粉飾された2兆円 -号外

 国土交通省がやっている公共事業については、5年に一度再評価をすることになっています。しかも、その際に、事業の投資効果の見直しが求められており、“原則として再評価を実施する全事業について費用対効果分析を実施するものとする。”(『国土交通省所管公共事業の再評価実施要領』第5、3.①-2)とされています。

 斐伊川水系の治水事業について、「中国地方整備局事業評価監視委員会」なるものが開かれたのが、平成15年6月23日。この時から5年の歳月が経過していますので、そろそろ再評価がなされるはずだと思っていたところ、先日、平成20年7月28日にこの評価監視委員会が開かれたそうです。(山陰中央新報、平成20年7月29日付)。

上流部のダム(尾原ダム)、中流部の放水路、下流部の大橋川改修の三点セットのいずれも、

“事業継続は妥当と判断”。

 この委員会自体が国交省の隠れみの的な存在で御用学者などの吹きだまりですので(“粉飾された2兆円-11”参照のこと)、このような結論は当然予想されたところです。
 私が注目したのは、はじめから決まっているような結論ではなく、費用対効果が改めてどのように計算されているのか、ということでした。客観的な検討が可能であるB/C(ビーバイシー)比率ということです。
 報道によれば、

“便益(総便益のことです)を一兆五千六百五十三億円、建設や完成後五十年間の維持管理の費用を六千六百二十三億円と試算。便益が費用を二・四倍上回るとした(B/C比率=2.4ということです)。”

とあり、更に、

“費用対便益が、三・四二倍だった五年前の評価時から下がった理由として、同省は最新データを用いて算出し直した結果、大橋川改修の費用が上がったことなどを挙げた。”

としています。

 この記事を読む限りでは、B/C比率が基準値の1を超えた2.4となっていますので、何の問題もないかのようです。
 しかし、これまで私の小難しい議論に根気よく付き合って下さった賢明な読者諸氏は、直ちにオカシイことに気が付かれるはずです。
 思い起こして下さい。私がこれまで論じてきたことは、国交省のゴマカシの実態であり、具体的に2兆円という数字が大幅に水増しされている、つまり粉飾されている(のではないかという)事実でした。
 このたび再計算したと称して示されている便益の額は、ナント、
-5,000億円も少ない1兆5,653億円
なのです。つまり、5年前の計算では2兆658億円であったのが、何故か5,000億円も少なくなっていたのです。

 この金額は、私が推計した金額には至りませんが、それにしても削られた5,000億円という金額自体目を瞠(みは)るものがあります。比率にして33%(5,000億円÷1兆5,000億円=33.3)、仮に今回の1兆5,000億円という数字が正しいとしても(勿論これもまだ大幅に水増しされている可能性があり正しいとは言えませんが)、3分の1も水増しされていたということです。
 便益の額が5,000億円も減少したことについて、報道では何も触れていませんので、現時点ではその理由は不明です。国交省としてはこれだけ大幅な変更がなされているのですから、しかるべき説明がなされるべきでしょう。これまでの国交省の対応ぶりからすると、自分達に都合の悪い資料は頑(かたく)なに隠し通すでしょうから手を拱(こまぬ)いていては明らかにはなりません。従って、情報公開法に基づいて、行政文書の開示請求をすることにいたします。

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“好きなのは 妻か酒かと 聞かないで” -神戸、北川修二。

 

(毎日新聞、平成20年7月28日号より)

(“正直に 酒と答えて 叩かれる”)

***<今の松江> (平成20年6月11日撮影)
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^cx^大橋川(東本町4丁目)
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