヒコナの2柱の神が日本国を創ったとするものだ。出雲神話・日本神話の原型である。
「オホナモチ」「スクナヒコナ」は、日本の国土創成神としての神だ。オホナモチは、「所造天下大神(あめのしたつくらししおほかみ)大穴持命(おほなもちのみこと)」として出雲国風土記に度々登場する国土創成神だ。万葉集では、「オホナモチ・スクナヒコナの昔より」と素朴に唱われているペアの神である。出雲王家の末裔が一子相伝で伝承し信奉してきた「クナドの大神」に相当する。
北海道と沖縄を除く全国各地に、それぞれの地域を統治する首長がおり、王(おほ)と呼ばれていた。王は自らの部族の祖霊を祭る司祭であると同時に、部族をたばねる統治者でもあった。祭政一致である。
朝鮮半島を経由して中国大陸からやってきた出雲族は、「クナドの大神」を信奉していたとされる。道教由来の神である。
2回目は、日本国の統治が出雲族から大和族(日向族)に移った頃である。大王(おほきみ)である出雲族の首長が、大王の座を大和族の首長に譲り渡した西暦200年頃のことだ。記紀が伝える「国譲り」、つまり連合王国のトップが換ったのである。
各地の豪族は、独自の創世神話、つまり氏族の祖霊伝承をそれぞれ主張するようになった。これが2回目の変貌である。イザナギ・イザナミといった国土創成神、アマテラス、スサノオといった物語性豊かな神々が登場するのはこの頃からだ。
3回目は、律令制が施行され中央集権国家としての日本が成立した頃だ。連合国家の統治者である大王(おほきみ)が、天皇(すめらみこと)へと変わり、現人神(あらひとがみ)とされるようになった。
(万葉集4260番)
大伴御行(おほとものみゆき)の歌である。壬申の乱で天武側について功績を挙げ、後の大伴氏繁栄の基礎を築いたとされている人物だ。天武天皇のことを神であると称えてヨイショしている。
明治維新にあって明治天皇を神にまつり上げて利用し、その実、自分達の利益・栄達を図った維新の元勲と称するいかがわしい政治家とか、仏教を排斥して国家神道というこれまたいかがわしいカルトを創り上げて日本に君臨しようとした神職者と同じような存在だ。
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ここで一句。
(国民には何も与えてくれません。仲間うちで利益を分け合い、自分達が利益に与(あずか)るということです。)
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