092 幹部検事の逮捕

****七.検察官訴追システムの実態

*****(1) 幹部検事の逮捕

一、 以上私は、自ら体験したことを事実に即して記してきた。多くの検察官が、嘘の自白を強要したり、証拠を改竄、あるいは捏造したりして、冤罪(無実の罪)を創り上げることに奔走した実態を明らかにした。

それは他からの伝聞ではなく、自ら身を切るような思いで体験したことである。検察官達の非行は、彼らが作成した数々の作文と法廷の速記録に基づいてできるだけ客観的に摘示した。
このような検察官という役人の犯罪的行為が、現代日本の検察の全てでなされているとは思いたくない。しかし、少なくとも22名の検察官が牙をむいて、私を葬り去ろうとしたことは、紛れもない事実である。

二、 平成14年4月22日、大阪高等検察庁公安部長三井環氏が逮捕された。現職の幹部検事の逮捕とあって、各メディアはトップニュース扱いで大々的に報道した。
三井氏は、平成15年3月12日、325日もの長い勾留生活を終えて保釈された。同氏は、獄中手記をもとに、同年5月『告発!検察「裏ガネ作り」』(光文社刊)を上梓し、検察が組織として何をしたのか具体的に明らかにし、広く世間に衝撃的な問題を投げかけた。

三、 読んでみて驚いた。私がまず驚いたのは、同氏が検察幹部達による長年にわたる組織的な公金横領の事実を内部告発しようとしていたことであり、同氏の内部告発を封じるために逮捕されたと主張していることだ。
正義の砦として国民から信頼され期待されている検察が、自らの公金横領という犯罪を闇から闇に葬るために、あろうことか内部告発をしようとしていた同氏を口封じのために逮捕訴追することなど、現代の日本においては決してあってはならないことだ。
三井氏の著書は、検察が本当にここまでのことをするだろうかという記述に満ちている。しかし、検察の一部が文字通り犯罪者集団と化したことを、身をもって体験した私には、当然ありうべきことであると理解できるし、三井氏の言い分は素直に納得できるものである。

四、 私が更に驚いたのは、検察官達が三井氏の口封じをするために行なった犯罪事実のデッチ上げのやり方が、私の場合と酷似していたことだ。
デッチ上げについて、三井氏の著書を要約すれば、次のようになるようだ。

”初めの逮捕において検察当局は、およそ犯罪とは言えないような些細かつ形式的な事柄(電磁的公正証書原本不実記載等)を見つけてきて、さも大げさに重大犯罪であるかのように言いつのって、逮捕に踏み切り、その上で、三井氏の人格を貶めることを目的に、嘘の情報をマスコミにリークし、稀代の「悪徳検事」に仕立て上げた。
再逮捕の口実となった本件(収賄容疑)は、贈賄したとされる暴力団の舎弟の偽りの供述を唯一の証拠として断罪しようとしている。”

これが事実であるとすれば誠に由々しきことであり、暴力団が見せしめと口封じのために、組織を裏切った仲間をコンクリート詰めにして殺し、海に沈めるのと同じことではないか。
日本の検察のトップをはじめとする検察庁の幹部達を実名で告発したこの本は、作り物の小説とか第三者のライターになるルポルタージュにはない迫力をもって読者に訴えるものがある。長年検察官として第一線で活躍してきた法律家の真に勇気ある行動と発言に対して、私は深い敬意をこめて心からなるエールを送りたい。

五、 私は、当初「公正証書原本不実記載等」で逮捕され、三井氏は「電磁的公正証書原本不実記載等」で逮捕されている。共に、犯罪とは言えないような些細かつ形式的なもので、過去において訴追されたことのないものであった。別件逮捕である。
次いで、私は「脱税容疑」で再逮捕され、三井氏は「収賄容疑」で再逮捕されている。本件逮捕である。
三井氏が偽りの自白をしたと主張する贈賄側の暴力団舎弟を、マルサに密告し偽りの供述をした佐原良夫に置き換えてみれば、デッチ上げの構図が私の場合とそっくりなのである。
仮装売買であったと言いつのって、マルサと検察が創作した虚構のシナリオに手を貸したのが佐原良夫であり、三井氏の言い分によれば、女を世話したり接待をしたと言いつのって贈賄を認め、検察の架空のシナリオの片棒を担いだのが暴力団舎弟であった。
言いがかりとしかいいようのない別件逮捕といい、社会的信用性の極めて低い人間の証言だけをほとんど唯一の証拠として摘発した本件逮捕といい、私のケースと余りにもよく似ているのである。

 

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