西武鉄道 グループの資金繰り-1
- 2004.11.04
- 山根治blog
西武鉄道は、資金繰りについて「有価証券報告書」(平成16年3月期)の中で、面白いことを言っています。-
“当社グループでは、キャッシュ・フロー重視の経営を行っており、収益性の向上により、営業活動によるキャッシュ・フローを600億円とすること、さらに、投資効率を重視した事業設備への投資を積極的に行うとともに、有利子負債の削減をすすめるため、フリー・キャッシュ・フローを200億円とすることを目標としております。
当連結会計年度においては、営業活動によるキャッシュ・フローが553億円となり、目標に満たなかったものの、固定資産および投資有価証券の取得が減少したことにより、フリー・キャッシュ・フローは260億円となり、有利子負債を243億円削減いたしました。“ (第2「事業の情報」、7[財政状態及び経営成績の分析]、2経営成績の分析-(3)資本の財源および資金の流動性について、より)
ここに出てくるフリー・キャッシュ・フローという言葉は、自由に使えるキャッシュ、具体的には借入金返済可能財源というほどの意味で用いられているようです。
私は、「ゴーイング・コンサーンの幻想」-6において、西武グループの返済可能財源を296億円と推計しました。上記によると、「フリー・キャッシュ・フローを200億円とすることを目標」としているものの、「当連結事業年においては…(中略)フリー・キャッシュ・フローは260億円」となった旨記し、目標額の200億円を60億円も多かったと、いかにも誇らしそうです。このために、「有利子負債を243億円削減」したというのです。
尚、この243億円の内訳を見てみますと、-
1.長期借入金の返済 | 997百万円 |
2.短期借入金の返済 | 18,400百万円 |
3.コマーシャルペーパーの決済 | 5,000百万円 |
計 | 24,397百万円 |
となっており、短期資金の決済差額(上の2.と3.)が大半を占めています。
何かおかしくありませんか。
前回述べましたように、私が推計した296億円でも、借入金の約定返済ができないのです。しかも、私が対象にしたのは、会社が「長期借入金」と言っている借入金だけであって、短期借入金等を含めた有利子負債全体ではありませんでした。
そこで、改めて、西武グループの有利子負債8,966億円について吟味してみましょう。
有利子負債8,966億円の内訳は次のようになっています。
1.短期借入金 | 234,859百万円 |
2.長期借入金 | 661,746百万円 |
合計 | 896,607百万円 |
(借入金明細表より作成。コマーシャル・ペーパーは短期借入金に、鉄道・運輸機構長期未払金は長期借入金に含めた。)
長期借入金については既に検討して前回説明しましたので、ここでは短期借入金に焦点を合わせて考えてみましょう。
短期借入金2,348億円は、会社が言っているように、本当に「短期」借入金なのでしょうか。その実態に迫ってみましょう。
―― ―― ―― ―― ――
ここで一句。
“実践はできぬからなる評論家” -松戸、多田野口(毎日新聞:平成16年9月24日号より)
(証券アナリスト、エコノミストも。分析はすれども、意見、的外れ。)
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