ゲームとしての犯罪 -4

このところ、一部のマスコミとかブログで、堀江貴文氏とライブドアの正当性を主張し擁護するような論調が、かなり目立つようになりました。国策捜査の犠牲になったとか、あるいは粉飾という万引程度の微罪で摘発し、堀江氏を逮捕したり、会社を上場廃止に追い込むなど、東京地検はおかしいのではないかというのです。更にはエスカレートして、ライブドアを上場廃止に至らしめた東京地検こそ、多くの被害者を発生させた張本人である、と言い募る人達まで出る始末です。

もちろん現代の日本では幸いなことに、言論の自由が保障されていますので、自らの発言に責任を持つ限り、どのような考えを表明してもいいでしょう。いろいろな立場の方々が、様々なメディアを通じて自由に発言なさるのは結構なことですが、それにしても少しばかり首を傾げざるを得ない発言に出会うことがあります。
堀江貴文氏とかライブドアを批判したり、ケチをつけたりすること自体がケシカランといった、およそ論理性を欠いた問答無用という調子のものです。中には、感情丸出しの悪口雑言、罵詈讒謗が執拗に繰り返されているブログもあるようです。

なにがなんでもライブドアを正当化しないといけない、そのためには例えば私のように6年前の上場時点からライブドアがインチキをやっていたなどと言う者はトンデモない奴で許しがたい、といったところでしょうか。しかも人に頼まれて批難をする、あるいは頼まれなくとも私の分析記事が間違っているから放ってはおけない、といった感じのものではなく、堀江貴文氏とかライブドアに対して少しでも批判的なことを言うこと自体がケシカラン、といった感じなのです。
例えて言えば、働きもせずに遊び呆けているドラ息子であっても、他人から息子の悪口を言われると、親としては腹が立つものです。その指摘が的を射たものであれば尚更、よけいに腹立たしい気持になるでしょう。親子の間には肉親の情という、特殊な感情が存在するからでしょうか。あるいは、兇悪な殺人犯の極刑を回避するために、なんだかの一つ覚えのように、心神喪失とか心神耗弱を主張して精神鑑定を持ち出す弁護人がいます。そのような弁護人は、死刑廃止論という刑事政策上の意見の持主であったり、または多くの見返りを被告人側からもらっていたりするのでしょうか。

堀江貴文氏とライブドアを、なんとしても正当化しようと目をつり上げている一部の人達も、これらと似ているようです。つまり、この人達自身が何らかの直接的な利害関係を持っているのではないかということです。このような人達は、もちろん、騙されて株を購入した投資家ではないでしょう。一連の私の記事を読んだからといって憎悪に近い感情までは、普通の投資家であれば湧いてはこないはずです。私の言っていることに理があると思えば、早急に手仕舞いをすればいいし、間違っていると思えば、株を持ち続けるか、買い増せばいいだけの話ですから。
ところが、一般の投資家に較べて、破格の条件でライブドア株を手に入れることができた人、あるいは手に入れる権利を持っている人がいたとすればどうでしょうか。このような人達は濡れ手に粟の利益が絡んでいるのですから、誰であろうと、またどのような理由からであろうと、堀江氏とかライブドアの正当性に疑問符をつけたり、批判をしたりする者は断じて許してはおけないといったところでしょう。これまでに特別な利益を懐に入れた人達にとっては、稼いだお金の正当性が怪しくなってきますし、また、そのような利益が実現していない人達にとっては、期待していた利益が夢と消え去ってしまうからです。

私はこれまで、堀江貴文氏一人に焦点をあてて、何故彼が巨万の富を手に入れることができたのか、その錬金術のカラクリを解明してきました。堀江氏以外にも、ライブドアを利用して濡れ手に粟の怪しげな利益を手にした人達の存在は分かってはいたのですが、詳しい分析まではしないでいたのです。
ここで、堀江貴文氏と金銭的な利益の点で利害の共通する人達の存在を明らかにし、客観的な数字によって、このような擁護論の背後にひそむドロドロとした現実に迫ってみることにいたします。

<お知らせ>

“募集”

公認会計士あるいは税理士の方で、私と一緒に仕事をし、私をサポートして下さる方はいらっしゃいませんか。

2年余り前に思いついた「認知会計」の手法を実践的に試してみたのが、「ゴーイング・コンサーンの幻想」であり、「ホリエモンの錬金術」でした。それぞれ西武鉄道グループ、ライブドアグループに対して認知会計のメスを入れてみたものです。更には、認知会計のルーツが、江戸時代に完成した大福帳システム(帳合の法)であることに気付きましたので、その実践者の一人である松代藩家老恩田木工を取り上げ「江戸時代の会計士」(未完)としてまとめたところです。
現在、認知会計に基づく新会計システムと新経営分析システム、新企業戦略モデルの構築が完成に近づいています。ご一緒しませんか。

山根 治

連絡先は以下の通りです。

電話 0852-25-5784(代) 担当:山根学
メール info@ma-bank.com

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ここで一句。

“保釈金までも疑う黒い金” -寒河江、斎藤雄司。

 

(毎日新聞:平成18年5月7日号より)

(って言うか、あの人の持っているお金で黒い金でないものはある?)

 

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