068 証拠、その改竄の軌跡

****2) 証拠、その改竄の軌跡

一、 真実の売買であることを立証する重要な証拠が、国税当局に嘘の密告をした佐原良夫の自宅からマルサの家宅捜索によって発見され押収されたことは、前に述べたとおりである。佐原が密かに録音していたテープと反訳文である。 

 真実の解明のためにはその開示が必要だとする私の再三の要求にも拘らず、マルサの責任者であった大木洋は、一貫して隠し通した。自ら創り上げた虚構のシナリオが崩れるからであろう。



二、 ところが、この重要な証拠が刑事法廷には一転して提出されることになった。 

 マルサとしては隠し通すことができなかったからである。

 平成6年2月8日、私はマルサの藤原孝行に私が作成した11点の資料を手渡し、それぞれの資料のページ数を藤原に確認させた上で、同人の受領印を押捺させている。

 この中に、マルサが虚偽のストーリーを押し通すために、極めて重要な証拠をひた隠しにした経緯を詳しく綴った「第三申述書(平成2年9月6日、佐原良夫が組合に出向いた件について)」(※「参考資料1」を参照)が含まれていた。

 このとき提出した3通の申述書は、マルサでの質問顛末書にかわるものであるため、当然検察に提示されており、マルサとしては証拠を隠そうにも隠すことができなかったものである。



三、 法廷に開示されたのは、平成8年2月23日付捜査報告書であり、作成者は、松江地方検察庁検察事務官来栖修とされ、宛名は同地検検察官検事藤田義清となっており、次のように記されている、 ― ;;;cc;捜査報告書;;;;
法人税法違反等 農事組合法人益田市畜産協同組合 ほか六名

 右の者らに対する頭書被疑事件について、平成五年九月三〇日光栄水産株式会社において広島国税局収税官吏大蔵事務官が領置した「9/6益田畜産テープ(マイクロカセット入袋)をダビングし、そのダビングテープで録音内容を翻訳したので別添のとおり報告する。
 なお、右マイクロカセットテープは、平成二年九月六日佐原良夫が福山義弘方を尋(ママ)ねた時に録音していたものである。

四、 この捜査報告書に添付された反訳文は35ページに及ぶものだ。

 今の時点で改めて読み返し、仔細に検討したところ、(聴きとれません)とのコメントが付されているのが9回、(二、三分聴きとれません)とのコメントが付されているのが2回、更に末尾には(以下判読できず)とのコメントが1回記されていることが認められた。

五、 法廷に正式の開示された反訳文は、明らかに改竄されたものであった。

 どこがどのように改竄されたのか、あるいは、いつの時点で誰の手が加えられたのか私には知る由もない。

 佐原良夫自らが手を加えたのか、あるいはマルサの段階で改変されたのか、更には検察段階で改竄されたのか定かではない。

 明確に言えるのは、法廷に提出された反訳文から重要なポイントがスッポリと抜け落ちていることである。

 何故このように断言できるのか。

 一つには、マルサのガサ入れ直後に、私は複数の組合員から、平成2年9月6日に佐原良夫が千葉からわざわざ益田まで何のために来たのか、詳しく聞き出していたためであり、

 二つには、その時の事情を最もよく知る立場に会った前組合長の福山義弘氏が、被疑者として検察官の取り調べに応じて供述した調書があったためである。この時作成された多くの検面調書は、当初法廷に証拠として開示されることがなかったものであり、弁護側の度かさなる強い要請を受けた裁判所が重い腰をあげて検察官に開示勧告をした結果、公判検事立石英生がしぶしぶながら開示するに至ったことはすでに述べたとおりである。

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