マルサ(査察)は、今-⑫-東京国税局査察部、証拠捏造と恐喝・詐欺の現場から
- 2012.10.09
- 山根治blog
***11.修正申告の慫慂-(4)
私達が通されたのはマルサの取調室(「マルサ(査察)は、今-②」「マルサ(査察)は、今-③」参照)であった。査察官の尊大な応対については既に述べた。お上(かみ)意識丸出しの上からの目線の応対であった。
私達に提示されたのはA4の用紙4枚。修正申告の具体的な内容ではなく、要約したものであった。
-1枚目、代表者名義預金残高明細表
-2枚目、税務申告書、別表1、別表4、別表5の5年分の数字
-3枚目、別途利益内訳書
-4枚目、利益積立金内訳書
1枚目は、査察が簿外預金と称している嫌疑者名義の預金の集計表であり、過去5年間にわたって、各事業年度末現在高が示されているものであった。簿外預金の5期増加額は1億6,000万円。
2枚目~4枚目は、5年分の修正申告書が完成するデータが盛り込まれているものであった。
二人の査察官は、私達にこの4枚の用紙を渡しただけで説明を終えようとしている。つまり、過去5年間の追徴税額の計算までして、この通りに5年分の修正申告書を書けと言っているのである。押し付けである。
しかし、税務代理人としての私は、納得できる訳がない。
当然ともいえる私の要請に対して松井洋査察官は、
として、私の申し出を拒絶した。言う通りに修正申告に応ずれば告発を見送ると言っているのに、何をゴチャゴチャ言っているかと言わんばかりである。もちろん、このようなことを言われて、「ハイ、そうですか」と引き退がるほど私はヤワではない。なにせ当方、自分の脱税事件(「冤罪を創る人々」参照)で査察官や検察官と大ゲンカをして勝ち抜いてきた男だ。
しばらく押し問答が続いた後、松井洋主査が席を外して部屋から出ていった。上司である総括主査か統括官に相談するためのようであった。
松井洋が席に戻ってきた。仏頂面をしている。
などとブツクサ言いながら、野間田査察官に指示をして、パソコンから明細を打ち出させ、私達に渡してくれた。
+“簿外預金”の明細表、1枚
+売上除外額推計表、1枚
+売上原価率検討表、1枚
+架空仕入高明細書、5枚
+架空給与手当明細書、3枚
以上の11枚が新たに開示されたものだ。
当初手渡された4枚と追加分の11枚の、合わせて15枚をもとにして、修正申告の慫慂の内容を聴くことになった。
二人の査察官から説明を受けながら、不明なことについては質問を繰り返した。40分位で概ね査察が言っていることの全容を把握することができた。
査察官の説明は案の定、嘘・偽り、推測のオンパレードであったが、このたびは査察とは一切の議論はせずに、査察の言い分を聞き取ることに専念した。嫌疑者が査察に脅え切っており、私が、提示された内容について異議を申し立てた場合には話し合いが撤回され、直ちに告発されてしまうのではないかと嫌疑者が心配していたからだ。嫌疑者が私に依頼してきた最大の目的は、告発されないことを確認することであって、納税額の多寡は二の次だったのである。
5年分の修正申告を条件に、告発を見送るという言質(げんち)を二人の査察官から直接得たばかりではない。手渡された15枚の開示資料の中に告発の見送りが明確に記されていたのである。簿外預金と言いながらも、社長貸付金扱いに変更され、役員賞与認定(「マルサ(査察)は、今-⑩」参照)が外されており、当初査察がふっかけていた税額の1億3千万円が半分の6千万円程になっていたからだ。予め想定(「マルサ(査察)は、今-⑩」参照)していた通りであった。
私は、査察官に対して、修正申告の慫慂の内容を嫌疑者に納得いくように話をして、できるだけ早く修正申告に応ずることにしたい旨申し述べ、マルサの取調室を後にした。
―― ―― ―― ―― ――
ここで一句。
“あの孔子生きてた国と違う国” -京都、米高
(礼節の教えがおかしくなった原因はお金。“花見酒の経済”(「100年に1度のチャンス -号外4」参照)がもたらしたアブク銭。その大半が一握りの為政者に集中する一方で、13億の民がとり残されている、極端な不公平感の拡大。世界の歴史が示しているのは革命前夜の様相。)
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