088 長谷 透

*(5) 長谷 透

一、 広島地方検察庁検事。

平成8年1月26日、長谷透は、益田に赴き組合の常務理事増田博文氏の身柄を拘束し、尋問した。

二、 増田氏は、組合の中でも最重要人物の一人であり、私が主に交渉したのは増田氏であった。マルサ事案の細部にわたって理解し、知っている人であった。
そのためであったろう。増田氏に対する長谷検事の取調べは熾烈を極めた。長谷は連日のごとく、大声をあげ、テーブルを叩いては恫喝し、床を足で踏み鳴らしては威嚇した。

三、 検事長谷透は、増田氏を睨みつけながら、せせら嗤い、次のように言い放った、 ―

「裁判なんて、言ってみればゲームのようなもんだ。どっちに転ぶか判らないが、裁判官も我々検察官と同じ法律の専門家だ。同じ釜の飯を食った仲間だから、同じような考え方をするんだよ。ゲームと言っても、100%近い確率で我々が勝つゲームなんだ。お前が一人頑張っても、こうなったからにはどんなにあがこうが、どうしようもないだろうな。ま、蟷螂の斧ってところだな。
それにお前達の弁護人ってのは一体何だ。民事は少しばかりかじっているらしいが、刑事事件はまるでド素人だというじゃないか、ま、こっちにとってはどうでもいいことなんだがね。」

四、 増田氏は逮捕勾留と過酷な取調べによって、胃潰瘍を発症し、平成8年7月11日、益田市内の病院で胃の全摘手術を行った。
長谷透の常軌を逸する拷問にも等しい過酷な取調べの、歴然たる一つの結果であった。

五、 長谷透が、増田氏をあの手この手で締めあげ、執拗に嘘の自白を迫った供述調書は、平成8年2月13日付のものをはじめとして、同年3月7日付のものまで、合計15通が法廷に開示され、私の手許に残っている。
増田氏は終始、長谷の恫喝に屈することなく、毅然とした態度を貫いた。増田氏の供述調書は、長谷透の脅しを背景にしたいかなる誘導尋問にも大筋では全くぶれるところのない見事なものであった。

 

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