歴史的文化財の破壊と談合疑惑 -5
- 2008.09.30
- 山根治blog
このところ、考古学とか歴史学に携(たずさ)わる専門家だけでなく、一般市民の多くから「家老屋敷遺跡」を壊すべきではないという声が強くなってきました。キチンとした調査と学術的な評価をして保存した上で、松江城と一体となった地元の宝として、教育と観光とまちづくりに役立てるべきではないかという訳です。
そこで浮上してきたのが、なんとも姑息(こそく。その場のがれ、ということです)な妥協案でした。
なお、庭園遺構を含め、今回検出された遺構については、工事施工に際してあらかじめ保護盛土を設けるなど、極力地下保存できるように配慮することとしたい。」
(平成20年9月5日付の、島根県教育委員会文化財課長ト部吉博氏に宛てた、松江市教育委員会文化財課長吉岡弘行氏の事務連絡)
要するに、あくまで歴史資料館の建設は強行することを前提として、遺跡のほとんどは壊すものの、一部についてだけ盛土をしてその上に建物を建てるということです。その盛土の厚さについて、20cm(松江市の意見)にするのか、40cm(島根県の意見)にするのか押し問答しているというのですから、茶番劇以外のなにものでもありません。
そもそも、40億円もかけて新しいハコ物(松江市歴史資料館)を作る必要があるのでしょうか。松江に住んでいると分るのですが、公共のハコ物だらけ、しかも、必ずしも十分に活用されているとはいえないようなハコ物のオン・パレードです。私のみるところ、20万人規模の都市として、あるいは70万人規模の県の県庁所在地として、多すぎる感じがいたします。
新しく建設されようとしている歴史資料館について考えてみますと、類似の公共施設が松江市内に数多く存在します。たとえば、
+島根県立八雲立つ風土記の丘:大庭町 http://www.yakumotatu-fudokinooka.jp/
+出雲かんべの里:大庭町 http://kanbenosato.com/
+八雲郷土文化保存伝習施設(八雲郷土文化会館):八雲町
+松江市立出雲玉作資料館:玉湯町 http://www.town.tamayu.shimane.jp/shiryoukan/
+モニュメント・ミュージアム来待ストーン:宍道町 http://www.kimachistone.com/
+松江市鹿島歴史民俗資料館:鹿島町 http://www.city.matsue.shimane.jp/kankou/area/kashima/siryokan/
+興雲閣(松江郷土館):殿町
+旧.島根県立博物館:殿町 http://www2.pref.shimane.jp/haku/
+松江市宍道蒐古館:宍道町
+島根県埋蔵文化財調査センター:打出町 http://www.pref.shimane.lg.jp/maizobunkazai/
などがあり、中でも、8.の旧.島根県立博物館は現在竹島資料室となっているようですが、ほとんど活用されてはいないようです。仮に、お城の近くにどうしても松江市の歴史資料館が必要であるならば、県との話し合いによって、事実上遊休状態となっているこの建物を活用すれば済むことです。
現在、松江市が歴史資料館として使っている、お城の中の興雲閣を補修して引き続き活用し、メインの資料館を旧.島根県立博物館に持ってくるなどの工夫をすれば、教育、観光、まちづくりという目的は、十分に達成されるはずです。
松江市が建設資金としてアテにしている40億円の公金は、原発交付金といわれるものです。国民の電気料金に上乗せされて強制的に徴収されているものですので、一般の税金と何ら変るものではありません。
使うことのできるお金が、目の前にぶら下っているから使わないテはない、使わないと損だ、といったさもしい考えが、今の松江市長をはじめ多くの市議会議員にしみついているようですが、間違っています。
必ずしも必要ではないハコ物に公金を使うべきではないのです。島根原発にかかる交付金だからといって、松江市が何にでも勝手に使っていい筋合いのものではありません。まして、巷間囁かれているように、来年4月に行なわれる市長選挙目当といった市長の個人的な思惑とか、あるいは、これまで詳しく記してきた建築主体工事にからむ談合疑惑が、仮に事実であるならばそれぞれが犯罪行為とも言えるものですので言語道断です。更には、これらのことが事実であるかどうか以前の問題として、市民から公正な市政を委ねられている公人としては、いやしくも疑われるようなことをすべきではありません。李下に冠を正さず、です。
松江市だけでなく全国的にこのようなムダな事業を一つずつ点検して排除していけば、現在の日本が置かれている財政赤字の問題を始め、行きあたりバッタリの小泉改革によってズタズタにされた医療とか年金の問題などは自ずから解決に向うことでしょう。
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ここで一句。
(経済オンチ、数字オンチの取り巻き連中を従えて勝手なことをやってのけたノーテンキな天下人も、このたびの総裁選の出来レースでは影が薄かったようで。ゴマカシの花の命は短くて。)
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