カネボウ事件の会計士 -検察の生け贄か?

コメントNO.421についてお答えします。



マスコミの報道だけですので詳しい事実関係は分かりませんが、私のケースと同様に検察のデッチ上げであり検察の生け贄にされたのではないかと思われます。これが私の第一印象です。

中央青山監査法人はかつて私も勤務していたところです(その当時は、監査法人中央会計事務所)。30年も前のことですが、法人の監査方針は当然のことながら明確で、企業との安易な妥協など入り込む余地はありませんでした。ましてや現在報道されているような連結外しの違法な方法を指南するという職業倫理に悖(もと)るようなことは考えることさえできませんでした。トップの意思がキチンとしており、私達若い現場の会計士は思う存分職業会計人として信ずるところを貫くことができたのです。

実は、私の関与している会社で10数年前に上場した会社があります。この会社は上場の準備から東証一部上場となっている現在に至るまで、中央青山監査法人に監査を依頼しています。私はこの会社の監査役として、監査法人の監査の姿勢、監査の進め方など身近に見ているのですが、私がかつて勤めていた頃と基本的には全く変ってはいないのです。監査責任者だけでなく若い公認会計士も自らの仕事に自信と誇りを持ち、実に立派な仕事をしています。
私が検察のデッチ上げであり生け贄にされたのではないかと考える根拠は、この他にも2つあります。

一つは、カネボウの経営陣が既に逮捕され自供させられていることです。会計士からの粉飾の指南を受けたという自供があったとされているようですが、これも私のケースと同様、誘導尋問と脅しによるウソの自白である可能性が高いと思われます。あるいは、経営陣が自らの責任を軽減するために、会計士の指導を受けて粉飾をしたとウソを言っているのかもしれません。
いずれにせよ、20人もの会計士がカネボウの監査に関与しているようですので、膨大な量の監査調書とか内部審査資料が残っているはずです。これこそ監査人の職務の適法性を主張できる何よりの証拠です。
逮捕されている4人の会計士は現在のところ、全面否認を貫いています。この人達の逮捕容疑が全くのヌレギヌであるならば、この監査調書と内部審査資料こそ彼らの潔白を証明する最大の武器となることでしょう。おそれることは、全くありません。検察官は企業会計のことなどほとんど知ってはいません。まして監査の実務など全く理解していない素人なのです。中央青山監査法人の監査方針はキチンとしているはずであり、監査人の身の潔白を証明する監査調書は完璧なまでに備わっているはずです。プロとしての誇りをもってアマチュアである検察官に毅然として対峙し、罪をデッチあげる虚構のシナリオを突き崩せばいいのです。

二つは、逮捕された会計士の人格を傷つけるような偽りのリークが検察からなされていることです。9年前の私も同様でした。検察の卑劣なやり方は全く変っていませんね。
たとえば、「逮捕の佐藤会計士、タブーの株売買に熱。“きまじめ”裏の顔」という大見出しが社会面のトップに踊り、いかにもひそかに陰で悪いことをやる人物であるかのような報道がなされています(平成17年9月14日付、毎日新聞)。
毎日新聞は、佐藤会計士について、

“「客に手心を加える人じゃない。」佐藤容疑者の所属する中央青山の元同僚は話す。約2000人の会計士を抱える中央青山で、佐藤容疑者はチームの指揮を任される約260人の「代表社員」の肩書を持つ。ホノルルマラソン出場経験があるスポーツマンでもあり、信頼は厚かった。”

と真面目な会計士の姿を敢えて描き出し、一転して、

“しかし、同僚さえ知らない裏の顔があった。03年10月、東京都台東区の不忍池のほとりに立つマンションの一室を購入し、ここを根城に株の売買を繰り返していた。「会計士は企業の秘密情報を扱う。インサイダー取引になりかねないから一株も持たないのが常識なのに」と元同僚は驚く。”

と、裏にまわってコソコソと会計士にはあるまじき悪いことをしていたと言わんばかりの報道をしています。
この記事の中には、“裏の顔”、“根城”、“インサイダー取引”などのマイナスの価値判断を含んだ言葉がちりばめられており、犯罪に加担した人物であることが嫌でも思い浮かぶように仕組まれています。
さらには、「佐藤容疑者との一問一答」として

“-株取引をやってますね。
持っていますよ。カネボウではないから問題はないんです。
-(内規で禁じている中央青山の)関与先の株も持っていないのか。
持っていません。だから全く問題はないんです。“

と、佐藤会計士が株取引の事実を認めつつも、全く問題はないとシラを切り、開き直っているかのような書き方をしています。
この記事を書いた記者は、会計士が株の取引をすること自体を頭から悪いことであるときめつけ、しかも“同僚”と称する訳の分らない人物を登場させて、自らの誤った考え方の補強をしています。ちなみに、このような発言をしている“元同僚”が仮に公認会計士であるならば、このようないいかげんな発言をする公認会計士などいるはずがありませんので、この記者が勝手につくりあげた人物であるか、もしくは、検察の偽りのリークをソックリそのまま持ってきたのかのいずれかでしょう。
更にこの株取引についての一連の記事は、佐藤さんが逮捕容疑を全面的に否認していることを示唆し、暗に批難しているものでもあります。
つまり、会計士としてやってはいけない株取引でさえ、正当化をして開き直っている人物であるから、このような調子で逮捕容疑をも頑強に否認していると言いたいようなのです。記事の裏に検察のあやしげな影が透けて見えるようですね。
佐藤会計士が自ら関与していたカネボウの株を売買して荒稼ぎしていたというならばともかく、その他の株を売買していたからといって何ら問題とすべきことではないのです。反社会的な行為でもなければ、違法行為でもなく、このたびの容疑とは全く関係ないことです。
新聞記者の無知につけ込んで、意図的にリークされたものでしょう。新聞記者もずいぶんとナメられたものですね。それにしても、十年一日の如く、検察がリークするいい加減な情報を全く検証することなく、そのままタレ流しているメディアも困ったものですね。社会の木鐸という言葉は死語になったのでしょうか。

私は、実際に検察からにわかには信じられない仕打ち(誘導尋問、脅し、すかし、証拠の改ざん、捏造、隠蔽)を受け、その挙句、およそ文章の体をなしていない矛盾だらけの支離滅裂な論告をもとにして公の法廷の場で断罪されました。このたびの件も、私のようなプロセスを辿ることでしょう。
プロフェッショナルとして粉飾を見抜けなかったミスはあるにせよ、真実、粉飾に加担していないのであるならば、検察の脅しとか騙しに屈することなく、最後まで頑張って欲しいものです。
ことに、自白をしなければ保釈をしない、とりあえず罪を認めておいて法廷の場で否認すればいいのではないか、というような検事の偽りの甘言に乗せられないことを祈っています。検事の取り調べの現場は、このたびのごまかしの小泉劇場と同様に、なんでもありのゴマカシの世界と考えて差しつかえありませんので、絶対に根負けしないことが肝要です。佐藤さんをはじめとする4人の会計士の方は私と同年輩の方々ですし、私も検察には実際にとんでもないことをされた経験があるだけに、他人事とは思えないのです。
尚、詳しくは「冤罪を創る人々」をご覧下さい。

 

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