087 花崎政之

*(4) 花崎政之

一、 松江地方検察庁検事。第一審の第5回及び第11回公判廷に、検察官として出廷。

二、 平成8年1月27日、花崎は、司法書士のA.I氏を東京のA.I司法書士事務所に尋ね、参考人として事情聴取した。
A.I氏は、別件の一つである公正証書原本不実記載・同行使に深く関連した人物で、逮捕された山根会計事務所の職員小島氏の幼ななじみであった、
登記の便法として、抹消することを前提として一時的に賃借権の仮登記をし、その後に本登記をすること(これが罪に問われた)を考え出し、提案したのが登記のプロであるA.I司法書士であった。
しかし、立件されたのは、私と小島氏のみであり、この案を提示し、代理人として登記手続きを行った登記のプロであるA.I氏は、立件されていないばかりか、単なる参考人扱いであり、被疑者にさえなっていない。立件するかどうかは、検察官の単なる思いつきでどうにでもなるものらしい。

三、 花崎が同年1月27日に作成したA.I氏の供述調書では、A.I氏はこの登記の方法を自らが教えた経緯にふれ、登記制度の趣旨からは問題があるとの認識を持っていたと述べ、以下のように供述している、 ―

『そこで私は賃借権の仮登記を設定し、保証人二名を作った上で保証書による移転登記の方法を教えたのです。
その方法だと、通常の移転登記の場合に比べ、仮登記費用1,000円に私共の手数料を含めても三万円位の費用が余分にかかる程度で済むのです。
ただこの方法は、あくまで保証人を作るために架空の賃借権の仮登記をする訳ですから、登記制度の趣旨からは問題があります。
しかし、小島泰二が私の古くからの知り合いであり、親しくしていたこともあって、そういった方法があることも教えたのです。
もっぱら小島泰二とのやり取りだけであったと思います。山根とは一度も会っておりませんし、電話で話したこともありませんでした。』

四、 平成8年1月26日、私は別件で逮捕された。その逮捕状には、私が“情を知らない司法書士をして”違法な登記をさせた旨が記してあった。
“情を知らない”どころではない。当の司法書士本人が、自らこの方法を提案して小島氏を通じて私に登記を勧めていたのである。私も小島氏も、この登記が法に触れ罪に問われることなど夢にも考えていなかった。
逮捕の翌日、はじめてA.I司法書士の事情聴取をして、逮捕状の記載が誤っていたことに気づいた検察当局は、その後何食わぬ顔で、

“情を知らない司法書士をして”

という文言をそっと削り取った。誰を起訴し、誰を起訴しないかの決定が、極めて恣意的になされていることを端的に示すものであると同時に、杜撰な逮捕劇の一端を示すものである。

 

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